知だらけ102:努力
人間力のある人には意欲がある
意欲のある人には夢がある
夢のある人には目標がある
目標のある人には努力がある
努力のある人には失敗がある
失敗のある人には反省がある
反省のある人には経験がある
経験のある人には智恵がある
智恵のある人には人間力がある
最初に「努力」と反対の語句を引いておきます。労せずして功を得る。最近の若者を見ていると、どうもこうしたお手軽タイプが増えているようです。「努力」とは、「目標」に向かって切磋琢磨することです。
部下に業績評価のフィードバックを、したときの逸話です。私は断固として、最低の評価を告げました。「がんばっているのに」といって泣かれてしまいました。企業人にとって、評価の大前提は成果の有無です。
企業はどの社員にも、均一のインプットを与えています。インプットとは、環境、情報、知識のことです。ところがアウトプットは天と地ほども違います。アウトプットとは、成果、業績のことです。件(くだん)の人は成果が芳しくないのに、インプットとアウトプットの中間にある、プロセスの評価を求めたのです。
プロセスについては、上司が特別に関与しなければならない大切な部分です。当然、上司である私は大いに関与してきました。なぜならプロセス部分の優劣が、アウトプットの根幹だからです。
営業の世界では、プロセス部分を「営業活動のブラックボックス」と呼んでいます。話法の熟成度、顧客ニーズの把握、学術資材の活用、クロージング能力など、ここにはデータベースで解析できない要素ばかりが散在しています。唯一ここを垣間見ることができるのは、営業マンの上司しか存在しません。
「努力」について、大切にしている文章があります。紹介させていただきます。
(引用はじめ)
努力して結果が出ると、自信になる。
努力せず結果が出ると、傲りになる。
努力せず結果も出ないと、後悔が残る。
努力して結果が出ないとしても、経験が残る。
(引用おわり。発言者不明)
幸田露伴の『五重塔』(岩波文庫)は、私もブログ「山本藤光の文庫で読む500+α」で紹介させていただいています。幸田露伴にはもう1作、素晴らしい著作があります。『努力論』(岩波文庫)がそれです。ちょっとだけ紹介させていただきます。
――努力することは素晴らしいことだ。しかし、自分が努力していると思っているうちは、まだまだダメだ。そこにはまだ自分の中にやりたくない気持ちが残っていて、それでも無理にやっているという不自然さがある。(中略)自分がやっていることが自分にとって自然であると感じられるような努力をしよう。それこそが努力の真髄であり、醍醐味なのだ。(幸田露伴『努力論』岩波文庫)
あの「がんばっているのに」の人には、ぜひ読んでもらいたい本です。
影野小枝:「努力」でネット検索をしたら、こんなのがありました。笑ってしましました。
――「努力」より先に「成功」が出るのは、辞書の中だけである。(作者不詳)