121:タウン誌の取材
タウン誌「くしろ」の編集長・宗像修平は北村広報課長の招待で、奥さんと小学生五年生の息子を連れて、釧路からやってきた。休暇と取材を兼ねた、欲張った道行きである。標茶駅で下車し、案内で名前を告げると、すぐに宮瀬哲伸があいさつにやってきた。
「遠いところを恐縮です」
宮瀬が頭を下げると、首からカメラをぶら下げた宗像は、「仕事というより、楽しみにしていたんです」と笑った。
「北村くんは、十六番で待っているとのことです。いろいろ感想もお聞かせいただきたいので、家内の昭子を同道させていただきます」
招待なのでと伝えたが、宗像はかたくなに譲らず、奥さんと二人分の券を買い求めた。小学生以下は無料である。息子の名前は、大地といった。昭子は大地に、「この先に、自転車とワンちゃんを借りられるところがあるの。どっちかを借りてみる?」と質問した。大地は迷いなく、「ワンちゃん」と答えた。
「マンション住まいで動物は飼えないから、夢実現だな」と宗像は息子の頭をなでる。
四番・金沢ペットショップで、大地は「チロ」という名前の子犬を選んだ。子犬用の餌と糞処理セットを与えられ、大地は喜々として綱を引いた。
「高校生の企画だというので興味があったけど、結構細やかな配慮がされていますね」
宗像は先を行く大地とチロの姿を、目で追いながら昭子にいった。
八番・佐川民芸店で大地は、教えられたとおりに竹とんぼを作った。うれしそうに竹とんぼを手にして、九番の釧路川河川敷へと向かう。川魚水族館を見学し、こどもの広場へ出た。すでにたこ揚げや竹とんぼに、興じている子どもたちがいた。プレハブの詰所で説明を受けて、大地は竹とんぼ飛ばし、魚釣り、たこ揚げの三つを選んだ。両親がベンチで見守るなか、大地はボランティアの高校生と一種に、走り回っている。
「素晴らしい企画ですよ。自然のなかで、子どもが伸び伸びと遊んでいる」
子どもたちに向けて何度もシャッターを切り、宗像は目を細めて大地を眺めている。足下にはチロがいた。小皿に水を注いで、宗像夫人はやさしく頭をなでている。雲一つない空には、たくさんのたこが涼しそうに揺れていた。それを見てチロは、怪訝そうに小首を傾げている。
釧路川の流れは、穏やかだった。釧路川は屈斜路湖を水源とし、標茶町を通過して釧路湿原に流れこむ。子どもたちが釣り上げた魚の鱗は、夏の陽光を受けて時々光った。底抜けに明るい、歓声が響き渡る。
タウン誌「くしろ」の編集長・宗像修平は北村広報課長の招待で、奥さんと小学生五年生の息子を連れて、釧路からやってきた。休暇と取材を兼ねた、欲張った道行きである。標茶駅で下車し、案内で名前を告げると、すぐに宮瀬哲伸があいさつにやってきた。
「遠いところを恐縮です」
宮瀬が頭を下げると、首からカメラをぶら下げた宗像は、「仕事というより、楽しみにしていたんです」と笑った。
「北村くんは、十六番で待っているとのことです。いろいろ感想もお聞かせいただきたいので、家内の昭子を同道させていただきます」
招待なのでと伝えたが、宗像はかたくなに譲らず、奥さんと二人分の券を買い求めた。小学生以下は無料である。息子の名前は、大地といった。昭子は大地に、「この先に、自転車とワンちゃんを借りられるところがあるの。どっちかを借りてみる?」と質問した。大地は迷いなく、「ワンちゃん」と答えた。
「マンション住まいで動物は飼えないから、夢実現だな」と宗像は息子の頭をなでる。
四番・金沢ペットショップで、大地は「チロ」という名前の子犬を選んだ。子犬用の餌と糞処理セットを与えられ、大地は喜々として綱を引いた。
「高校生の企画だというので興味があったけど、結構細やかな配慮がされていますね」
宗像は先を行く大地とチロの姿を、目で追いながら昭子にいった。
八番・佐川民芸店で大地は、教えられたとおりに竹とんぼを作った。うれしそうに竹とんぼを手にして、九番の釧路川河川敷へと向かう。川魚水族館を見学し、こどもの広場へ出た。すでにたこ揚げや竹とんぼに、興じている子どもたちがいた。プレハブの詰所で説明を受けて、大地は竹とんぼ飛ばし、魚釣り、たこ揚げの三つを選んだ。両親がベンチで見守るなか、大地はボランティアの高校生と一種に、走り回っている。
「素晴らしい企画ですよ。自然のなかで、子どもが伸び伸びと遊んでいる」
子どもたちに向けて何度もシャッターを切り、宗像は目を細めて大地を眺めている。足下にはチロがいた。小皿に水を注いで、宗像夫人はやさしく頭をなでている。雲一つない空には、たくさんのたこが涼しそうに揺れていた。それを見てチロは、怪訝そうに小首を傾げている。
釧路川の流れは、穏やかだった。釧路川は屈斜路湖を水源とし、標茶町を通過して釧路湿原に流れこむ。子どもたちが釣り上げた魚の鱗は、夏の陽光を受けて時々光った。底抜けに明るい、歓声が響き渡る。