質を測る006:明るく前向きな共通言語
――第1章:強いチーム
強いチームには、「明るく前向きな共通言語」が存在しています。ポジティブな共通言語を獲得するためには、認識をそろえなければなりません。認識がそろっているのは、チームカルチャーのあらわれです。
たとえば掲示板に、1枚の「ベストプラクティス」(成功例集)が貼ってあったとしましょう。2人の営業担当者が缶コーヒーを飲みながらこんな会話をしています。これは製薬会社で目撃した一例です。
「これ、いいね」
ひとりの営業担当者が、「#344:待合室に新しいポスターが掲示されていた」と書かれた文章を指さしています。「おれも採用だね、これは試してみる価値があるよ」
並んで読んでいた営業担当者は、掲示板の横に置いてあった投票用紙に手を伸ばします。掲示板の横には「投票箱」が設置してあります。投票用紙に、自分の名前と「#344」と書いて、2人の営業担当者は申し合わせたように缶コーヒーを傾けました。
この場面は、私のノートに「はなまる」がつけられます。掲示板も機能していますし、なによりもその前が「知的な場」となっているからです。強いチームには、いくつもの「知的な場」があります。
資料倉庫のなかに、小さなテーブルと椅子が置いてありました。2人の営業担当者が新着の学術資材を広げて、語り合っています。
「このデータのエビデンス(科学的根拠)はどこにある?」
「この前の学会で発表されたものだから、きっと……」
2人は文献棚を移動しながら、きれいに整頓された資材を探しはじめました。
前向きな言語は、知的な場でしか生まれません。事務机の前や会議室のなかだけが「知的な場」ではありません。営業所の机の配置も、スクール形式よりは島型の方が「知」を創出しやすくなります。スクール形式は、学校の教室をイメージしてください。営業リーダー席に向き合う形で、営業担当者が等間隔に座っています。島型は営業担当者同士の机が向き合っています。コミュニケーションをはかるために、どちらが便利かは一目瞭然でしょう。