山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

2018-11-30 | 知育タンスの引き出し

「かいほう」を変換していて、ふと気になったことがあります。変換漢字は「介抱」です。「介」って何なのだろう? 調べてみました。

――「介」という漢字は、よろいをつけた人の形を文字にしたものです。この「よろい」という意味が転じて、「介」の字は堅い甲羅を持つ生き物(貝、エビ、カニなど)を指すようになりました。そこから広がって、「魚介類」は魚類および貝類、エビ、カニだけでなく、甲羅のないイカ、タコ、ウニ、ナマコなども含めた水産物全般(ワカメなどの海藻は除く)の「総称」として定着しました。(NHK放送文化研究所)

「魚貝類」と書いても、誤りではありません。しかしNHKは、魚介類に統一しています。そのほかにも、「厄介」「介護」「紹介」「仲介」などもあります。
山本藤光2018.01.21

合点

2018-11-30 | 知育タンスの引き出し
合点
昨日「けりをつける」は、和歌、俳句の「けり」に由来していることを書きました。もう一つ、和歌などに由来している言葉があります。「合点がいく」の合点です。

――和歌、連歌、俳諧などで、批評する人がよいと思う作品につけた記「合点(がってん)」から(日本語知識辞典)

辞書の説明は「がってん」となっていますが、「がてん」でも間違いないようです。回覧板などにレ点をつけるのも、「合点の印」です。
山本藤光2018.04.03

312:巡回バス

2018-11-30 | 小説「町おこしの賦」
312:巡回バス
 ――『町おこしの賦』第10部:生涯学習の町
猪熊勇太現場局長は、幹部職員会議で次のような方針を述べた。
「町内巡回バスを導入します。このバスには運転手以外に、現場局の職員に乗務してもらいます。目的は週一回の一人暮らしの老人訪問と、依頼を受けた買い物の配達となります。一人暮らし老人の住まい地図を作成し、曜日ごとの順路を決めてもらいたい」
「私たちが丸一日、バスに乗って地域を回るということですか?」
「携帯とノートパソコンがあれば、バスのなかでも仕事はできます。お年寄りの元気を確認する。困っていることを聞き取る。頼まれた品物を届ける。私たちは現場で、もっと汗を流さなければなりません」
「たとえばAさんの家だったら、毎週月曜日の十四時ころにうかがう、という形にするわけですね?」
「そのとおり。お年寄りは、職員の訪問を心待ちすると思います」

 ピンクの車体に「標茶町役場ほほえみ号」と緑色で書かれたバスは、運行を開始した。当初は抵抗を示していた幹部たちだったが、若い職員から新たな提案が加味されていた。
 虹別地区に入るとバスは、ゆっくりとした走行に変わった。外づけのマイクから、移動販売を知らせる「しょうじょうじのたぬきばやし」が流れた。
 若い職員のアイデアで、バスには米や水やパンや野菜なども、積みこまれたのである。有機野菜工場で規格外になったものも、安価で並べられている。

 現場局広報課長の加納雪子は、金曜日の巡回バスに同乗している。ほほえみ号への乗車は、ローテーションで二ヶ月に一度ほどであった。彼女は町民の生の声を、聞きたいと思っている。
バスは中茶別地区を走っている。小学校前で、「しょうじょうじのたぬきばやし」のメロディが流れた。校門から紙切れを握った、児童が走り出てきた。

運転手の徳田は、児童の求めに対して、かいがいしく商品を渡しお金を受け取る。
「お父さん、お母さんは仕事で手が離せないんで、この子たちが買い物係をしているんですよ」
「どの地区もそうなの?」
「はい、このメロディが鳴ったら、どこも授業を止めます」

雪子には想像できない、世界だった。バスは、佐藤という表札の家で停まった。一人暮らしの老人の家だという。
「佐藤さん、標茶町役場です」 
引き戸を開けて、徳田は大きな声で告げた。背中の曲がった、白髪の老女が出てきた。うれしそうに、顔がほころんでいる。
「佐藤さん、身体の具合はどうですか?」
 徳田はやさしい声で、口を耳に近づけていった。
「大丈夫だ。お米持ってきてくれたかい?」
「はい、ちゃんと。何か困っていることはありませんか? また来週のこの時間にくるから、欲しいものがあったら、教えてください」
「ミルクチョコレートを二枚、お願いします」
 徳田はメモに書き留め、「あとで欲しいものを思い出したら、町民電話相談に連絡してください」と告げた。

雪子はうれしかった。そして標茶町役場で、働いていることが誇らしかった。住民へのやさしい心遣いは、町の財産なんだと実感もした。

053cut:一人のノウハウが店を変える

2018-11-30 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
053cut:一人のノウハウが店を変える
――09scene:プロフェッショナル魂
影野小枝 午後2時。漆原さんと熊谷さんは、ラーメン店で遅い昼食をとっています。本日は熊谷さんとの同行のようです。
漆原 行列ができる店っていっていたけど、誰も並んでなくてよかったな。
熊谷(小さな声で)料理人が替わって、味が落ちたのです。お客さんは敏感だから、たちまち引いてしまいます。客は潮の干満と同じですよ。
漆原 熊谷は詩人だな。そうか、客は潮の干満か。でも、うまいぜ。こんなラーメンは絶対に、東京では味わえない。
熊谷 ここにいた料理人は、向かいのラーメン屋へ鞍替えしました。あっちは、ほら、まだ並んでいますよ。
漆原 道路をはさんだ、向かいの店に引き抜かれたのか。何があったか知らないが、辞めた料理人は鼻高々だろうな。
熊谷 以前は閑古鳥が鳴いているような店だったのですが、最近ではタウン誌でも紹介されるようになりました。時間があれば、向こうに並んだのですが。
漆原 向かいの店へトラバーユか、ずいぶん挑発的だな。何があったのだろうか……。
影野小枝 漆原さんは、考えこんでしまいました。たった一人のノウハウが、店を変えてしまう。おそらく、そんなことに引っかかっているのでしょう。
漆原 熊谷、もう一軒行ってみよう。まだ食えるだろう。おごるよ。

057:ひらがなで書く

2018-11-30 | 銀塾・知だらけの学習塾
057:ひらがなで書く
――第4講義:書く
長い間「感性を磨く文章教室」を運営していました。いくら繕っても、文章にはその人の個性が表れます。特に気になるのは、不要の漢字の多用でした。受講生の例文で指摘しましたが、ちょっとだけ問題を出してみます。次の文章を漢字を交えて清書してください。

※例文
けんこうのために、まいにちさんぽやたいそうなどをしている。でんしゃにのったときも、きょくりょくすわらない。このしゅうかんはよほどのことがないかぎり、しぬまでつづけるつもりである。

解答は後ろにありますので、まずは挑戦してみてください。

塾長の手元に、『朝日新聞の用語の手引き』(朝日新聞社)と『共同通信社・記者ハンドブック』の2冊があります。送り仮名や漢字ではなく、ひらがな表記すべき単語の確認に活用しています。為、等、時、余程、迄などの漢字を使った人は、ひらがな表記を意識していただきたい。新聞を注意深く読んでいると、間違いに気がつくと思います。

ひんぱんに辞書を引いて、確認する漢字があります。みなさんも挑戦してみてください。次のカタカナ部分を漢字変換してみてください。

※問題
A.カわり映えのしない
B.打ってカわって
C.ものをお金にカえる

(下に答えがありますので、ここで活字から目を上げて挑戦してください)

 正解は次のとおりとなります。
A.代わり映えのしない(「代」:ある役割を別のものにさせる)
B.打って変わって(「変」:前と異なる状態になる、普通と異なる)
C.物をお金に換える(「換」:AとBを交換)
(『共同通信社・記者ハンドブック』より)

文章にはむやみに、漢字は用いないこと。これも文章道の基本です。新聞では「無闇」とか「用いない事」とは、書いていません。

奥泉光『夏目漱石、読んじゃえば?』がいい

2018-11-30 | のほほんのほんの本
奥泉光『夏目漱石、読んじゃえば?』がいい
漱石をまともに読んでみたい。そんな人のためのすてきな入門書があります。奥泉光『夏目漱石、読んじゃえば?』(河出文庫)がそれです。とにかく面白い。奥泉光には、『吾輩は猫である殺人事件』(新潮文庫)という著作もあります。現代文学をひっぱる奥泉光のナビに耳を傾けてください。
山本藤光2018.11.30

蛇足

2018-11-30 | 知育タンスの引き出し
蛇足
「蛇足」の語源について、愉快な説明がありました。少し長くなりますが、引用させていただきます。

――戦国時代、楚の国で祭りのとき、たった一杯の酒を多くの人々にふるまうことになりました。そこで人々は、地面にいちばん早く蛇の絵を描いた人のみ、その酒を飲むということで競争しました。いちばん早く描きあげた人は得意になり「足まで描けるぞ」と足を描いているうちに、他の人が蛇を描きあげ、結局、酒はその人のものになってしまいました。(日本社『目からウロコ!日本語がとことんわかる本』講談社+α文庫)

どうも眉につばしたくなる由来ですが、ちゃんとした本に載っているのだから信じるよりありません。蛇足ながら、本日で11月は終了です。
山本藤光018.11.30

「おざなり」と「なおざり」

2018-11-29 | 知育タンスの引き出し
「おざなり」と「なおざり」
「おざなり」と「なおざり」は、似ているようで違います。結構誤用が多い言葉です。「〇〇な計画」などと用いられます。あなたなら、どちらの単語を入れますか。

「おざなり」は、「お座」に様子を表す「なり」がついたもので、「適当にやって終わらせる」という意味です。

「なおざり」の語源は、「なほ(直・猶)+さり(去)」というものがあります。「なほ」は「そのまま何もせずにいること」、「去り」は「遠ざける」という意味があります。(この段落はNHK放送文化研究所のサイトを参照しました)
意味としては、「そのままにして放っておく」ということです。したがって前記の問題は、計画はいい加減に作成したものなので、「おざなりな計画」となります。「おざなりな計画」を覚えておくと、「なおざり」とは区別ができると思います。
山本藤光2018.06.02

311:田代美紀のインタビュー

2018-11-29 | 小説「町おこしの賦」
311:田代美紀のインタビュー
――『町おこしの賦』第10部:生涯学習の町
『月刊標茶新聞』の田代美紀は、町長室でインタビューをしている。録音テープをテーブルに置き、彼女はていねいに頭を下げた。
「では質問させていただきます。町長の生涯学習は、刺激的な施策だと思います。そうお考えになった動機というか、きっかけは何だったのでしょうか?」
「仕事バリバリ家でゴロゴロ。これは最悪のパターンです。この人は仕事と日常が両立していません。こうした人の末路は、家庭が崩壊するか、仕事に身が入らなくなるかの、どちらかになります」
「仕事バリバリ、家でもバリバリ。これが町長の理想型なんですね?」
「日常を知的に過ごすって、極めて大切なことです。それが本人の血肉となって、仕事にも好影響をもたらします」
「知的な日常を、具体的に教えていただけませんか?」
「読書をする。優れた人と交わる。この二つは、知を磨くための二大ツールです」
「本はわかりますが、優れた人と交わる、は難しいですね。こんな地方にいると、なかなかそうした人には、お目にかかれません」
「私は山本藤光さんとか野中郁次郎さんとか梅棹忠夫さんとか、本の著者を師と仰いでいます。本の著者なら、アポなしでいつでも会えるのですから、そういう先達に教えを請えばいいわけです」

「生涯学習センターには、夜間大学を誘致するようですが、標茶町民にそうしたニーズがあるのでしょうか?」
「標高の卒業生の多くは、大学に進学していません。彼らには、もっと上の学校で学びたいとの強い希望があります」
「センターには、高校生の進学塾も入るのですね?」
「標高の大学進学率を、上げたいと考えています。彼らが大学で専門課程を学んで、故郷に戻ってきてもらいたいのです。町おこしの根本は、そこに関わる人たちの人間力にあります」

「人間力って、何ですか?」
「ものすごく仕事ができる、上司がいたとしましょう。しかしこの人は、独善的で部下の提案に耳を傾けないとしましょう。この人に、部下はついていきますか。人間力は、傾聴力、共感力、包容力など、人間としての総合的な資質のことをいいます。部下が上司に求めているのは、仕事力よりも人間力だと思います」

「駅前にある『知だらけの学習塾』を、センターに移すと聞いています。すると現在地は、元のシャッター通りになってしまいます」
「全部、屋台にしようと考えています。町民が気楽に利用できるお店というイメージです。そこは町民の憩いの場であり、外からきた人との触れ合いの場にもなります」

052cut:合宿での個別面談

2018-11-29 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
052cut:合宿での個別面談
――08scene:合宿3日目
影野小枝 合宿中に漆原さんは、盛んに個別面談をしていました。早朝だったり、昼食後だったり、夜だったりと、時間はまちまちなのですが、ちょっと押さえておきましょう。
漆原 太田は内勤希望と自己申告書に書いているけど、営業職は嫌いか?
太田 ぜんぜん自信が持てません。みなさんの足を引っ張るのが忍びなくて……。
漆原 たったひとつ断言できることは、営業でダメなら内勤ではもっとダメになる。この前もいったけど、私がしっかりと手ほどきするから、1年間がんばってみることだな。
大田 それでもダメなら?
漆原 いい質問ではないな。ダメになることを前提に熱烈指導はしたくない。きみに一流のMRになる気があるなら、私も伴走させてもらう。
太田 やってみます、1年間。死ぬ気になって。
影野小枝 太田さん、泣いています。やる気に火がつきましたかね。もうひとりだけ、個別面談の模様を紹介させていただきますね。

乾 炉端焼きの梶山悦子の件ですが、来年彼女が帯広へきてくれることになりました。お母さんの回復が順調で、店はだいじょうぶとのことです。
漆原 それはよかったな。結婚するまで、乾はリーダー道の勉強だな。来月のチーム会議が終わったら、会わせてくれないか。きみが惚れたのだから、いい人なんだろうな。
乾 実は前の鈴木所長が熱をあげていたので、こっそりとつき合っていました。来月の会議の自慢コーナーで、婚約の報告をするつもりです。
漆原 そりゃいい。みんなもびっくりするぞ。  
影野小枝 乾さん、幸せそうですね。うらやましい。