ビリーの挑戦2-080cut:漆原SSTリーダーと新谷営業部長
――Scene12:SSTプロジェクトの役割
影野小枝 漆原SSTリーダーと新谷営業部長は、本社応接室で面談しています。SSTプロジェクトが終了目前であり、メンバーの新しいポジションの打ち合わせです。
新谷 窓際から生還したきみは、本当によくやったよ。お陰でMRのレベルは飛躍的に上がった。営業リーダーたちの尻に火がついたみたいで、東京で第3土曜日に「MR育成研究会」がはじまった。私は第1回の講師で参加したけれど、山本先生を呼んでほしいと頼まれた。
漆原 SSTに刺激されて「同行ノート」を作成する営業リーダーが増えている。「朝書き日報」も定着してきた。
新谷 船井幸雄さんの『百匹目の猿』(サンマーク出版)現象が起こってきたということだ。もう「おーい、同行でもしてやろうか」なんていってるリーダーはいないよ。
漆原 業績格差は人災。おれたちもあとひとがんばりだな。
新谷 SSTメンバーには、頭が下がる。彼らの新たなポジションを、考えているんだろう?
漆原 社長からもいわれているんだけど、彼らの体験を全社に浸透させなければならない。
新谷 支店長のポストが2つ空く。残り全員営業リーダーとして迎えてもいいぜ。
漆原 ここだけの話だけど、磯貝はよくやってくれた。33歳でMRになった変わり種だけれど、大きなポジションを探してやるつもりだ。
新谷 きみに頼みがある。SSTは確かに大成功だったけど、同行指導は本来営業リーダーの、いちばん重要な仕事だ。彼らのレベルを何としてでも、SSTメンバー並みに引き上げたい。手を貸してもらいたい。
影野小枝 漆原さん、新谷さんに頼みごとをされましたね。
新谷 先日うちの近所で、偶然に片岡部長にお会いした。
漆原 そういえば、近所に住んでいるっていっていたな。元気だったかい?
新谷 それが空気の抜けた風船みたいだった。あれだけ元気な人が、「毎日が日曜日だよ」って嘆いていた。
漆原 森永のタヌキに追い出されて……転職した先も辞めちゃったんだろう。
新谷 一度狂った歯車は、なかなか元には戻らないものだ。おれたちももうすぐ50歳だ。ああなってはいけない。
漆原 おれもSSTプロジェクトが終わったら、どうなってしまうのか。なんだか首筋が寒くなってきたよ。それにしても、退職後にコツコツ楽しみながらできることを、今から用意しておかなければならないな。片岡さん、何とかしてあげられないかな。
影野小枝 何だかしんみりしてきましたよ。それにしても何でも話し合える友人って、いいものですね。定年後にも楽しみながら続けられることを、早く見つけられるといいですね。