山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

安部公房『内なる辺境/都市への回路』出た

2019-04-30 | のほほんのほんの本
安部公房『内なる辺境/都市への回路』出た
安部公房『内なる辺境/都市への回路』(中公文庫)が復刊されました。これまで別々だった著作を一つにまとめたもので、私にとっては思いがけない贈りものです。安部公房は卒論に選んだ作家であり、すべての初版単行本を持っていました。またデビュー作『壁』には、直接サインももらっていました。しかし大学時代に、サイン本もふくめてほとんどを古本屋に売ってしまいました。貧しい時代でした。今でも残念に思っています。
山本藤光2019.04.30

069cut:支店長会議での提案

2019-04-30 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
069cut:支店長会議での提案
――Scene10:全国営業会議
影野小枝 引き続き支店長会議の午後の部です。新谷営業部長が、新たな営業方針をお話ししています。ちょっとだけのぞいてみます。
新谷 社長宛てにきたSSTの奥さんたちからの、お礼状を読ませてもらいました。SST事務局では、社長名で奥さん宛てに、花と手紙を届けていたようです。長期の出張を続けるSSTメンバーを支えてくれている、奥さんや家族への感謝の印です。この話を聞いて、「Rファミリー」の心は消えていないと実感しました。みなさんの熱い思いを真摯に受け止め、社長は舵を元に戻してくれました。これまでの甘い体質を改め、私たちは社長の期待に応えなければなりません。
河野 私も手紙を読んで泣いてしまいました。家族があってのSSTだったのです。
新谷 みなさんに提案があります。毎年全営業部員を集めている全国営業会議に、受賞者の家族を招待したいと思います。当然予算の都合があるので、全国営業会議は受賞者だけにきてもらうように改めたいと考えています。
吉岡 家族の招待は大賛成です。受賞者への拍手をするために、全員を集める意味はないと考えます。
倉島 刺激になってもらいたいので受賞の晴れ舞台を見せているのですが、刺激にも何にもなっていないメンバーもいるわけです。
河野 新人MRは、全員参加させる方がいいと思います。きっと大きな目標になると思いますから。
新谷 では次回の全国営業会議は受賞者とその家族、そして新人MRだけの集まりとさせていただきます。漆原部長、それでいいですね?
漆原 家族同伴の表彰式ですか、最高の舞台ができましたね。ところで名称は変えなければなりませんね。全国営業会議ではなく、R製薬リボンアワードなんていかがですか?
新谷 いいね、それ。ずっとハイカラになった。
影野小枝 家族同伴の表彰式ですか。小さなお子さんたちの走り回っている姿が、目に浮かびます。


しがらみ

2019-04-30 | 知育タンスの引き出し
しがらみ
これも世間の「しがらみ」だから、と用いられる「しがらみ」の語源は意外なものでした。

――水流を塞(せ)き止めるために、杭を打ちならべて、これに竹木や柴などを渡した柵のことをいう。『万葉集』には、「明日香川しがらみ渡し塞かませば流るる水も長閑(のど)にかあらまし」とある。(『語源2』青春出版社文庫)
山本藤光2019.04.30

007:夢と妄想

2019-04-30 | 妙に知(明日)の日記
007:夢と妄想
瀬口家の夕食は、店番の関係で二組に別れる。
「キンキじゃないか、今日は豪華な夕食だな」
 食卓についた兄の恭一は、ことさら明るくいった。恭二のことは、すでに母親から聞かされている。店にお客さんらしく、父の大きな声が聞こえてくる。恭二は父の声に覆い被せるように、きっぱりと告げた。
「母さん、おれ、F高へ行かない」
「野球を諦めることにしたの?」
「辞める」
「おいおい恭二、そんなに簡単に夢を諦めてしまっていいのか?」
 口をはさんだ兄に向かって、恭二は自分にいい聞かせるように告げる。
「いつまでもかなわない夢に、しがみついていたくないんだ」
「恭二、おまえは強いよ」
「今は空っぽだけど、野球以外の夢を探してみる」

 恭二は兄の言葉を、胸のなかで転がしてみる。そしてかなわぬ夢を追いかけるのは、単なる妄想だろうなと思う。夢って努力すれば、届くところにあるものだろう、とも思う。さっき開いた猪熊勇太からのメールを思い出す。
――恭二。ずいぶんあっさりとした決断だな。おまえが行かないのなら、おれもF高へは行かない。おまえがどんな新しい夢を拾うかを、見届けなければならないからな。勇太。

 母と交代に、父が食卓につく。そして悲しげな声を出した。
「恭二、母さんに聞いたけど、野球と決別するんだな。未練を断ち切るのは難しいけど、おまえの決断を尊重しよう」
「おれ標(しべ)高へ行く。そこで夢中になれる、何かを探す」
「久しぶりで見たけど、詩織ちゃんきれいになったな」
 胸がチクリとした。恭二は黙って、脂がのったキンキの身を口に運ぶ。そして夢中になれる何か、の存在を意識しはじめている。今のところそれは、詩織の存在なのかもしれない。

「12223」の単語は?

2019-04-30 | 妙に知(明日)の日記
「12223」の単語は?
「ナンクロ」でどうしても解けない問題がありました。「12223」の並びの単語です。仕方がないので降参してナンクロの検索サイトに、この数字を打ち込みました。あっという間に答えが出てきました。この並びの単語は一つしか存在していませんでした。前にも書きましたが、クロスワードよりも、ナンバークロスワード(ナンクロ)の方が性に合っているようです。毎日1問ずつ解いています。解答は末尾に書きますので、ここからは活字から目を上げて、考えてみてください。判った人は閃きの天才です。答えはカタタタキでした。
本日で平成最後の投稿となります。明日からは令和になるんですね。
山本藤光2019.04.30

阿部昭『天使が見たもの』出た

2019-04-29 | のほほんのほんの本
阿部昭『天使が見たもの』出た
阿部昭『天使が見たもの』(中公文庫)が出ました。本書は「少年小景集」とサブタイトルがついてます。表題作はこれまでに、沢木耕太郎編『右か左か・日本文学秀作選』(文春文庫)やアンソロジー『年の眼』(光文社文庫)などに収載されていました。私は『子供部屋』(集英社文庫)とともに、『天使が見たもの』を高く評価していました。これでやっと書評を発信できます。再読するのを楽しみにしています。
山本藤光2019.04.29

068cut:新谷営業部のスタート

2019-04-29 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
068cut:新谷営業部のスタート
――Scene10:全国営業会議
影野小枝 新谷営業部の支店長会議をのぞいてみます。今回から河野さんが札幌支店長として参加しています。札幌の杉本支店長は、大阪支店長になりました。
新谷 いろいろあったけれど、ようやくすべてが元に戻りました。体制刷新のためにみんなで力を合わせて、ようやくここまできたというのが偽らざる実感です。ただ一つ元のままで困っていることがあります。それはメーカーランキングです。4年後に19位を目指しているわけですが、1年間で順位は3つ上がっただけです。現在35位。まだまだ遠い道のりです。では今回から参加してくれた河野・札幌支店長にあいさつしてもらいます。
河野 SSTリーダーをしていました、札幌支店の河野です。時計の針を逆戻ししている前体制に憂慮していましたが、社長が本部長を兼務し、新谷部長が営業部を引っ張る体制が生まれ、胸をなでおろしています。及ばずながら、懸命にがんばり、少しでもメーカーランキング19位の目標に、貢献させていただきます。
杉本 大阪支店は前任の新谷部長が種まきをしてくれており、順調にいけば大阪府内でランキング10位以内は可能です。問題は和歌山や兵庫にあります。しばらく様子をみて、ここのてこ入れをしたいと考えます。
吉岡 やっと業務課の補充をいただき、営業リーダーのMR職兼務も解いていただきました。これで実績が上がらないはずはない。東京支店がこけたら甚大な被害をおよぼしますので、目いっぱいがんばります。
倉島 福岡支店はSSTが入ってくれた、北九州が引っ張ってくれています。SST効果は他課にも影響を及ぼし、全体に勢いが出てきました。九州地区のメーカーランク32位を、あと1年で20位台の前半まで引き上げます。
河野 ありがたいご報告です。SSTはみなさんの熱い支援で、R製薬の営業組織に大きな風を起こしました。もうすぐ終了を迎えますが、支店長が先頭に立って更なる風を起こさなければなりません。


さしすせそ

2019-04-29 | 知育タンスの引き出し
さしすせそ
調味料は「さしすせそ」の順に入れるのが好ましい。これは主婦なら誰でも知っていることです。「さしすせそ」は、砂糖、塩。酢、醤油、味噌のことです。科学的な正当性は長くなるので紹介為ません。ところで、結婚式のスピーチでも「さしすせそ」は時々使われています。昔の主婦は「さ行」でしたが現在の主婦は「か行」に専念しています。「さ行」も忘れないでください、と結ばれます。このあいさつは、丸谷才一が書いたものです。出典は忘れました。

さ行:裁縫、舅姑、炊事、洗濯、掃除
か行:カルチャー、教育、クッキング、健康、コミュニケーション

か行については、記憶が定かではありません。丸谷才一が書いたものと、何かが違うかもしれません。
山本藤光2019.04.29

006:穴吹家の決断

2019-04-29 | 小説「町おこしの賦」
006:穴吹家の決断
 穴吹貞雄の家は、虹別で酪農業を営んでいる。長男の健一は、工面して高校へ入れた。健一の下には、標茶中学三年の弟・健二と双子の姉妹の茜(あかね)と萌(もえ)がいる。姉妹は、虹別小学校の四年生である。
 貧しい夕食を終えて、健二は父・貞雄に食い下がっている。
「兄ちゃんは高校へ行かせたのに、おれはなぜ行かせてもらえないんだ」
「兄ちゃんはうちの跡継ぎだから、酪農や農業の勉強をしてもらわなければならない。おまえは、学校で就職先を探してもらえ」
「高校へ行きたい!」
「うちには、もうそんな余裕はない」

 二人のやり取りに耐えかねて、健一が口をはさんだ。
「おれ、高校を中退して、ここを手伝う。だから、健二は高校へやってもらいたい。健二はおれよりも、ずっと優秀だ。どこかに就職するにしても、中卒では肩身が狭い。なあ、父さん。おれがバリバリ働いて、健二の入学資金は稼ぐから」
 健二は泣き出した。おろおろしていた母の美津子は、泣きながら貞雄に訴えた。
「私が毎日、卵の行商に行く。だから、健二を高校に行かせて。健一も、せっかく入った高校を辞めたらダメだ」
「おれ、定時制に編入する。そうしたら、昼間はここで働ける。だから、健二を高校に行かせて」「健一がそうしてくれれば、母さんは標茶町へ働きに行ける。健一、本当にそうしてくれるのかい?」
「高校を中退しないで、この問題を解決するには、それしか方法はないさ」
 
貞雄は腕組みを解き、咳払いをしてからいった。
「母さんも健一も、よくいってくれた。おれがふがいないばかりに、みんなに迷惑をかける。すまん。健一は定時制への編入。母さんは標茶で仕事を探す。おれはもっともっと働く。だから、健二、標高へ行け。金はみんなでなんとかする」
 健二は、しゃくり上げて泣いている。美津子は健二の肩を抱き、「健二、よかったね。しっかりと勉強しなさいね」と泣きながら告げた。
 健一は大好きな、漫画の定期購読を止める決心をした。一円でもムダにはできない。何としてでも、弟を高校へ行かせたい。健一はまだ泣き止まない弟に視線を向け、貧乏の底にわずかな光を見出している。

孫たち帰国

2019-04-29 | 妙に知(明日)の日記
孫たち帰国
タイから遊びにきていた孫たちが帰国し、我が家に静寂が戻った。桜の花びらを押し花にしていた小2の孫娘は、友だちから頼まれたからといっていた。小6の孫娘はタイ語、日本語、英語、中国語まで習っているという。目標は4カ国をマスターすることらしい。桜の季節にやってきて、アジサイの季節に戻っていった。毎年約1ヶ月きてくれる孫たちは、賑やかさを失った爺婆に、幼いエネルギーを教えてくれる。
山本藤光2019.04.29