山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

知だらけ051:駆け足自分史を書いてみよう

2018-07-31 | 新・知だらけの学習塾
知だらけ051:駆け足自分史を書いてみよう
――第4講義:書く
何を書いたらいいのかわからない人のために、「駆け足の自分史」を書くことを勧めています。

塾長は古希(70歳)を迎えました。10年間経営してきた会社は、若者に譲渡しました。暇になったので、小説やエッセイや書評を書いています。

あとひとがんばりしよう。老骨に誓いの鞭を軽くあててみました。さてどこから書きはじめたらよいものやら。とりあえず自己紹介をかねて、足早にこれまでの生きざまをふりかえってみることにします。以下が「駆け足の自分史」の見本です。

◎出身地は「しべちゃ」です

「ご出身はどちらですか?」とよく尋ねられます。そのつど「北海道のしべちゃというところです」と答えています。質問者の戸惑った表情には、慣れっこになっています。だからつけ加えます。「しべちゃは、釧路と網走の間にあって、釧路湿原のど真ん中に位置する町です」、と。

ここまで説明すると、相手の顔に安堵の笑みが浮かびます。イメージできたのでしょう。しべちゃ」は、「標茶」と表記します。ペンネームにしている標茶六三は、「しるべちや・ろくぞう」と読みます。もちろん苗字は、故郷からいただいたものです。六三は63歳から「文庫で読む500+α」を書きはじめたので、初心を忘れないようにとの命名です。

国鉄に勤めていた父親の仕事の関係で、札幌・旭川・帯広・釧路と北海道を転々としました。そして小学校6年生の3学期に、標茶小学校に転入しました。その後は高校卒業まで、ずっと標茶町で過ごしました。

質を測る076:人間力を高める

2018-07-31 | 営業の「質を測るものさし」あります
質を測る076:人間力を高める
――第7章:知を磨く
「知」は正直ものです。どんなに虚勢をはっても、底の浅さはすぐに見抜かれてしまいます。知は努力すればするほど、レベルアップしてゆきます。「人間力」を問われるいま、ナレッジマネジメントの考えを加味した「知を磨く」方法をお伝えします。

 営業リーダーだったとき、5年目の営業担当者(仮称Aくんとしておきます)から相談を受けました。同行時の昼食の席のことです。
「知識は私の方が上なのに、なぜぼくはBくんみたいに成績が上がらないのでしょうか?」
 唐突な質問だったのですが、小躍りしたくなるほど感激しました。AくんとBくんは同期で、Bくんは別の課の所属でした。私はAくんの問いかけに、彼の成長をみました。交際中のC子さんとの結婚が近いのかななどと思いながら、あわててご飯を飲みこみました。飲みこんだご飯といれかわりに、素直な言葉が飛び出しました。
「人間力の違いなんだよ」
 これが「人間力」という言葉を用いた最初です。スキルの差という言葉も瞬時に浮かびました。しかしBくんと同行したことはありません。とっさに口をついて出た言葉でした。怪訝(けげん)そうな顔をしているAくんには説明が必要でした。
「人間力って、きみの人格とかそんな意味じゃないんだ。なんといえばいいのかな、相手に与えるオーラみたいなものなんだけど……ちょっとわかりにくいよね。その人間がかもしだす空気のようなもの、っていえばいいのかな……」
 シドロモドロでした。真剣な眼差しに射すくめられて、私はつぎつぎに単語を並べていました。
「人間力っていうのは、明るさ、誠実さ、場を読む力、知性、勤勉さ、真剣さ……そんなものの総合力なんだ。それが器の大きさになるんだけれど……」
 Aくんはまじめを絵にかいたような営業担当者でした。私はこのあと、彼に2つの教材を教えました。
「人間力を磨くためには、2つの教材があるんだよ。ひとつは優れた人、もうひとつは良い本。これらにより多く接することで、知は磨かれるんだ」

 私は「ナレッジマネジメント」に「人間系」という冠をつけて、その道の研究をしています。『人間系ナレッジマネジメント』(医薬経済社)と題した著作もあります。「人間系」はhumanity と訳しますが、外国人が好む単語のひとつです。もっとも「人間系ナレッジマネジメント」は、「システム系」との対比を主眼に命名したもので、そんなに底の深いものではありませんでした。
ところが近年「人間力」がひんぱんにマスコミをにぎわすようになってきました。『人間学入門』(致知出版社)という雑誌まで出版されているほどです。雑誌の扉には堂々と、「仕事は人間力で決まる」と大書されています。

2品目宣伝を確実に:めんどうかい128

2018-07-31 | 営業リーダーのための「めんどうかい」
2品目宣伝を確実に:めんどうかい128
――第9章:同行時の話法・ツール
 ルートセールスの場合、訪問軒数と宣伝品目数が多い方が売上は上がります。ただし、大前提に活動の「質」があることを忘れてはなりません。活動の「量」だけを、追っかけている会社は多いものです。それはそれで、間違ってはいないのですけれど。

 せっかく量の検証をするなら、そこに質を加味していただきたいと思います。それが本書の趣旨でもあります。質の検証ができるのは、営業リーダーしか存在しません。しかも検証するのは、現場で実証以外にはあり得ません。

 2品目宣伝を、容易にできる話法があります。次のショートストーリーで、考えていただきたいと思います。

◎ショートストーリー

 顧客は、製品Aを採用してくれています。営業担当者は、さらに製品Bを納入したいと活動しています。これから示す営業担当者には、2品目宣伝をする余裕がありません。

営業(パンフレットを指し示しながら)「おはようございます。本日は、何とかBをご採用いただけないかと、おじゃまさせていただきました」
顧客「同じような他社製品を採用しているので、これ以上製品は増やせない」
営業「市場では、私どものBが圧倒的に売れているのですが……」
顧客「きみのところは、利益率が少ないので採用できない。それとも、大幅に値引きができるようになったの?」
営業「それはできませんが、量がさばけるように、ポスターやキャラクターを大量に用意させていただきます」
顧客「ダメだね。通路が狭くなっちゃうし、そんなもので売れるとは思えない」
営業「そこを何とか」
顧客(いらだちをみせはじめる)
営業「何とか前向きにご検討いただきたく、お願いいたします」
(退席)

町おこし193:留美の話

2018-07-31 | 小説「町おこしの賦」
町おこし193:留美の話
――『町おこしの賦』第6部:雪が28 
 浅川留美の『同棲ごっこ』はベストセラーになり、芥川賞の候補にも上げられた。恭二が留美の帰国を知ったのは、タウン誌『くしろ』の宗像修平からの電話でだった。釧路市出身の芥川賞候補作家というインタビュー記事で、取材をしたとのことだった。
そのときに宗像は、作品中の京太郎のモデルが瀬口恭二だということを知った。だから少し、話を聞きたい。宗像は電話口でそう告げた。恭二は留美と一緒の取材なら受ける、と答えた。
 宗像はあっけないほど素早く、明後日に釧路の留美の自宅でインタビュー、という段取りをつけた。

 留美との、再会の日がきた。恭二ははやる気持ちを抑えて、留美の自宅を訪れた。いきなり留美は、玄関に現れた。
「恭二、久しぶり」
 屈託なく笑って、留美は恭二に抱きついてきた。リビングにはすでに、宗像とカメラを抱えた男の姿があった。恭二は宗像の向かいに、留美と並んで座った。待ち構えていたように、フラッシュが光った。

「さて『同棲ごっこ』のお二人がそろったので、インタビューをさせていただきます。最初に浅川先生に確認させていただきますが、あの小説の京太郎のモデルは瀬口恭二さんで間違いありませんね」
「はい。でも京太郎は、私が創り上げた架空の人物です。私と恭二が一緒に住んでいたことは事実ですが、作中の京太郎は恭二とは違います」
「では、瀬口さんイコール京太郎ではないわけですね?」
「恭二は、臆病でも早漏でもありません。嘘のつけない、まじめな人です。主人公の『わたし』を強い女にしたために、脇役の京太郎はとことん駄目な男にしなければならなかったわけです」
「いやあ、あまりにも人物造形がみごとだったので、てっきりモデルが存在すると思っていました」
「京太郎が恭二だったら、恭二はかわいそう」

 久しぶりに聞く声だった。物語の進行は事実だけれど、小説のなかで「わたし」に寄り添う京太郎は架空の人物である。留美はそう断言した。恭二は心の澱(おり)が、消えてゆくのを感じた。そして留美に質問した。
「小説を読んで、京太郎はおれだと思った。正直、侮辱されたと腹を立てていた。でも話を聞いて、納得した」
「ごめんね、恭二」

 忙しくノートにペンを走らせながら、宗像は質問を続ける。
「瀬口さんとの出会いや、同居などは事実である。しかし小説のなかの京太郎は、瀬口さんとは別物で、想像上の人物である。これでいいですね」
「はい、そのとおりです」
「浅川先生の今日に、瀬口さんの存在はどう関与していますか?」
「小説家になると決めたのは、二人で将来の夢を語り合ったときです。小説ではH大としていますが、浪人時代も北大に一緒に入ろうと励まし合っていました。恭二はまぎれもなく、今の私を育ててくれた恩人です」
「釧路で執筆活動をなさるわけですが、いろいろ不便はありませんか?」
「原稿はメールで送れますし、ほとんどのことは電話で用が足ります。不便は感じません」

「瀬口さんにとって、浅川先生はどんな存在ですか?」
 質問の矛先が、恭二に向いた。恭二は少し考えてからいった。
「当時は、とても大切な人でした。しかし現在は思い出のなかにのみいる、大切だった人です」
「恭二、何だか意味深な発言ね。いい人ができたんだね」
 留美は屈託なく笑って、恭二の膝に手を置いた。置かれた左手の小指には、光る大きなリングがあった。

妙に知180730:第100回全国高校野球選手権で熱中症

2018-07-31 | 妙に知(明日)の日記
妙に知180730:第100回全国高校野球選手権で熱中症
▼第100回全国高校野球選手権の出場全校が出そろいました。昨日西東京の決勝戦、日大三高と日大鶴ケ丘の試合をテレビ観戦しました。試合は延長に入って日大三高のサヨナラ本塁打で決着しました。興奮する好試合でした。今朝、ネットニュースを見て驚きました。
――西東京大会の本部は30日、日大鶴ケ丘の勝又温史投手が、同日行われた日大三との決勝(神宮)の後に体調不良を訴え、救急搬送されたと発表した。
 高校野球を見ていて、常に熱中症と隣り合わせにあると感じています。試合時間を早めるなど、抜本的な対策が必要でしょう。▼『100分de名著・宮沢賢治』(NHK出版)が出ました。このシリーズはすべて買い求め、ビデオで勉強しています。
山本藤光2018.07.30

知だらけ050:文章教室の添削

2018-07-30 | 新・知だらけの学習塾
知だらけ050:文章教室の添削
――第4講義:書く
「感性を磨く文章教室」受講生の例文(昨日掲載)を添削したいと思います。

例文A:美しい那珂川の堤を可愛い初恋の人と手をつないで歩いた日の大きな夕焼けが忘れられ無い。(宮)

例文A添削
1. 一文が長過ぎます。一文とは分頭から句点(。)までのことです。→塾生への質問:あなたは例文をいくつに分割できましたか? もし分割していなかったら、チャレンジしてみてください。
2. ありきたりの形容詞(美しい、可愛い、大きななど)を多用しないでください。
3. 「無い」は間違いではありませんが、「ない」とするべきです。
4. 初恋の人と手をつないで、那珂川の堤を歩いた。水面には真っ赤な夕日が映っていた。彼女の頬も赤く染まっていた――こんな感じで、文書を短くつなぐ訓練が必要です。

例文B:私の住むマンションのベランダには、一つだけ鉢植えが置いてあります。大きさはラーメンどんぶりくらいだ。(広)

例文B添削
1. 文末の「です・ます」調と「だ・である」調が混在しています。どちらかに統一させてください。
2. 鉢の大きさを別の一文で説明するのは、いいたいことを散逸させています。ベランダには手のひらに乗るくらいの鉢植えが、などと書く方がすっきりとします。たとえがラーメンどんぶりでは、鉢植えがかわいそうです。
3. 鉢植えはどんな動機で手に入れたのか、などを知りたいですね。
4. こんな流れで、文章を再構築してみてください。――ベランダには、手のひらに乗るくらいの鉢植えがあります。妻の誕生祝いに、買いました。毎朝水をやりながら、直接いえない「いつもありがとう」という言葉を、心のなかでつぶやいています。

例文C:私は本屋へ行くが、目的は本を購入するというよりは寧ろ時間潰しのためです。時々パラパラと本をめくりますが、買うことは殆ど無い。(杉)

例文C添削
1. ひらがな表記すべき箇所がたくさんあります。新聞などを読んで、どう書かれているのかを調べてください。(寧ろ、潰し、殆ど、無いなど)
2. 「購入」という漢字も、「買う」と置き換えて考えてみてください。どちらが自然ですか。
3. 「…が、」を多用しないでください。これを使うと、説明しなければならなくなります。それゆえ「目的は」などと書かざるをえなくなるのです。
4. 「パラパラ」は、オノマトペという擬音です。川はサラサラ流れる。星はキラキラまたたく。ありきたりの表現は、避けたいものです。
5. 書店にはよく行きます。もっぱら時間つぶしのためです。書店にはもうしわけありませんが、良い本があったら買っています。――こんな具合に、書いてもらうと「もっぱら」が生きてきます。
山本藤光2017.12.13

質を測る075:個人面談のテーマ

2018-07-30 | 営業の「質を測るものさし」あります
質を測る075:個人面談のテーマ
――第6章:会議道・面談道
 個人面談は、会議と同じ理念で実施しなければなりません。共創。二人でなにかを生み出すのが、個人面談です。面談時にはテーブルの上に、A3サイズくらいの用紙をおいてください。書き出すことは重要ですし、面談終了時には「合意・納得」事項を丸でかこんで署名し合うことが求められます。
面談にはいくつかのテーマがあります。

1. 年間目標に対する合意とアクションプラン作成(年頭)
2. 年間目標に対する進捗状況の確認と支援(毎月または四半期)
3. 自己申告(キャリアパス)
4. 業績評価のフィードバック
5. 問題発生時の対応

1.年頭の面談
 営業リーダーと営業担当者が、年間のゴールを確認して共有するのは、きわめて大切な一歩です。このステップが欠落していると、年間をとおして連携する合意点がないことになります。すでに紹介していますが、弱いチームほど実施率が低い傾向にあります。
 面談時には、必ずメモをとること。合意事項については、メモを見ながら「これでやりましょう」と確認することが大切です。年頭に合意しておかなければならないのは、次の点です。これらの項目に関する話し合いは、丸一日をかけるくらいの心がけで、望んでもらいたいと思います。

・販売目標に対する重点顧客の攻略方法(営業リーダーが進捗   状況を見守る先の共有)
・意識・行動に関するレベルアップのポイント(営業リーダーがレベルアップを支援する項目の共有)
・「戦略同行」先の選定と攻略方法(営業リーダーが連携して攻略する先の共有)
 
年頭の面談では、仕事以外のことにもふれてもらいたいと思います。家族のこと、将来の夢などにも耳を傾けてください。

2.目標の進捗確認
 毎月、四半期に1回は実施すべきです。営業担当者の70パーセントは悩んでいます。もちろん現場同行でもカバーできますが、面談は静的状況でおこなうものなので、営業担当者は普段以上にかまえているのが自然です。したがって、できるだけ「聞き取る」姿勢をつらぬいてください。タイムリーな小言は現場では有効ですが、面談の場では封印しなければなりません。

3.自己申告
 営業担当者が将来の夢を語るとき、全面的に支援するスタンスで傾聴しなければなりません。「支援」にはいくつかの形があります。営業リーダーのできる範囲での支援。その道の先駆者を紹介してあげる支援……。自己申告の面談で、フムフムと聞いているだけの営業リーダーがいます。営業担当者の夢に対して、自分はどんな支援ができるのかを伝えるのが「自己申告」の面談です。支援の具体例を示します。
・常に気にかけて進捗状況を見守る
・その道の先達を紹介する(プロマネになりたい営業担当者には、プロマネを紹介してあげます)
・教材やセミナーなどを推薦する(研修部などで知恵をかります)

4.業績評価のフィードバック
 間違っても、「私はよい評価をつけたのだけれど、上で変えられてしまった」などの弁明はしないでください。営業担当者は業績評価以前に、自分が上司からなされている「人物評価」を熟知しています。人物評価とは「ありがとう」「期待している」「がんばったな」などと上司から受けた言葉の総体でできあがっているものです。
 評価には2種類あります。「微分評価」と「積分評価」です。前者は1年単位の業績評価、後者は積年の評価の合算を意味します。「人物評価」は積分評価に近いものです。通常「業績評価のフィードバック」は単年度のものになされますので、「人物評価」や「積分評価」を混在させずに実施しなければなりません。

5.問題発生時の面談
 本人の素行問題、クレームなど、やむを得ず呼び出して面談することもあります。毅然(きぜん)とした態度で、真摯(しんし)に問題に立ち向かわなければなりません。

掲示板に:めんどうかい127

2018-07-30 | 営業リーダーのための「めんどうかい」
掲示板に:めんどうかい127
――第9章:同行時の話法・ツール
◎ショートストーリー

(掲示板に張られたベスプラの前に、2人の営業担当者が立っている。2人とも、ペットボトルのお茶を持っている)
A「『お客さんに、○○(競合品名)を使っているのはなぜですか』と直接質問するって書いてあるけど……」
B「そんな質問をしたら、叱られるに決まっているだろう」
A「でもここには、何度も試みているけど、1度も怒鳴られたことはない、と書いてある」
B「漫然と使っているお客さんは多いよな」
A「ということは、当社の○○をなぜ使っていただけないのですか、という質問も考えられるよ」
B「ちょっと過激だけど、1度試してみる価値はありそうだ。よし、このベスプラに1票入れてあげよう」

私たちの「CP」終了後も、ベスプラは継続されています。たった1枚の紙片が、ベスプラを生き生きとさせるのです。

成功例の聞き取りは、全員に満遍なくやる必要はありません。営業リーダーなら、部下の成功例を掌握しているはずです。同行時に「いいいな」と思ったことを、さりげなく聞き取ります。それで十分です。

町おこし192:文芸誌新人賞

2018-07-30 | 小説「町おこしの賦」
町おこし192:文芸誌新人賞
――『町おこしの賦』第6部:雪が27 
新築祝いのあと、駅の売店で新聞を買った。第一面に、文芸誌の宣伝が掲載されていた。何気なく目を落とした恭二は、思わず飛び上がりそうになった。文学界新人賞のところに、浅川留美の名前を見つけたのである。
恭二は驚いて、待合室を飛び出した。標茶行き電車の発車までは、あまり時間がない。大急ぎで書店まで駆ける。文芸誌は、標茶の書店には置かれていない。

 目的の雑誌を買い、全速力で駅へと戻る。発車二分前。改札を抜け、階段を猛スピードで下り、ホームへの階段を駆け上がった。間に合った。肩で息をしながら、呼吸が整うのを待つ。もどかしい思いで、ページを開く。
――『同棲ごっこ』浅川留美
 タイトルと著者名の下に、笑顔の留美がいた。プロフィールでは、ニューヨーク在住となっている。「小説を書く」といっていた留美は、夢を実現させたのだとうれしい気持ちになった。ところが本文を読みはじめて、恭二は胸が押しつぶされるような気持ちになった。

 主人公「わたし」と同棲しているのは、まさに恭二そのものだったのである。名前こそ京太郎にしてあるが、留美と暮らした日々がそのまま表現されていた。
京太郎は、臆病で早漏で怠惰な男だった。主人公の「わたし」は、同棲相手の京太郎のそうした欠陥を、調教する使命に燃えている。
 恭二は途中で、読むのを止めた。怒りのために雑誌を持つ手が震え、息苦しくなってしまったのである。活字から目を離し、窓外に視線を向ける。そこには欠陥だらけの、モデルの顔が映っていた。

 気持ちを切り替えて、恭二はもう一度活字に目を落とす。図書館での出会い。予備校からH大学へ。二人のマンション探し。同居。粗末な調度品。みんな現実と同じだった。
夜の営みもそう書かれてしまえば、そうなのかもしれないと思えてくる。京太郎は入社した会社を、すぐに退職してしまう。その報告を聞いた「わたし」は、自分の調教が失敗に終わったことを悟る。

 これは小説というよりも、ねじ曲げられた暴露記事のようなものだ。読み終えて、恭二は雑誌を激しく叩きつける。


妙に知180730:日本はすごい

2018-07-30 | 妙に知(明日)の日記
妙に知180730:日本はすごい
▼モリカケ問題で首相は十分な説明責任を果たしていません。そんななかで安部3選は、現実になりそうです。自民党はどうなっているのでしょうか。うそをつかない人に、首相になってもらいたいものです。▼日本を絶賛する外国人のテレビが全盛の時代です。ときどきユーチューブで見ますが、あれは政権がせっせと投稿しているのでしょうか。
山本藤光2018.07.30