山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

乱知180508:二兎を追う者は

2018-05-08 | 乱知タイム
乱知180508:二兎を追う者は
大谷翔平が3勝目。ねんざを克服しての再起は順調。大谷獲得の最有力候補だったシアトル・マリナーズには、落胆の声が蔓延しています。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが、二刀流の大谷にたいして「二兎」はあてはまらないようです。
山本藤光2018.05.08

知だらけ104:反省

2018-05-08 | 知だらけの学習塾
知だらけ104:反省
人間力のある人には意欲がある
意欲のある人には夢がある
夢のある人には目標がある
目標のある人には努力がある
努力のある人には失敗がある
失敗のある人には反省がある
反省のある人には経験がある

「反省」とは、行為を検証することです。反省は多くの場合、失敗や誤りなどに従属する言葉ですので、ネガティブな印象を持たれていると思います。前に優秀な人ほど、失敗が多いと書きました。その理由は、失敗を糧にしているからです。失敗を糧にするには、そこに反省が介在していなければなりません。それがあるから、失敗を踏み台にできるわけです。

商談で不発に終わった営業マンがいます。「今日は〇〇さんの機嫌が悪かったから」で済ませてしまう人は、優秀な営業マンではありません。なぜ機嫌が悪かったのかを探るのが、優秀な営業マンです。あの時間は、忙しくて疲れているのかな。前日阪神が負けたからかな。いきなり商談に入ったのがまずかったのかな。このように、思考を展開するのが「反省」です。

時々「ダメじゃないか」と、部下を叱責している上司を見かけます。これは最悪のパターンです。こうした表現を「言葉を丸める」と言います。ケンカの場面を思い起こしてください。彼らが発する言葉が、その典型です。傍で聞いていても、何のことだかさっぱりわかりません。上司が発する「ダメじゃないか」も同じことなのです。

上司は部下に失敗の要因を、考えさせる時間を与えなければなりません。例えば部下と同行していて、顧客を出たときにはこんな具合に語りかけます。

上司「うまく行かなかったね。どう感じた?」
部下「ちょっと緊張しちゃって、早口になってしまいました」
上司「もっと落ち着いて、まずは質問を投げかけてみたらどうだろう」

仕事に一区切りがついたとき、駆け足でも構いませんので、それまでの段取りを振り返る。これが「反省」するの定義です。反省は何も、失敗に付随した言葉ではないのです。反省する習慣を私は「瞬間日記」と呼んでいます。事に及ぶ前に成果を思い描く。これと同じことで、事が終わったら成果を顧みるのが、「反省」のポイントとなります。

コルクを水中に押し込むと、手を放した瞬間に飛び上がります。これが反省から、新たな気付きを得る瞬間です。より高く飛び上がろうとするとき、人はまず身を屈めます。反省とは、そんなイメージの言葉です。できごとの追体験と呼んでもいいかもしれません。

ビリーの挑戦2-060cut唐突な嵐

2018-05-08 | ビリーの挑戦第2部・伝説のSSTプロジェクトに挑む
ビリーの挑戦2-060cut唐突な嵐
――Scene09:営業本部の嵐
影野小枝 野中郁次郎先生の連載記事により、SSTプロジェクトは世間の話題になりました。そんなときに突然営業本部長が退任し、新しく森永本部長が着任しました。営業本部の3部長が、森永本部長の部屋に集められています。
森永 来月から営業本部の組織を改める。このままの体制では、いつまでたっても業績は上がらない。きみたちのポジションに新たな人材を迎えることにした。きみたちは副部長として、新しい3人の部長を支えてもらいたい。彼らは前の会社で、私とともに汗を流した有能な人材だ。真摯に彼らを受け入れてもらいたい。
片岡 私たちのどこがまずいのですか? 本部長の命令に従わなかったからなのですか?
森永 現在の業績低迷の原因が、きみたちにあることは歴然としている。甘い体質を一掃しなければ、業績の回復はないと確信している。
三枝 私がリストラを断行できなったから、甘いというのですか? 人を減らして生産性を上げるのは、極めて簡単なことです。あなたには、彼らの背後にいる家族の姿が見えますか? 何の落ち度もないのに、首を斬ることなどできません。
漆原 営業本部を円滑に回すのが、企画部の役割です。やっとSSTが軌道に乗りました。今度は営業リーダーのレベルアップを、急がなければなりません。そんな過渡期にある営業部隊に、あなたは手を入れてかき回しているんですよ。
森永 何をほざこうと、私の決意は揺るがない。
片岡 辞めろ、とおっしゃっているんですね?
森永 それは受け止める方の判断だ。私は副部長として、新任の部長を補佐してもらいたい、としかいっていない。
三枝 うちの黒田を使って、データベースでの管理を始めました。私たちはMRの質を上げることを、最優先しています。
森永 そんな悠長なことをいっているから、メーカランキングは38位から動かない。5年以内に19位まで引き上げるには、量で管理しなければならない。
漆原 それでは現状と逆行しています。
森永 そんな甘い考えだから、いつまでも現状を打開できないんだ。副部長として、本物の仕事を学んでもらいたい。
影野小枝 大変なことになりました。3人は憤然と席を立ちました。 

どん底塾51:新ビジネスの総括

2018-05-08 | 小説「どん底塾の三人」
どん底塾51:新ビジネスの総括

 「どん底塾」最後の日を迎えた。加納百合子は相変わらず、ハローワークに通っていた。海老原浩二の部屋からは、ダンボールがなくなっていた。自動食器洗い乾燥機の販売が、順調になったからだ。大河内雄太も、着実に業績を上げはじめていた。

 亀さんによる新ビジネスの総括がはじまった。ホワイトボードには、細かな数字が並んでいる。
 
――朝食:1日50食x26日x利益180円=234000円
――昼食:1日80食x26日x利益150円=312000円
――バイト代:時給800円x8時間x26日=166400円
――朝、昼食の利益:379600円
――夜食;客単価1400円x65人x26日=2366000円
――夜食の利益:利益率35%=828100円
――弁当:1日30食x26日x利益120円=93600円

「これが定食屋・どん底の現状だ。おまえたちが考えた、新ビジネスの純益は47万円ちょっとだ。このビジネスをこのまま続けるべきか否か、それはおまえたちに任せる」
「止めちゃうのは、もったいないですよ。これに企業向けの仕出弁当を加えれば、確実にやっていけます」
 大河内は、目を丸くして力説した。海老原が続ける。
「亀さんには、続ける意思がないのですか?」
「おれは、やらん。定食屋だけで、十分に家族を養っていける。だいいち、体がもたんよ」

 せっかく、軌道に乗った新ビジネスである。加納も、終わらせたくないと考えていた。それよりも加納には、亀さんが何気なくいった「家族」という言葉が気になった。少なくとも、「家族」は同居していない。
「新ビジネスもそうですが、このどん底塾も終わらせるのは惜しいです。亀さん、続けてください」
「なら、加納が引き継げよ。もちろん、おれもサポートする。実はおまえたちに、プレゼントがある。加納にはこれだ」
 加納百合子と書かれた封筒を、亀さんが差し出す。
「開けてみろ」
「定款とありますが」
「そうだ。おまえさえその気になれば、そこに署名捺印すればいい。おまえが社長になって、新ビジネスをさらに拡大するんだ」
「加納百合子が社長。これはいいや。思い切ってやれよ。おれたちも応援するから」
 大河内が海老原の方を振り向いて、握りこぶしを宙に突き上げている。
「加納さんがここでやれば、ぼくたちも通えます。どん底塾も継続できます」
「亀さん、そして大河内くんと海老原さん、ありがとう。やってみます」
 加納は泣いていた。亀さんから受け取った封筒が、激しく上下に揺れた。
「おまえたちは、本当によくやった。加納が新ビジネスを引き継いでくれれば、こんなうれしいことはない。資本金はおれが出す。加納は社長として、新会社を切り回せ」

のほほん180508:清水義範で笑おう

2018-05-08 | のほほんのほんの本
のほほん180508:清水義範で笑おう

読書習慣のない人に勧めるのは、清水義範の次の3冊にしています。『蕎麦ときしめん』(山本藤光の文庫で読む500+α紹介作)、『国語入試問題必勝法』、『永遠のジャック&ベティ』(いずれも講談社文庫)
とにかく笑わせてくれますので、未読の方はぜひ読んでみてください。清水義範にはこれらの作品を所収した『パスティーシュ100・全6巻』(ちくま文庫)があります。笑って読書を楽しみたい方にお勧めです。
山本藤光2018.05.08

妙に知180508:一か八か

2018-05-08 | 妙に知(明日)の日記
妙に知180508:一か八か
「一か八か」の語源の由来をご存知ですか。読んでいて考えもつかない説明に驚きました。
「広辞苑」では、「(もとカルタ博奕(ばくち)から出た語)運を天にまかせて冒険すること。のるかそるか」と説明されているのみです。語源辞典を確認します。

――サイコロ賭博(とばく)の「丁」「半」の上の文字から。(日本語語源辞典)
山本藤光2018.05.08

同行を仕事の柱にする:めんどうかい54

2018-05-08 | 営業リーダーのための「めんどうかい」
同行を仕事の柱にする:めんどうかい54
――第4章:威力ある同行
 営業リーダーにとって、営業担当者はわが子と同じです。「勉強しろ」ばかりいい続けていると、わが子は逆上します。わが子とは、ほめたり、叱ったり、なだめたり、すかしたり、手練手管を駆使して接します。

 部下同行も、同様に実施しなければなりません。それなのに営業リーダーの振る舞いは、評価者としてのものになっています。わが子に勉強を教える。解答を間違えると、「そんなこともわからないのか」と吐き捨てて、終わりにはしないでしょう。ていねいに、解答へのプロセスを、説明するはずです。

 同行も同じです。このように工夫すれば、クロージングにインパクトが生まれます。営業リーダーは、ていねいに話してあげなければなりません。

◎ショートストーリー

 北海道の責任者になったとき、支店は全国で最下位でした。毎日のように、4人の営業リーダーと戦略を練りました。他の営業所と比べて、何が劣っているのか。どうすれば、追いつけるのか。自分たちは、何をすべきなのか。考え抜きました。

 結論は、「徹底的に同行しよう」ということになりました。4人のリーダーは、いずれも全国トップの元MRばかりでした。営業担当者を育てる以前に、彼らの力を借りて業績を上げたかった。正直にいうと、彼らの力で数字を作ってもらいたかった。これが私の本音でした。

 4人のリーダーは、精力的に同行してくれました。私自身も、営業担当者との同行に明け暮れました。数字は信じられないほど、ぐんぐんと上昇しました。気がついたら、市場規模が倍近い東北6県よりも売れていました。鼻が高かったし、有頂天でした。(明日に続く)

町おこし119:同じ笑顔

2018-05-08 | 小説「町おこしの賦」
町おこし119:同じ笑顔
――『町おこしの賦』第4部:標茶町ウォーキング・ラリー27
 ひたすら不合格の告知を、待つ日々が続いた。詩織からは、一切連絡がなかった。ベッドに寝転がり、本を読んでいた。枕元のスマホが鳴った。
「愛華です。理佐が、理佐が……」
「理佐ちゃんが、どうしたんですか?」
 悪い予感が体内を貫く。ちょっと間があって、恭二はとんでもない報告を耳にする。
「死んだ」
 耳の奥に、異様な音が響く。頭のなかが、真っ白になる。理佐が、死んだ。反すうしてみる。現実感のないまま、恭二は震えるスマホを耳にあて直す。切れていた。

 南川理佐は前島の運転する車に乗って、雪道でスリップした車もろとも、崖下に転落した。標茶町と虹別の中間点あたりで、無残につぶれた車のなかから、二人の亡骸が発見された。
葬式には、恭二だけが参列した。勇太の姿はなかった。詩織には、知らせていない。弔問客のなかに、宮瀬幸史郎と可穂の姿があった。
 恭二は手にかけた数珠が、はじけ飛んだような錯覚を覚えた。逝ってしまった。詩織が離れ、勇太が離れ、そして理佐も離れて逝ってしまった。

 祭壇に向かって、手を合わせる。こぼれるような、笑顔の理佐がいた。恭二は幣舞橋で撮ったときの、理佐の笑顔と同じだと思った。焼香を終えて、遺族席に向かって頭を下げる。卒業旅行のときにお世話になった、おじいさんとおばあさんの姿があった。愛華の姿もあった。

卒業旅行の日、理佐は勇太と二人っきりの朝を迎えている。何があったのか、勇太はとうとう語ってくれなかった。理佐が幸せの、絶頂期にあったころである。
学生服の裾を、引っ張られた。宮瀬可穂だった。可穂は真っ赤な目を、参列者の後方に向けた。勇太がいた。恭二は勇太の傍らに寄り、そっと彼の肩に手を置く。
「きたくなかった」
 絞り出すような声で、勇太はぽつりと吐き捨てた。そして泣いた。恭二は「タウン誌くしろ」を、
理佐に読ませたかったと思った。標茶町ウォーキング・ラリーのパンフレットを飾っているのは、理佐が描いた老若男女の笑顔だった。
記事には小さいけれど、そのパンフレットが添えられていた。信じられなかった理佐の死を、恭二は厳粛に受け止めた。