どん底塾13:社外価値を高める
自分を磨き、社外価値を高める。亀さんは、さっきそういった。大河内はノートの右ページに、「社外価値とは何か?」と書いてから質問した。
「社外価値を高める必要性が、理解できません」
「転職を体験したおまえでもわからないのなら、ほかの2人にはチンプンカンプンだろうな。では質問しよう。大河内はなぜ、会社が倒産したときに転職できた?」
「親しくしていた支社長が、声をかけてくれました」
「その支社長はなぜ、おまえに声をかけた?」
「会社が倒産したのを知って、かわいそうだと声をかけてくれたのだと思います」
「おまえはいま、その支社長のところにいるんだよな。ぜんぜん売れない営業マンを入れると、だれが迷惑する?」
「支社長や所長です」
「だろう。じゃあ、おまえが支社長の立場だったら、ダメ営業マンに声をかけるか?」
「かけません」
「支社長の見る目が正しかったかどうかは別として、支社長はおまえの営業的な価値を評価していたんだよ。それが、社外価値というもんだ」
「もうひとつ質問しよう。大河内の社内価値って、なんだ?」
「たくさんの契約を取る、営業マンであることです」
「おまえはライバルの生保会社から、引き抜きの話をもちかけられたことがあるか?」
「ありません」
「いまのおまえには、営業マンとしての社外価値がない。だから、どこからも声がかからないんだ。優秀なやつには、必ず社外から声がかかる。つまりだ、生命保険の営業マンとしては、社内でも価値が希薄だということになる。
リストラされたどこかのお偉いさんがハローワークで、部長ならできますといったという笑い話がある。ずれているんだよな、世間の常識から。おまえもこの部長さんも、終身雇用の亡霊にとりつかれている。自分を、より高く評価してくれる会社に移るのは、世界の常識なんだよ。もうすぐ、日本もそうなるさ」
「では、『どん底塾』について説明しよう。おまえたちには、この店の経営に参画してもらう。経営っていったって、たかが定食屋だ。それも、つぶれそうだときている。おまえたちには、店の再建を手伝ってもらう。その仕事を通じて、現在の仕事を見つめ直してもらいたい。
経営マインドを身につけた、営業マンは強くなる。『どん底塾』は、4か月の期間限定だ。おれの目標は、おまえたちをその間に、トップの営業マンに育て上げることだ。どうだ? なってみたいか? おれを信じてついてくれば、絶対にそうなる」
トップの営業マンになりたい。所長の顔を思い出しながら、海老原浩二は亀さんにかけてみようと思う。大河内雄太も、思いは同じだった。どん底から、はい上がるきっかけにしたいと思う。
※加納百合子の日記
今日ほど「プロフェショナル」という言葉を意識したことはない。わたしは、人事部のプロフェショナルではなかった。だから、社外価値は皆無。自分自身を磨き鍛えろ、と亀さんはいう。でもそれが具体的にどうすることなのか、教えてくれない。
しばらくは「どん底塾」で、自分自身のあり方を模索することにしたい。
自分を磨き、社外価値を高める。亀さんは、さっきそういった。大河内はノートの右ページに、「社外価値とは何か?」と書いてから質問した。
「社外価値を高める必要性が、理解できません」
「転職を体験したおまえでもわからないのなら、ほかの2人にはチンプンカンプンだろうな。では質問しよう。大河内はなぜ、会社が倒産したときに転職できた?」
「親しくしていた支社長が、声をかけてくれました」
「その支社長はなぜ、おまえに声をかけた?」
「会社が倒産したのを知って、かわいそうだと声をかけてくれたのだと思います」
「おまえはいま、その支社長のところにいるんだよな。ぜんぜん売れない営業マンを入れると、だれが迷惑する?」
「支社長や所長です」
「だろう。じゃあ、おまえが支社長の立場だったら、ダメ営業マンに声をかけるか?」
「かけません」
「支社長の見る目が正しかったかどうかは別として、支社長はおまえの営業的な価値を評価していたんだよ。それが、社外価値というもんだ」
「もうひとつ質問しよう。大河内の社内価値って、なんだ?」
「たくさんの契約を取る、営業マンであることです」
「おまえはライバルの生保会社から、引き抜きの話をもちかけられたことがあるか?」
「ありません」
「いまのおまえには、営業マンとしての社外価値がない。だから、どこからも声がかからないんだ。優秀なやつには、必ず社外から声がかかる。つまりだ、生命保険の営業マンとしては、社内でも価値が希薄だということになる。
リストラされたどこかのお偉いさんがハローワークで、部長ならできますといったという笑い話がある。ずれているんだよな、世間の常識から。おまえもこの部長さんも、終身雇用の亡霊にとりつかれている。自分を、より高く評価してくれる会社に移るのは、世界の常識なんだよ。もうすぐ、日本もそうなるさ」
「では、『どん底塾』について説明しよう。おまえたちには、この店の経営に参画してもらう。経営っていったって、たかが定食屋だ。それも、つぶれそうだときている。おまえたちには、店の再建を手伝ってもらう。その仕事を通じて、現在の仕事を見つめ直してもらいたい。
経営マインドを身につけた、営業マンは強くなる。『どん底塾』は、4か月の期間限定だ。おれの目標は、おまえたちをその間に、トップの営業マンに育て上げることだ。どうだ? なってみたいか? おれを信じてついてくれば、絶対にそうなる」
トップの営業マンになりたい。所長の顔を思い出しながら、海老原浩二は亀さんにかけてみようと思う。大河内雄太も、思いは同じだった。どん底から、はい上がるきっかけにしたいと思う。
※加納百合子の日記
今日ほど「プロフェショナル」という言葉を意識したことはない。わたしは、人事部のプロフェショナルではなかった。だから、社外価値は皆無。自分自身を磨き鍛えろ、と亀さんはいう。でもそれが具体的にどうすることなのか、教えてくれない。
しばらくは「どん底塾」で、自分自身のあり方を模索することにしたい。