北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「父/宮脇俊三への旅(宮脇灯子著・グラフ社2006刊)」を読んだ。宮脇灯子(みやわきとうこ1968生れ)女史は、成城大学(文芸学部)卒で、鉄道紀行作家/宮脇俊三(1926~2003)氏の長女である。-----
宮脇俊三氏のバイオグラフィを知るための1冊であり、ファンの方は必読と思われる。どのような大作家でも愛娘に掛かれば社会に映っていた虚像は、コテンパンにされるのだが、この本「父/宮脇俊三への旅」でも同様に、素を曝してくれていてとても面白いのである。2度目の結婚で生まれた娘さん2人なので、宮脇俊三氏はとても可愛がっていたようだ。-----
自宅の隣に北杜夫(1927~2011)氏が住んでいたそうであり、宮脇俊三氏が中央公論社時代に編集者として担当されたのが、北杜夫氏の“どくとるマンボウ航海記シリーズ”であったそうである。-----
一人で行き先も定かには言わずに旅に出る父親を不思議に思わなかったとか、紀行作家の舞台裏が語られていて微笑ましい。晩年には軽井沢の別荘で暮らしたり、家族旅行もそれなりになさっている。黒部立山に連れていって貰って、2回目だよというと、がっかりされてしまったとか。女性に囲まれた中で、男が一人の家庭の様子が面白おかしく語られているのも、宮脇俊三氏が幸せな家庭に恵まれたからこそであり、安心して一流の紀行文を書けたのだろうなと思った。