奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その944)

2019-03-26 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「父/宮脇俊三への旅(宮脇灯子著・グラフ社2006刊)」を読んだ。宮脇灯子(みやわきとうこ1968生れ)女史は、成城大学(文芸学部)卒で、鉄道紀行作家/宮脇俊三(1926~2003)氏の長女である。-----

宮脇俊三氏のバイオグラフィを知るための1冊であり、ファンの方は必読と思われる。どのような大作家でも愛娘に掛かれば社会に映っていた虚像は、コテンパンにされるのだが、この本「父/宮脇俊三への旅」でも同様に、素を曝してくれていてとても面白いのである。2度目の結婚で生まれた娘さん2人なので、宮脇俊三氏はとても可愛がっていたようだ。-----

自宅の隣に北杜夫(1927~2011)氏が住んでいたそうであり、宮脇俊三氏が中央公論社時代に編集者として担当されたのが、北杜夫氏の“どくとるマンボウ航海記シリーズ”であったそうである。-----

一人で行き先も定かには言わずに旅に出る父親を不思議に思わなかったとか、紀行作家の舞台裏が語られていて微笑ましい。晩年には軽井沢の別荘で暮らしたり、家族旅行もそれなりになさっている。黒部立山に連れていって貰って、2回目だよというと、がっかりされてしまったとか。女性に囲まれた中で、男が一人の家庭の様子が面白おかしく語られているのも、宮脇俊三氏が幸せな家庭に恵まれたからこそであり、安心して一流の紀行文を書けたのだろうなと思った。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その943)

2019-03-25 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「日本史の探偵手帳(磯田道史著・文春文庫2019刊)」を読んだ。磯田道史(いそだみちふみ1970生れ)氏は、慶應大学(文学部史学科)卒で、茨城大学、静岡文化芸術大学を経て、現在は国際日本文化研究センター准教授であり、“武士の家計簿(2003)”で作家デビューをしている。-----

日文研では、先輩の倉本一宏(日本古代史)、後輩の呉座勇一(日本中世史)がいるためか、「日本史の探偵手帳」では、大方が江戸時代、遡っても戦国時代以降が対象となっている。-----

江戸時代は歴史史料が数多く残っているので、論考はこれからも数知れず発表されるだろうけれど、現代とそれほど変わらない人間の息遣いが感じられるために、日本古代史のようなロマンは感じられない。このようにそれ程に面白くない江戸時代であるが、磯田道史氏の手に掛かると、“くの一は実在したのか”とか、“頼山陽が明治維新を起こした”とかの話題を提供してくれていて、探偵手帳のメモ書きというか歴史研究家の舞台裏を見せてくれているので、否が応にも読まずにはいられなくされてしまう仕掛けとなっている。-----

磯田道史氏は歴史を研究して来て日本の将来に向けて言えるのは、藤原正彦氏の“日本の品格”も大切だろうけど、矢張り南蛮人が感心した模倣の力、技術力で世界に貢献するのが一番なのだろうと、文系の人士としては珍しく理系の学問の重要性を説いている。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その942)

2019-03-24 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「私の途中下車人生(宮脇俊三著・角川文庫2010刊/1986版の文庫化)」を読んだ。宮脇俊三(みやわきしゅんぞう1926~2003)氏は、東大(西洋史科)卒で、中央公論社で編集長を務めた。1978年に退社し、以後、執筆業に専念した。----

「私の途中下車人生」は鉄道紀行作家としての地位を築いた宮脇俊三氏のバイオグラフィとして貴重な本の一冊となっている。----

これを読むと、宮脇俊三氏が鉄道旅を好きになっていく経緯が良く分かって、氏の紀行本を読む際の理解が深まるので、鉄道ファンには必読の書となっているのではと思った。-----

宮脇俊三氏の前半生である父祖の話から“中央公論社”勤務までの間のお話が淡々とではあるが、戦争を挟んで語られており、とても興味深く読むことが出来た。-----

中央公論社はバブル崩壊後、経営難に陥るが、宮脇俊三氏はそのずっと前に退社されており、在職中は、ヒット作の出版に係わって来られたようであり、中央公論社が自社ビルを建てるまでに利益を上げられてもいる。-----

戦時中に、黒部峡谷鉄道や関門トンネルを訪れるなどされており、子供の時分から鉄道マニアであったのだが、ご両親はそれを許して下さったそうであり、生まれながらにして鉄道ファン人生が約束されていたかのようであり、幸せな一人の人の人生を読むことによって共感させて貰えるのだ。勿論文章は東大仕込だから訴える力も大きいのだが、日本の鉄道が運行される限り、これからも宮脇俊三氏の紀行文は永遠に読み続けられることだろうと思った。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その941)

2019-03-23 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
奈良県(ビジターズビューロー)発行の観光ガイドブック「なら温故知新“ここから始まる奈良と藤原氏”」が近鉄奈良線の最寄り駅のラックに並べられている。曰く、“鎌足/不比等父子はいかにして長き繁栄の礎を築いたのか、興福寺/春日大社/平城宮跡、女優の紺野美沙子さんが歴史学者/倉本一宏さんの案内で興福寺の中金堂落慶なった南都をめぐる”と題されている。-----
紺野美沙子(1960生れ)は、慶應大学(国文学科)卒で、才媛なのは当然であるが、古都奈良に相応しく、“なら温故知新”の紙面を飾るにピッタリである。倉本一宏先生、多川俊映貫首とのツーショットも隙なく決まっていて、良くできたガイドブックに仕上がっている。そう云えば昨年(2018)、奈良県は興福寺中金堂の落慶を奈良観光の起爆剤としたいと、荒井正吾知事の宣言があったように思ったが、漸く、興福寺をメインとするガイドブックの完成に至ったのかと納得した。-----
奈良県としては、県南部に観光客を誘導したいのだろうが、先ずは古都奈良に誘客するのが先決であると、悟ったと言う処だろう。そして、近鉄奈良駅直ぐのこれまでは通過地点だった興福寺が中金堂の完成によって、観光客の目に触れるようになったのだから、当然のことだが、これからは更に良い方向に、即ち、インバウンドだけでなく、国内観光客のリピーターも増やしていくことが可能となることと思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その940)

2019-03-22 08:15:00 | 奈良・不比等
北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「頭のいい人は答え方で得をする~がっかりされない答え方/一目置かれる答え方(樋口裕一著・だいわ文庫2018刊)」を読んだ。樋口裕一(ひぐちゆういち1951生れ)氏は、早稲田大学(文学部)卒で、立教大学大学院博士課程満期退学している。仏文学翻訳業の他、小論文指導に係わる著作が多い。現在は多摩大学名誉教授である。-----
「頭のいい人は答え方で得をする」は樋口裕一氏の一連の著作の一つであり、同じことを書いておられるのだが、結構売れるものであるようだ。“頭の良くない人”が読めば、それまで損をしていた局面が改善されて、世の過ごし方が楽になると説いているのである。“頭のいい人”は、読まなくても困らないと言うか、書かれている内容は、当たり前のことであり、教えて貰わなくても実践しているに違いない。では、“頭の良くない人”がこの本「頭のいい人は答え方で得をする」を手にとって書店で購入するかというと、多分、本を読まない人が多いだろうから入手するチャンスも無いことでしょう。なのにこの種の本が売れるのは、“頭のいい人”でも、受験生や社会人として悩み多き日々を過ごすことになると、気の迷いからつい買ってしまうことになり、当たり前のことでも、気休めとなるために、それなりの存在価値があるものと考えられる。人の弱みにつけ込んで商魂たくましく書き続ける樋口裕一氏の根性には感心するばかりである。
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