北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「歴史認識日韓の溝~分かり合えないのはなぜか(渡辺延志著・ちくま新書2021刊)」を読んだ。渡辺延志(わたなべのぶゆき1955生れ)氏は、早大(政経学部)卒、ジャーナリスト/ノンフィクション作家。2018まで朝日新聞に記者として勤務した。歴史を主な取材対象とし、三内丸山遺跡/西安の遣唐使墓誌の発見/千葉市の加曾利貝塚などの報道を手掛けた。--------
この本「歴史認識日韓の溝」の目次は次の通り。“徴用工訴訟(徴用工を巡る対立/日本による朝鮮の支配は不法なものであった/朝鮮半島で何をしたのか)”、“東学農民戦争(隠された歴史/徹底された日本軍トップの意思)”、“関東大震災(強まる主張/虐殺はなかった/子どもたちが見た横浜の震災/なぜ流言を信じたのか)”、“二つの虐殺を結ぶ線(日本軍兵士の実像/正体不明の敵)”、“忘れ去った過去(改竄された日清戦史/戦史改竄の真相)”、“三・一運動(新発見の資料/原敬首相と朝鮮総督の対応)”、“曖昧な自画像(無かったことにされた虐殺/突然誕生したことにされた自警団)”、“幾つもの戦後(語られない戦場での体験/日本人の心の隙を狙った詐術)”、“次の時代を展望する歴史像のヒント”--------
渡辺延志氏は福島県生れで、戊辰戦争の戦場の町で育っている。幕末明治の薩長勢力の東北制圧の記憶が、帝国日本の朝鮮を侵略した歴史と重なって見えると書いている。-------
歴史認識は抑圧された側にすれば受け容れ難いのが当然だろうし、勝者の歴史は常に自らを一方的に正当化して語り、敗者のことなど少しも慮(おもんばか)ってはいない。