奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1360)

2020-05-14 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「養老孟司ガクモンの壁(日経ビジネス人文庫2003刊/初出1998.5)」の“第8章「細胞死から生命を問い直す(田沼靖一との対談)」”を読んだ。養老孟司(1937~)氏は言わずもがな、“バカの壁(2003)”をヒットさせる直前の唯脳論学者である。田沼靖一(たぬませいいち1952生れ)氏は、東京理科大(薬学部)卒、東大大学院(生命薬学)博士課程修了。米国立衛生研究所留学、東京工大(生命理工学部)助教授を経て、当時は東京理科大(薬学部)教授。専門は生化学/分子細胞生物学/細胞の生と死を決定する分子メカニズムの研究。現在も東京理科大教授である。------

細胞死の研究は最近盛んになった。ガン/エイズ/アルツハイマー病など社会的大問題になっている病気の根底に細胞死の異常のあることが分かってきたからである。ガンは死を忘れた細胞の集団と捉えられるし、エイズの場合はHIVの感染によって免疫細胞が死ぬために免疫不全が起きる。アルツハイマー病では神経細胞が異常な頻度で死んでいく。そういった事情で医学/薬学関係の研究者がこの分野に大勢入ってきている。-----

田沼靖一氏はこの“細胞の死”をもっと根本的に捉えるべく、研究を進めている。細胞には二通りあり、血液や肝臓の細胞は幹細胞から絶えず新しい細胞が供給される。片や心筋細胞や神経細胞のように一生入れ替わることのない非再生系の細胞がある。この二通りの細胞の死に方を研究して、前者を“アポトーシス”、後者を“アポビオーシス”と呼んでいる。前者は生命体の機能維持のためであり、後者は生物種の世代交代を促すものであると云うのだ。-----

養老孟司氏は、この細胞死の話題でも活発に発言なさっている。研究の最前線をお知りになりたいのだろう。でもこの研究もそう簡単に生命の神秘を解き明かしてはくれない。ガクモンの壁に直ぐに阻まれるのだ。結局、沢山の細胞の総体が人間と云う生命体を構成しているのだが、その全体をコントロールしているのは何なのだろうかと云う素朴な疑問が、分かるところまでは簡単にはいかないのだ。焦点を当てれば当てるほどそれぞれの細胞は勝手に動いているとしか思えないのだ。にも拘らず全体は新陳代謝を繰り返しやがては死を迎えるのだ。

 

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