奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1355)

2020-05-09 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「養老孟司ガクモンの壁(日経ビジネス人文庫2003刊/初出1999.2)」の“第12章「記憶の確かさ/不確かさ(仲真紀子との対談)」”を読んだ。養老孟司(1937~)氏は言わずもがな、“バカの壁(2003)”をヒットさせる直前の唯脳論学者である。仲真紀子(なかまきこ1955生れ)女史は、1984お茶の水女子大学大学院博士課程(人間文化研究科)修了、学術博士。米国デューク大学研究員、千葉大学助教授を経て、東京都立大学(人文学部)助教授。専門は認知心理学/発達心理学。対談時は千葉大学在籍中。現在は北大名誉教授、2017立命館大学(総合心理学部)教授である。-------

対談の中で興味深かったのは、刑事事件における目撃証言がどの程度信頼できるのかについて、警察/検察から仲真紀子女史は、専門家の一人としてその信頼性の鑑定を依頼されていることだった。心理学もそのように際どい問題の機微に触れる学問なのだなと改めて考えさせられた。-----

認知心理学の実験や調査の方法は案外素朴であるのだが、それの結果の解釈に、相当の学識と人間力と云うかそれこそ文系の社会科学系の学者としての鋭く人間を見る目が求められるのだなと思った。-----

人間は長い人生を送る間に、記憶を都合よく一貫したものに書き換えていると考えられるというのだ。だから時間が経てば経つほどに、何回も話せば話すほどにストーリー立ったものに仕上がっていくのであり、足りないところを創作で補ったり、拙い処は消去したりするのであると。そしてそういう行為を本人は覚えていなくてそれが本当の記憶であるかに思ってしまうのであると。人間と云うのは生きていくためには記憶も書き換えるとは困ったものであるのだが、だからこそ目撃証言などは捜査材料として安易に信じてはだめだと仲真紀子女史は釘(くぎ)を刺(さ)している。-----

養老孟司氏は、4歳の時に父親が自宅で結核療養していて亡くなった記憶が負の記憶として、長ずるまでずっと何かにつけて養老孟司氏を戦慄させてきたのであると、しかし養老孟司氏は自らその抑圧された記憶を解放させて漸く、安寧を得たと仰っている。日本は精神分析を得意とせずに未発達であったが、面倒な実験手法を駆使して科学的に心理学に取り組む仲真紀子女史なら希望が持てると、養老孟司氏はお考えのようだ。

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