夢の羅列<喪失のデザイン>
夢の中で、
私は誰かと話をしていたが、
「それじゃまた」とその誰かに告げて自転車を漕ぎ出した。
坂の上だったらしく、
漕ぎ出した地点から長い下り坂が続いた。
大きい弧状に左へと曲がってゆく下り坂で、
下まではおそらく300メートルか、もっとあるかもしれなかった。
坂はそれ自体が商店街で、
坂の上から下まで屋根のあるアーケードになっていた。
私はふんふん♪と気分よく下っていた。すると、
左の壁に「意識喪失に注意」と張り紙が流れて見えた。
気に留めることもなく私は下り続けた。
50メートルほど前方に一人、
そのもう少し前にまた一人と、
やはり私と同じく自転車で下っている人が見えた。
風が気持ちいい。
両側の店はすべて閉まっていた。
深夜か、それとも早朝なのか。
この坂を下りきると、きっと駅前に出るのだろうか。
そんなことを考えながら「しゅーっ」と下っていると、
一番先頭の自転車が右にガッシャーンと倒れた。
「あれ」と見ているうちに、
その後ろの自転車もステーンと転がった。
「えっ?」と私は前方に注意し、ブレーキをかけ始めた。
と同時に世界がスローモーションのように感じ始めた。
足の感覚が失せていく。
「おいおいおいおい」と自分の中でアラートが鳴り響いた。
平衡感覚が消え、視界が揺れた。
商店街が真横に見えた。
車道上で私と自転車は派手に倒れ、数メートル滑って止まった。
もうその時は意識を失いかけて、足は動かず、心臓が爆発寸前だった。
テロだと思った。
毒性のガスだと思った。
おそらくガスが坂の下に滞留していて、
ある地点まで下ったからガスを吸い込むことになったのだろう。
とにかく助けを呼ぼうと思った。
しかしこんな時には何と呼べばいいのか。
「助けてくれ」とは
この期に及んでも言いたくなかった。
一瞬考えて、
いや口をついて出たのか。とにかく
「おーい、おーい、」と私は力を振り絞って叫んだ。
しかし店はすべて閉まっていたし、
人の姿も見なかったし、
唯一、下に見えた自転車の人もおそらくもう意識はないだろうし、
これで死ぬのかと思ったが、恐れはなかった。
しかし車道で倒れているのは生存の可能性的に最低限まずいと、
手の力だけで這い、私は歩道を目指した。
なんとか50センチほど移動した場所がちょうど
上り車道の左タイヤの轍のあたりで、
「ここは一番轢かれるよ」と強く思い、
私は気絶寸前だったが、残った力と意識を振り絞って、
石の灯籠風の歩道ガードというか車止めの脇を這い抜けて、
石畳の歩道上でようやく気を失った。
夢の中で気絶することは初めてだったが、
本当に気を失うという感覚がはっきりとあり、
私はしばらくの間、意識がなかった。
人に囲まれている雰囲気になんとなく目が覚め、
私はようやく上体を起こした。
10人ほどの人に私は囲まれていた。
私は歩道に座り込んでいた。
まだ十分に朦朧としていた。
学者風の男が私の前に出てきて、
私が助かったこと、
テロやガスではなかったこと、
などをまず説明し、それから、
スケッチブックのような大きなノートを出し、
どうして意識を失い転倒したかを、
ノートに描かれた図を見せながら私に説明した。
<それ>を見ると、または目にしてしまうと、
その後、意識を喪失してしまう種類の図形や絵があり、
あなたや、前で転倒した二人は、
この下りのどこかでそれを見たのだろう。
と言いながら男はノートの一枚目を私に見せた。
円や四角、放物線、放射線などの線画で、
けっして複雑ではなく、芸術的でもなかった。
さらにもう一枚をめくって見せた。
それは青いクッキーモンスターのようなキャラクターの絵で、
見るからに子供向けのものだった。
最初の図形とはまったく種類の違う絵柄なので、
私の思考は少し混乱した。
そして、
これでは子供に見せられないではないか、と、
憤慨した。
そしてまたそれらを見つめたたものだから、
やっぱり意識が遠くなってきた。
夢の中で、
私は誰かと話をしていたが、
「それじゃまた」とその誰かに告げて自転車を漕ぎ出した。
坂の上だったらしく、
漕ぎ出した地点から長い下り坂が続いた。
大きい弧状に左へと曲がってゆく下り坂で、
下まではおそらく300メートルか、もっとあるかもしれなかった。
坂はそれ自体が商店街で、
坂の上から下まで屋根のあるアーケードになっていた。
私はふんふん♪と気分よく下っていた。すると、
左の壁に「意識喪失に注意」と張り紙が流れて見えた。
気に留めることもなく私は下り続けた。
50メートルほど前方に一人、
そのもう少し前にまた一人と、
やはり私と同じく自転車で下っている人が見えた。
風が気持ちいい。
両側の店はすべて閉まっていた。
深夜か、それとも早朝なのか。
この坂を下りきると、きっと駅前に出るのだろうか。
そんなことを考えながら「しゅーっ」と下っていると、
一番先頭の自転車が右にガッシャーンと倒れた。
「あれ」と見ているうちに、
その後ろの自転車もステーンと転がった。
「えっ?」と私は前方に注意し、ブレーキをかけ始めた。
と同時に世界がスローモーションのように感じ始めた。
足の感覚が失せていく。
「おいおいおいおい」と自分の中でアラートが鳴り響いた。
平衡感覚が消え、視界が揺れた。
商店街が真横に見えた。
車道上で私と自転車は派手に倒れ、数メートル滑って止まった。
もうその時は意識を失いかけて、足は動かず、心臓が爆発寸前だった。
テロだと思った。
毒性のガスだと思った。
おそらくガスが坂の下に滞留していて、
ある地点まで下ったからガスを吸い込むことになったのだろう。
とにかく助けを呼ぼうと思った。
しかしこんな時には何と呼べばいいのか。
「助けてくれ」とは
この期に及んでも言いたくなかった。
一瞬考えて、
いや口をついて出たのか。とにかく
「おーい、おーい、」と私は力を振り絞って叫んだ。
しかし店はすべて閉まっていたし、
人の姿も見なかったし、
唯一、下に見えた自転車の人もおそらくもう意識はないだろうし、
これで死ぬのかと思ったが、恐れはなかった。
しかし車道で倒れているのは生存の可能性的に最低限まずいと、
手の力だけで這い、私は歩道を目指した。
なんとか50センチほど移動した場所がちょうど
上り車道の左タイヤの轍のあたりで、
「ここは一番轢かれるよ」と強く思い、
私は気絶寸前だったが、残った力と意識を振り絞って、
石の灯籠風の歩道ガードというか車止めの脇を這い抜けて、
石畳の歩道上でようやく気を失った。
夢の中で気絶することは初めてだったが、
本当に気を失うという感覚がはっきりとあり、
私はしばらくの間、意識がなかった。
人に囲まれている雰囲気になんとなく目が覚め、
私はようやく上体を起こした。
10人ほどの人に私は囲まれていた。
私は歩道に座り込んでいた。
まだ十分に朦朧としていた。
学者風の男が私の前に出てきて、
私が助かったこと、
テロやガスではなかったこと、
などをまず説明し、それから、
スケッチブックのような大きなノートを出し、
どうして意識を失い転倒したかを、
ノートに描かれた図を見せながら私に説明した。
<それ>を見ると、または目にしてしまうと、
その後、意識を喪失してしまう種類の図形や絵があり、
あなたや、前で転倒した二人は、
この下りのどこかでそれを見たのだろう。
と言いながら男はノートの一枚目を私に見せた。
円や四角、放物線、放射線などの線画で、
けっして複雑ではなく、芸術的でもなかった。
さらにもう一枚をめくって見せた。
それは青いクッキーモンスターのようなキャラクターの絵で、
見るからに子供向けのものだった。
最初の図形とはまったく種類の違う絵柄なので、
私の思考は少し混乱した。
そして、
これでは子供に見せられないではないか、と、
憤慨した。
そしてまたそれらを見つめたたものだから、
やっぱり意識が遠くなってきた。