夢の羅列<布団の苦悶>
つづき。
4階は大広間だった。
電灯は全部ではないが、いくつかが点いていて、暗くはなかった。
広間は畳だけが広がっていて、他には何も見えなかった。
いや、隅の方に掛け布団だけが一枚、乱れて放置されていた。
そんなことよりトイレだ。さてどこだ。
何もない方より、何かがある方へ足が向かうのは人の常で、
私は放置された布団の方へ歩み寄った。
普段はそんな行儀の悪いことはしないのだが、
夢の中の無意識がそうさせたのか、
なんだか布団の乱れ方がどうにも憎たらしく思え、
私はまるでそこに布団があったことに気づかなかったように
ずかずかと布団を踏んづけて歩いた。すると、
「うぅっ」
布団が唸るではないか。
布団のくせに声を出すとは生意気な。
私はそう思い、さらにも増してガツガツと踏みつけた。
これでもかと入念に踏みつけてからよく見ると、とうとう顔が布団から出てきた。
いくらなんでも布団に顔はないだろう。
男子生徒が、まるでムンクの「叫び」のような苦悶の表情で
布団にくるまったまま気絶していたのだった。
まだ足の裏に残る生身の感触を反芻しながら私は、
なぜか笑いが止まらず、その場を離れた。
広間の出口までくると、
畳と廊下の間あたりに、やけにゴミが散乱しているのが見えた。
つづく。
つづき。
4階は大広間だった。
電灯は全部ではないが、いくつかが点いていて、暗くはなかった。
広間は畳だけが広がっていて、他には何も見えなかった。
いや、隅の方に掛け布団だけが一枚、乱れて放置されていた。
そんなことよりトイレだ。さてどこだ。
何もない方より、何かがある方へ足が向かうのは人の常で、
私は放置された布団の方へ歩み寄った。
普段はそんな行儀の悪いことはしないのだが、
夢の中の無意識がそうさせたのか、
なんだか布団の乱れ方がどうにも憎たらしく思え、
私はまるでそこに布団があったことに気づかなかったように
ずかずかと布団を踏んづけて歩いた。すると、
「うぅっ」
布団が唸るではないか。
布団のくせに声を出すとは生意気な。
私はそう思い、さらにも増してガツガツと踏みつけた。
これでもかと入念に踏みつけてからよく見ると、とうとう顔が布団から出てきた。
いくらなんでも布団に顔はないだろう。
男子生徒が、まるでムンクの「叫び」のような苦悶の表情で
布団にくるまったまま気絶していたのだった。
まだ足の裏に残る生身の感触を反芻しながら私は、
なぜか笑いが止まらず、その場を離れた。
広間の出口までくると、
畳と廊下の間あたりに、やけにゴミが散乱しているのが見えた。
つづく。