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夢の羅列<別れの埠頭>

2016-11-13 15:42:26 | Dreams
夢の羅列<別れの埠頭>


夢の中で私は、どこかのパーティーかイベントの会場にいた。

安手の映画で見たようなミラーボールの光が隅々まで流れていた。音は四つ打ち。

ドレスコードはなさそうな満員の客筋と際どいユニフォームの女店員たち。

私は所在あるわけもなく、人いきれに蒸した店内をウロウロしている。

その時、若い男が私の名を呼んだ。

「スミマセンお待たせしました。これです。これを○○へ届けてください」

人相風体のわりにはやけに腰が低いやつだ。
私は夢の中なのでそれですべてがわかったような気がして、それに
ちょうど外に出ることも出来るし、渡りに船と詳細を尋ねることもなく
小さなバッグを受け取って店から出た。

重いガラスの扉から左へ歩いた。すぐにまた左へ曲がった。

商店街の通りはアメ横のような感じで、歩行者天国になっていた。
人が多いが、あの店の閉鎖空間の蒸れた空気とは大違いで、ああ気持ちがいい。

人の流れの中を開放感を楽しみながらしばらく歩いて、そういえば、と、
私はなんとなくバッグを開き中をのぞいてみた。

まず目に入ったのは古い型の携帯電話。それと
名簿のように名前がびっしりと書かれて折り畳まれた数枚の紙。それから
透明なビニール袋にゴソゴソと入った何か薬の小分け包装のような包み。
あと内容が植物的なやはり透明で小さなパックもいくつが入っていた。

「・・・・・!?」

やられた。これは罠だ。迂闊だった。こんなもの確かめずに預かるなんて。

これで待ち構えた刑事に職質を受ければ即逮捕である。

刑事の成績は上がって、このエリアの取り締まりは当分緩くなるだろう。

バッグを渡した男がきっと嗤ってる。
バッグを待っている奴らも嗤ってる。
刑事が今、オレを目で追いながら嗤ってる。

夢の中とはいえなんという私のマヌケであろうか。

おそらく店を出てから監視されているはずだ。
どこかで必ず声をかけられるだろう。そうしたらもう逃げられない。
刑事も伊達にスニーカーを履いているわけではないのだ。

○○へはあの路地を入るのだが、囲まれるならきっと入ってすぐにだろう。

私は変に立ち止まらず、とにかく今出来る最善を考えた。とその時、

路地への入り口の右のスペースに駐まっていたひどくオンボロな
ピザ屋のデリバリーバイクの成れの果てのような三輪に
これもオンボロなオヤジが乗り、走り始めるのが見えた。

私は反射的にその後部荷台にしがみついた。三輪は人波を分けて走り出した。

オヤジは慣れているのかけっこうなスピードで商店街を抜けていく。

いいぞ。その調子だ。

私に後ろを見るほどの余裕はなかった。落とされないのに精一杯だ。

商店街を抜けると人がぐっと少なくなり、それから駅の反対側なのか埠頭に出た。

よしよしいいぞ。もう誰もいない。三輪は路肩に止まった。

私もほっとして降りた。

「おじさん、久しぶり。最近の様子はどう?」

「いやー、もううるさくってダメだよ。あそこは今日も刑事ばっかりでナ」

乗る前は知らなかったが、降りたらなんとなく知っているオヤジのような気がした。

これが夢のいい加減なところである。

どうやらこの60を越えた男はあの通りで何十年も細々と売を
独立系でやってきたらしかった。
とにかく古株で、商いも小さく、しかも憎めない人柄だからか、
周りからも潰されず、また役人からもなんとなく見逃されて、
気がついたらこの齢になっていたというような男であった。

なんでこんなチンピラな夢を見るのだろうか。
ひとつだけ原因を挙げるとすると、寝る前に
映画「パルプフィクション」をCSでたまたま観たからかもしれない。
あれはつくづくチンピラ映画だけど、やはり傑作だよな。

私はオヤジに別れを告げて、さらに人気のない埠頭の奥へと
コンクリート道をまた歩き始めた。

終わり。
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