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20230609 映画「サラの鍵」

2023-06-09 18:17:31 | 映画
20230609

数日前、
夜になって、なぜかふと重いテーマの映画が観たくなり、
あれこれ選んだ結果、
「サラの鍵」という作品を観た。

見始めてから気がついたが、
この映画は、以前にも選んだことがあり、しかし冒頭の時点ですでに期待を超える重い内容だったため、その日、鑑賞から早々の撤退を余儀なくされた作品だった。

主演が私の好きな女優クリスティン・スコット・トーマスだったから、その時は彼女を目当てに軽い気持ちで手を出したところ、灼けた鉛のようなテーマに火傷をし、手をひっこめた、という次第であった。

さて、あまり詳細を気にせず概略を書くと、



────ナチスドイツ占領下のフランス。
1942年7月16日朝。突然ユダヤ人地区にフランス警察が大挙し、ユダヤ人たちを家族ごと連行した。連行理由はユダヤ人だから。その数は2日間で約13000人。そのうち子供は4000人。(ここで連行の結末を先に書いておくと、この内、終戦まで生き残ったのは100人程度とのことである)

胸にユダヤ人の象徴であるダビデの星をつけた家族たちは、何の準備もできないまま、まずは市内の競輪場に押し込められた。

過密状態の競輪場で水や食料をほとんど与えられず、そしてトイレを使うことも許されずに5日間を彼らはそこで過ごしたが、不安と恐慌により、屋根から飛び降りる者も少なくなかった。映画では競輪場の観客席のそこら中が糞尿まみれ。子供の見ている前に人がドスンドスンと落ちてくるといった状況。(私はここで前回、観るのを断念した)

そんな過酷な状況の中に震えながら身を寄せて座る一つの家族がいた。父と母と娘の3人。娘の名はサラ。金髪。まだ7歳くらいである。

本来は4人家族。サラには弟がいる。

実はサラは連行された朝、母親が警察の応対をしている時に、とっさの機転を利かせ、幼い弟を納戸に隠してきたのだった。
その納戸の鍵を手にずっと握りしめている。

やがて家族は阿鼻叫喚の中で引き離され、大人、子供、男、女、それぞれの収容所に連行されるわけだが、サラは自分のことよりとにかく弟が心配。

すぐに家に戻れると思い、まだ寝間着の弟を納戸に隠し、鍵をかけてきてしまったが、すでに1週間ほどが経ち、どうなっているのか、弟以外のことは考えられないくらいにサラは焦っていた。

ついにサラは知り合った年長の少女と鉄条網をくぐり抜け、収容所から脱走をする。

親切なフランス人老夫婦に助けられ、事情を話し、少年に変装し、夫婦とともに弟の待つパリの自宅アパートへ向かう。

走れない老夫婦を置いてアパートの3階に駆け上がるサラ。
自宅だった部屋にはすでに知らない家族が入居していた。
知らない子供が中からドアを開けて顔を出した。
サラはその子を押しのけて部屋に飛び込む。
勝手知ったる我が家であるから、迷うことなく一目散に納戸へと向かう。
そして納戸の鍵を回す。扉を開ける……。



この映画は、
二つの時間軸の話を交互に見せるように出来ている。

一つは上に書いた1942年からのサラと家族の話。

もう一つは、2009年のパリに暮らす女性ジャーナリストの話。

────女性ジャーナリストのジュリア(クリスティンSトーマス)は45歳。
ニューヨーク育ちで、フランス人と結婚をし、17歳くらいの娘が一人。

雑誌社に務めているが、いろいろなタイミングが重なって今回、1942年にパリで起こったユダヤ人の悲劇を社で特集することになり、ジュリアはその担当になった。

同時に私生活では、フランス人の夫が親から受け継いだパリのアパートに家族3人での引っ越しを計画している最中だった。

1942年の忌まわしい事件を調べていくうちに、その引っ越し先のアパートが、実はかつてのユダヤ人地区にあることをジュリアは知ってしまう。

ユダヤ人迫害の記録を管理保存するユダヤ人機関がパリにあり、その機関の膨大なデータベースによってその地区のことをジュリアは初めて知ったが、さらに機関の担当者に、これから引っ越しをするアパートについても詳細を調べてもらうように願い出る。

住所がわかっているから記録はすぐに出てきた。
かつて住んでいた家族の名前がわかった。
そして写真がプリントアウトされた。
そこには幼い金髪の少女とその弟であろう子供の姿があった。
ジュリアは混乱した。

67年前、
ある日、突然の連行で着の身着のままアパートを追い出されたユダヤ人家族がいた。
その後すぐに入居してきたフランス人家族がいた。
どういった経緯でそこへ入居したのか。
当時、何の力が働いたのか。
それは今においても正当といえるのか。
不動産の今に至る権利は誰のものか。
夫側の家族たちは、それについて暗黙の了解済みなのか。

ジャーナリストとしての使命感が強いジュリアは
消えた少女サラの行方を追うとともに、
触れてはいけない家族の暗部に手探りで降りてゆくのだった……。



この事件の問題点は、

ユダヤ人迫害者としてナチス・ドイツだけが指摘されてきたが、実はフランス人もその時ナチス・ドイツによる占領下とはいえ、それを行ったという事実。

いざとなったら法律も人権も通用せず、人間が家畜以下の扱いを受けたこと。

政府の行いに対して、フランス国民からは意見が発せられず、戦後何十年も経って、ユダヤ人の訴えによってようやく事件が注目されたこと。

などだろうか。


以上、概略の説明をしたが、間違い箇所があれば失礼。
私の感想はまたそのうち追記などにて。

この作品は、サラとジュリアだけでなく、他の様々な人の心の機微が丁寧に描かれていて、重いテーマと衝撃のある映像ではあるが、鑑賞は無駄にならないだろう。


E V O L U C I O


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