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夢の羅列<座布団>

2016-01-05 22:36:51 | Dreams
夢の羅列<座布団>

つづき。

小さな老婆は何も言わなかった。
ただ私の顔を見ただけですべてを悟ったように
「上がれ」と手招きをした。

私は靴を脱ぎ、その靴を持って老婆の後についていった。

入り組んだ廊下を進んだ。
いったん外に出た。
スノコが2メートルほど続き、また建物の中に入った。

「別館というよりも建て増しか」
また薄暗い廊下を何度も曲がった。
すでに方向感覚は失われていた。

やっと老婆が止まり、引き戸を開けた。
2畳ほどの小さな部屋が開いた戸の中に見えた。
ここに入れと老婆は私を促した。

隠れていろ、という意味だろうか。
私は不安だったが、
ここ以外には外へ出るしかなく、他に選択肢はなかった。

戸が閉まった。
足音もなく老婆は去った。

狭いうえに天井も低い部屋だった。
私は立ったままだったが、
頭が天井につきそうで、首を屈めていた。

畳敷きで文机があった。
その前に座布団があった。
ぺしゃんこで色の冴えない円い座布団はひどく年代を感じさせた。
その平に潰れた具合が
まるでついさっきまで誰かが座っていたかのようだった。

きっとそうに違いない。
部屋も変に生暖かい。
私と入れ違いに誰かがここを出て行ったのではないか。

私は少し目眩がするようだった。
あの座布団に座ってしまったらきっとこれから何年も
ここから出られないような気がして、
私は部屋でいつまでも立ち尽くしていた。

おわり。

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