三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

カトリック由比ガ浜教会

2012年01月13日 | 神奈川のカトリック教会
カトリック由比ガ浜教会(教会堂名:被昇天の聖母)
創立:1913年 ◇ 住所:神奈川県鎌倉市由比ガ浜1-10-35

江ノ島電鉄の和田塚駅で降りる。駅名の和田塚とは、北条氏に滅ぼされた和田一族の墓と伝えられる塚に由来する。これは鎌倉唯一の平地古墳で、和田合戦よりも古い埴輪や土器が出土したという。この和田塚近くの西洋洗濯店に下宿していたのが、教師として糊口を凌いでいた芥川龍之介である。その頃、龍之介は横須賀の海軍機関学校に勤め、軍人の生徒たちに英語を教えていた。 この下宿につき、龍之介の自筆による案内図が残されている。

由比ガ浜教会に到着。1913年、パリ外国宣教会によって設立された「鎌倉最初のカトリック教会」である。戦前は「天主公教会大町教会」と称していた頃、詩人・中原中也がここを訪ねている。主任司祭のジョリー神父から公教要理を学び、ミサにも与っていた。その頃、中也は愛児を亡くしたショックが癒えないなか、鎌倉に転居したのであった。悲しみを抱えた中也が教会へ通い始めたのは、幼児期におけるカトリック信徒の祖父母の影響も少なくないだろう。

中也の鎌倉時代の日記には、しばしば由比ガ浜教会が登場する。「教会へ行く」「公教要理を教はる」「神父と二時間ばかり雑談」。だが、その数ヶ月後、中也は30歳の若さで帰らぬ人となった。教会も建て替えられたが、中也の足跡はどこかに残されているはずだ。「カトリックと中原中也」については、後に稿を改めたいと思う。さて、私は再び和田塚駅へ戻り、江ノ電に乗った。一日乗車券の「のりおりくん」とともに、次は潮の香りが漂う片瀬浜教会を訪ねよう。


現聖堂献堂:1954年


カトリック由比ガ浜教会の聖母像

◆主な参考文献など:
・「新編 中原中也全集 第五巻 日記・書簡」 大岡昇平ほか編(角川書店・2003年)
・「図録 中原中也 詩に生きて」 鎌倉文学館編(鎌倉文学館・2007年)
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