平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

プリマダム 最終回

2006年06月22日 | ホームドラマ
 昨日最終回を迎えた「プリマダム」。
 テーマは次のふたつ。

1.『何かを始めれば何かが生まれる』

 子供の頃、家の事情でバレエを挫折した万田佳奈(黒木瞳)。
 その過去への清算のために再開したバレエ。
 しかし、それは様々なものを生んだ。
 家族の理解・協力と強くなった結びつき。
 土井バレエ教室の仲間たちとの友情。
 倉橋嵐子(中森明菜)との友情の復活。
 佳奈のバレエは過去の清算ではなく、新しい未来を生み出した。
 佳奈はラストで高太郎(古田新太)に言う。
「これがゴールじゃないの。また明日新しい自分に出会う。そんな気がするのよ」
 バレエを始めて佳奈が得たことは、新しい自分の発見だった。
 日常に埋もれていく佳奈。
 そんな彼女がバレエを始めることで、新たな自分を見出した。
 友だちのために一生懸命になる自分。
 深く家族と関わるようになった自分。
 様々な人が笑顔を向けてくれる自分。

2.『与えれば得られる』

 家族や友だちに与えてばかりだった佳奈。
 やりたいこともやれずに家族のために家事をこなして、時々不満に思う。
 嵐子やわがままなバレエ仲間のためにやらなくてもいい奔走。
 そんな佳奈に様々なものが返ってきた。
 家族の協力。
 今回は佳奈のためにバレエ仲間たちが返してくれた。
「佳奈さんが来るまで踊らない」
 仲間たちが佳奈に与えてくれた。
 それはすなわち佳奈が仲間たちに与え続けていたから。

 何と美しいドラマ!
 でも、現実はなかなかこううまく行かないだろう。
 家族の理解は得られないかもしれないし、舞台に立てなければ代役を立てるのが現実だ。
 だから、この物語にリアリティを感じない人は引いて見ることになる。 
「こんな都合のいい話があるか?!」
 現に僕も高太郎が協力的なり、嵐子が(どうせ助かるであろう)病気になった時点で見るモチベーションが下がっていった。
 だが、ドラマは美しい理想を描かなくてはならない。
 現実をそのまま描いたらつまらない。
 テレビドラマなら尚更。
 問題はその描き方である。
 『与えれば得られる』というテーマは「ギャルサー」でも描かれていたが、描き方としては「ギャルサー」の方が上だと思う。
 「プリマダム」はストレート過ぎる。
 主婦がバレエをするというモチーフは今のものかもしれないが、物語手法は昔のものだ。
 要は嘘の世界に視聴者をいかに引っ張り込むか?
 ドラマ作りの手法が問われる作品だった。

★研究ポイント
 テーマ:何かを始めれば何かが生まれる。与えれば得られる。

★名セリフ
 「山本? 山本潔って誰ですか?」
※ひと言で夏芽が店長のことに興味を持っていないことを表すせりふ。
 気になっていたら、何て名前なんだろうって知りたくなりますよね。
 1話ぐらい、夏芽・店長話があってもよかった。(寺に入る話がそれか?)
 1回ふられて、最終回でOKが出るような流れで。

★ちょっとひと言
 嵐子の手術が、佳奈が発表会に行けないカセ。
 容態急変→結局大丈夫になって。ご都合。
 今の視聴者は目が肥えているから、こういう安易なカセでは……。

 「ナースあおい」では、花屋の市場の声が患者を甦らせた。
 このくらいの仕掛けがないと。

コメント (2)
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アテンションプリーズ 「翔べ!恋の翼に乗って」

2006年06月21日 | 職業ドラマ
  1
 飛行機はみんなで飛ばすもの。
 チームワークを描くと、ドラマはどんどん面白くなる。

 美咲洋子(上戸彩)はチームワークで飛ばすものであることを理解していなかった。
 イヤリングを落としたお客様優先。
 だが、飛行機は着陸態勢。洋子も席に戻ってシートベルトを閉めなければならない。
 洋子が席に戻っていないため、飛行機は洋子待ちの状況に。コクピットに負担をかけた。
 このことを桜田キャプテン(小日向文世)は怒る。
「空を甘く見ないでください。あなた方が客室をコントロールしてくれなければ僕たちは安心してコックピットに座れない。飛行機はみんなで飛ばしてるんです」

 そして次の事件。
 飛行機離陸前のドアロックの不具合。
 離陸が遅れて乗客が騒ぎ出す。イライラしている。
 洋子、関山有紀(大塚ちひろ)、麻生カオル(笛木優子)らCAは応対に追われる。
 堤(小泉孝太郎)は試験中だったこともありパニック状態。
 不具合の調整をするために整備の中原翔太(錦戸亮)登場。
 初めて一人で任された仕事。緊張している。
 なかなか飛ばない飛行機。客のイライラは頂点に。
 赤ん坊のさやかちゃんが泣き出す。「赤ん坊を飛行機に乗せるなよ」と怒る若者。
 洋子はさやかをなだめるために「ハッピーバースデー」を歌う。
 さやかは今日1歳の誕生日だったのだ。
 これで乗客の気持ちが和んだ。
 洋子は桜田の言う「客室のコントロール」に貢献したのだ。
 おかげで翔太は調整に専心できる。桜田も正確な判断が下せる。

 チームワークものはいい。
 それぞれが与えられたフィールドを守って、仕事を成し遂げていく。
 こういう物語をもっと見たい。

  2
 恋愛話。
 まずはたわいない話。
 洋子はフライトで宝石王にナンパされる。ホテルでは食事代を払ってもらって。
 帰りの飛行機ではIT社長(会社名はITT)に名刺を渡される。
 洋子は「自分が気がつかないうちにイイ女になった」と有頂天。
 弘田沙織(上原美佐)は「何で美咲さんが」と信じられない様子。
 洋子は雑誌の占い・恋愛運も絶好調のようだ。

 一方、若村弥生(相武紗季)。
 翔太に自分の気持ちをなかなか言い出せない。
 頼りになるのは雑誌の占い。今週告白すればいいことが起こる。
 満を持して告白しようとするが、翔太はドアの不具合の調整に。
 でも、その夜、ついに告白。

 3番目の恋愛話は桜田キャプテンと三神教官(真矢みき)。 
 最終フライトを終えた桜田。花束をもらって「CAの情報網を甘く見ないでくださいよ」と三神に言われる。
 そしてボーリング。
「賭けをしませんか?次もストライクが取れるかどうか」
「もしストライク取れたら?」
「僕と結婚してしまうとか」
 冗談だと言ってごまかす桜田。しかし三神は「いいですよ」。
 桜田はボールを投げるが、惜しくも1本残って。

 話は戻って洋子。告白する弥生を目撃。
 そのままふたりを残しておき、帰り道でつぶやく。
「やっと言ったか。弥生の奴遅いんだよな」
 そして
「好きなんです……。翔太の事が……」
 折に触れて自分を励ましてくれた翔太。
 今日は翔太のかっこいい仕事ぶりを見て……。
 更衣室の鏡を見たりして、無意識に翔太を意識している。
 そして弥生の告白を聞いて、自分の気持ちに気づく。

 ドラマで描かれる恋愛は様々。
 洋子と翔太は信頼できる友だち→恋愛。
 三神と桜田は尊敬できる先輩 →恋愛。
 弥生と翔太は憧れ→恋愛。

 ちなみに
 「クロサギ」の氷柱と黒崎は心配→恋愛。
 「医龍」の香と荒瀬は心配・母性→恋愛。

 恋のきっかけは様々。
 これからも様々な形の恋が描かれていくだろう。

★研究ポイント
 物語のモチーフ:チームワーク・恋愛。

★キャラクター研究:堤修介(小泉孝太郎)
 ある意味、他のキャラクターを引き立たせるためのキャラ。
 仕事の取り組み方の違いから翔太を引き立たせ、トラブルに対するリアクションの違いから桜田を引き立たせた。
 いわゆるダメキャラなのだが、あまり共感できる所がない。
 今回やっと前日に試験勉強することで共感要素を見せたが、結局は翔太の友情に持って行かれた。

★その他
  1
 関山ちゃんは見事なバイプレイヤー。
 トラブルの中、ダイエットして苦しんでいる乗客に自分の体験談を聞かせた。
 彼女は彼女で自分にしか出来ない接客をしている。
 自分に与えられたフィールドをしっかり守っている彼女。
 今回のモチーフである「チームワーク」をわずかなシーンで表現した。
  2
 キャラクターの違った面を見せるのもキャラクターの立て方。
 沙織は洋子と枕投げをした。
 先輩・麻生は木村カエラに色紙をもらって、素の自分に戻った。  
 CAから素の自分に戻る時、彼女たちは魅力的になった。
 視聴者も素のキャラクターたちを見たいのだ。
  3
 前回の「答えは目の前にある」を実践した洋子。
 さやかちゃんの前掛けを見ていたことから、ハッピーバースデーを歌うことが出来た。
 関山ちゃんも乗客を見て、ダイエットで苦しんでいるのではないかと見てとった。
 彼女たちはCAとして、少しずつ前進している。
コメント (2)
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あいのり 6/19

2006年06月20日 | バラエティ・報道
 和泉の告白。
 久本雅美さんらのコメントが興味深かった。

 まずは女心。
 5歳年上。最初はお姉さんのような存在。
 でも恋をすると自分が下になってしまう。
 和泉の告白「田上君のそばにいさせて下さい」
 田上君「最初は強そうで相手にしてくれるのかと思った。でも実際はそんなこと全然なくて、すごく優しい人だと思った」
 なるほど、恋をすると女性はこう変わるのか。
 ひとつ勉強。
 帰りの車の中での和泉の手のひらを返したようなコメント「あいつ、思わせぶりな態度とりやがって、あのクソガキ!」は怖いが。
 それにひさよんも。
「今思うと和泉と私は田上くんにまんまと乗せられて。3カ国を無駄にしたのかもしれない。足して50歳をなめるなよ!」

 次に男心。
 誰にでもいい顔をする田上君。
 いい顔をして可能性がありそうな雰囲気があると、そちらにテンションを上げていく。
 なるほどわかる。
 若かったり、自分に自信のない男は特にそうだろう。
 女性の間をウロウロしてともかく好かれたい。
 でも、番組でも「クソガキ!」と指摘されていたけど、傍目にはあまり格好良くない。

 そしてスーザンの想い。
 今回はひさよんの「気持ち7と気持ち3の人がいる」という発言がキイワードとなった。
 MIEに告白された時のスーザンは気持ち7ぐらい。
 でも、気持ちが日に日に高まっていって「フタいっぱい」「MIE以外考えられない」「MIEが忘れられない」気持ち10の状態に。
 無器用なスーザンらしい恋。
 スーザン登場からの回想シーンがよかった。
 さて、次回はどんなドラマが生まれるか?

 それにしてもラブワゴン3人になってしまったんですね。
 「総理」は影薄いぞ。 
コメント
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トップキャスター 第10話

2006年06月20日 | 職業ドラマ
 ひさしぶりに見たトップキャスター。
  1
 一番成長していたのは、飛鳥望美(矢田亜希子)。
 以前は仕事に何のモチーベションもなかったチャランポランだったのが、しっかりと自覚を持ったキャスターに。
「私はここで生きていくんです。ニュースが私の居場所だと決めたんです。だから、自分の力で守りたいんです。よろしくお願いします」
 自分が自分である場所を見出した。
 自分の場所が何を守らなければならない場所なのかを理解して。
 キャスターが守らなければならないのは、「真実の報道」。
 あるいは望美はこんな意見も。
「逃げろって言うんですか?今逃げたらキャスターになんかなれるわけないじゃないですか。一番大事なのは、キャスターのイスじゃなくて心です」
 イス(地位・ポスト)でなく、心で仕事をする。
 いい言葉だ。

 最近のドラマでは、自分探しをする人物が多く登場する。
「アテンションプリーズ」の美咲洋子もそう。
 彼女はCAという場所を見出して、心を三神教官から植えつけられた。

  2
 そして、今回は「ちゃっかりねずみ」と「お人よしキツネ」に象徴される話。
 自局のスキャンダル告発。
 まずは「お人よしキツネ」椿木春香(天海祐希)。
「身内のスキャンダルだからこそ、報道しなきゃいけない」
「真実に例外はない!今ここで見て見ぬふりをしたら、私たちの仕事は、ただ人を貶めるだけの仕事になってしまう。何が嘘で、何が真実なのかわからなくなってしまうのよ」
 一方、「ちゃっかりねずみ」石場小吉(生瀬勝久)。
「正義感に給料払ってくれる会社なんてないんですよ!正義感じゃ、飯は食えないんですよ!」
 会社員としては正論。
 スキャンダルの大元である会長(伊武雅刀)は切り崩しにかかる。皮肉つきで。
「石場君!次の局長には君を推薦しておこう」
「頑張らさせていただきます!」
「頑張らなくてもいいんだよ。今までどおりに何もしなくていい。君のような男がテレビには一番向いているんだ」
 「ちゃっかりねずみ」は「わがままな王様をあの手この手で騙して出世していく」。身上は「まっすぐ歩いているだけじゃ、壁にぶつかる。汚れるのを恐れていては、外にも出られなくなる。曲がったり汚れたりすることも、生きていくうえで、必要なんじゃないんですか?」。
 これは組織人としては正論と言えるかもしれない。

 しかし、組織人である前に、心を持った人間であれと作品は伝える。
 組織人である前に、「報道マン」「キャスター」であれと作品は伝える。
 柴田局長(児玉清)は局長の座を捨てて、「人間」として会長に進言し飛ばされた。
 石場を始め春香の仲間たちも、「報道マン」「キャスター」を選んだ。
 結城雅人(谷原章介)も社長の座を捨て、「人間」そして「春香の恋人」として報道を許可し、汚職の証拠を春香に渡した。
 結城は言う。
「春香、君の好きに生きろ。君らしく生きろ。そんな君を好きになったんだから」
 何だかんだで、みんなが「お人よしキツネ」になってしまった。
 ちなみに「お人よしキツネ」とは、「わがままな王様の命令を聞かず、本当のことを正直に話したばっかりに、村を追い出されて一人ぼっちになってしまった」キツネ。
 身上は「正直に生きることが大事。たとえ、苦しかろうとも笑われようとも、貧しくなろうとも、何よりも大事なのは、正直に生きること」

 最近のドラマでは、組織と個人の問題も扱われることが多い。
 「医龍」がそう。
 行われるべき正義が行われていないということも多く描かれる。
 報道される数々の事件が示すとおり、現在の日本の「組織」はかなり疲弊しているのかもしれない。

★研究ポイント
 テーマ:ドラマが描く現在の社会状況・社会問題。
  ・自分探し
  ・組織と個人

★名セリフ
 春香と結城の会話。
結城「また俺との結婚よりも、ニュースを取るのか?」
春香「嘘をついたら、あなたのことを嫌いになるから。それ以上に自分のことを嫌いになるから」
結城「椿木さんがお帰りだ!君がキャスターじゃなければ良かったのな」
春香「そうね。でも私、キャスターなの」
 ※春香は結城の恋人よりもキャスターを選んだ。結城は春香の恋人よりも会社を選んだ。

 同じく春香と結城の会話。
結城「君は正直者は馬鹿をみるという言葉を知っているか?」
春香「知ってるわ。一番嫌いな言葉よ」
 ※春香は「お人好しキツネ」だ。

 柴田局長が春香に。
「椿木さん。諦めてください。これは、会社の方針です。あなたも従ってください」
 ※いつもと違うリアクションの局長。しかし、柴田はこの後、会長への直談判という方法で自分の落とし所を見つけた。

★その他
 最低の男とは「自分だけ安全な場所にいて逃げ回る男」
コメント
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功名が辻 蝶の夢

2006年06月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 第24回「蝶の夢」
 山崎の合戦よりは清洲会議が描かれた。
 そこで繰り広げられたのは、信長の三男・信孝を推す柴田勝家(勝野洋)と信長の嫡孫・三歳の三法師を推す秀吉(柄本明)の駆け引き。
 筆頭家老である勝家に秀吉は面と向かって異を唱えられない。
 腹痛と偽って席を外し、根回しした丹羽長秀(名高達郎)に対応させた。
 これで会議は三法師が織田家の跡取りに決する。
 そして、その間、秀吉は何をしていたか?
 三法師の心を掴もうと躍起になっていた。
 千代(仲間由紀恵)が呼ばれ三法師の心を開かせ、三法師と秀吉を結びつけた。
 その後、評定に戻ってきた秀吉。
 三法師が跡取りにあることが告げられ、やって来た三法師が「筑前!」と言って
秀吉の懐に飛び込む。
 秀吉は三法師を抱き上げ「織田家の跡取り三法師君であらせらるるぞ」と叫び、居並ぶ重臣たちに頭を下げさせる。
 歴史上有名な秀吉の名シーンがかくして相成った。

 この清洲会議での「功名が辻」オリジナルは、千代が三法師の心を開かせたというエピソード。
 三歳とはいえ、さすが信長の孫、気難しそう。
 そんな三法師を信頼させたのは、子供の心を持つ千代であった。
 秀吉のような邪心にはなかなか心を開かない。
 史実の正誤はともかくとして、そういう形で主人公・千代を歴史に関わらせた。

 考えてみると、一豊夫婦は共に心がきれいである。
 一豊(上川隆也)は光秀(坂東三津五郎)への想いから、手柄になるのに光秀の首を取らなかった正直者・律儀者。
 千代もご存じのとおり。三法師のような子供も信頼を寄せる。
 この夫婦には心の曇りがない。

 さて、この心がきれいな夫婦が乱世で生き延びて出世できるのかが、この作品のメインモチーフになる。
 出世とはそれこそ今回秀吉が演じたような、駆け引き・追い落としの世界。
 汚いこと、自分の心に反することに手を染めなければならない。
 例えば、光秀の首を取って手柄とするような。
 それができない一豊が果たして出世できるのか?
 あるいは出世のために今後一豊は汚いことに手を染めるのか?
 ここがこの作者が問いかけていることであるように思える。

 そして、その点では光秀の一豊に語った言葉が重要である。
「生きて乱世の末を見届けられよ」
「どんなことをしても」という言葉もつけ加えられていたように思うが、この言葉は一豊夫婦の心にしっかりと刻みつけられた。
 生き抜くということは、時には自分の意に反して生きなければいけないということ。
 例えば、生き抜くためには黒田官兵衛の息子・松寿丸を斬らなければならなかった。それをしなかった一豊は信長に斬られたり、切腹をすることになっても仕方がなかった。
 あるいは、生き抜くために刀を持って向かってくる子供を斬らねばならない時もあるかもしれない。
 この辺の矛盾を一豊はどう折り合いをつけていくか?
 「功名が辻」の見るべきポイントして留意しておきたい。

★研究ポイント
 テーマ:心に曇りのない夫婦は乱世を生きていけるか?

★追記
  1
 山崎の合戦・清洲会議の他に今回は細川家に嫁いだ光秀の娘・玉(長谷川京子)と織田家をサルの好きにさせてはならぬと言って勝家と再婚した市(大地真央)のエピソードが描かれた。
 いずれも権力闘争の中に巻き込まれた女性の悲劇を描写している。
  2
 光秀が死ぬ時は、濃(和久井映見)が蝶になって光秀の前に現れた。
 ベタな描写だが、悲劇のふたりにこれくらいの救いはほしい。
  3
 ラスト。
 取ってつけたように描かれる一豊の長浜城赴任がなくなったというエピソード。
 これは正直者は権力者に翻弄されるという暗喩であろうか?
 それとも単なるギャグ落ち?
コメント (9)
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ギャルサー 第10話

2006年06月18日 | その他ドラマ
 ギャルたちの居場所だった集会所。
 その最後の居場所を奪おうとするオトナたち。
 シンノスケ(藤木直人)はそんなオトナたちと闘うと思いきや……。
 逆にオトナたちに加担。
 こちらの予想を見事に裏切ってくれた見事な展開だった。
 今までのドラマ展開だったら、どこにも居場所のないギャルたちの気持ちを描くのが普通。
 それを見事に裏切ってくれた。
 オトナたちに加担したシンノスケのメッセージはこう。
「本当にお前達には、ここしかないのか。お前達は『話が通じない。どうせ分かってもらえない。』と、すぐにここに逃げ込む。自分の気持ちを伝える。相手の気持ちを知る。どっちもしない、だるいからしない」
「簡単に分かり合える仲間としか一緒にいない。『ここにいるときだけ自由だ』とお前たちは言った。しかし、ここにしがみついている限り、お前たちは不自由だ」
「ドアを開けろ」

 これだけだと挑発だが、シンノスケはさらに続ける。
「お前はここを出たら役に立たないと言ったが、お前のおかげでジェロニモは絶望から救われた。モモの命、救われた」
 サキ(戸田恵梨香)が瓶に入れたメッセージと種が人を救ったのだ。(実際は違っていたようだけど)
 自分も人の役に立っていた。
 自分を求めて捜してくれる人がいた。
 それはここ以外にも居場所があったということだ。
 それはサキにとって嬉しいこと。
 心のドアを閉ざした人間に「努力をして外に出ろ」ということは簡単だ。
 だが、それだけでは説得にならない。
 「ギャルサー」の作家はさらに一歩進めて、サキが人に役立っていたこと、存在意義があったことを描いた。
 メッセージをさらに深化させたところが見事。

 そして、この作品の作家はさらに次のような問いも投げかける。
「恩人に恩返しをしたい。お前の望みは何だ?夢は何だ?」と問うジェロ~ニモ~(古田新太)。
 それにサキは答えることができない。
 そんなこと考えたことがないと言う。
 居場所がないと感じているサキたちギャルは、自分や世の中に絶望している。
 自分や世の中を信じられずにいる。
 信じようとしたが、世の中は自分たちを裏切ってきたし、傷つけてきた。
 信じようとしたが、ハンパな自分は何をやってもダメだった。
 その結果、サキたちは自分の居心地のいい場所に留まり、ドアを閉ざした。
 夢を持つことを諦めた。

 居場所がないギャルたち。
 この作品はそんなギャルたちの悩みや苦しみを共感をもって描くのかと思っていた。
 ギャルたちの若さ・未熟なところ。
 それをシンノスケが糺す物語だと思っていた。
 居場所のないギャルたちの部分は否定せずに。
 ところが今回は突き放した。
 居場所がないなどと甘えるな!と。

 比較して思い出されるのが、金八先生・シーズン2だ。
 腐ったみかん。
 同じく居場所がない生徒たち。
 そう言えば、彼らにもたまり場の喫茶店があった。
 そんな生徒たちを作家は共感をもって描いていた。
 放送室に立てこもった生徒たちを警官隊が捕まえた時は彼らを悲劇のヒーローとして描いた。
 だが、この作品は今回腐ったみかんたちを挑発し突き放した。
 踏み込まれて商店街の店主たちにギャルたちが捕まえられるシーンもあっさりしていたし。 

 この作品、おバカなようでいてなかなか奥が深い。

★研究ポイント
 ドラマの作り方
 1.既存のドラマのアレンジ。「金八2を今やったらどうなるか?」
 2.テーマをあらゆる角度から見て、描いてみる。
  例えばギャルというテーマ
   居場所がない。
   世の中が悪い。
   でも彼女たちも未熟で中途半端。
   自分で勝手に扉を閉ざしている。
   夢を持たずに刹那的に生きている。

★面白ポイント
 芋子~サ・キ・子。 
  ※それにしてもサキの字は下手だ。
 サキは匂いだけで「中落ちカルビ焼いてる」とわかる。
  ※サキ、食べ物には異常な執着。
 サキの作ったバリケード。だが、簡単にシンノスケに突破される。
  ※サキはアバウト。
 ジェロ~ニモ~の病気は花粉症だった。
  ※あんなにヨモギをバサバサさせてたらねぇ。
 家賃収入からジェロ~ニモ~が連想したのは、中国系ヤクザのヤー・チン、スー・ヌー。ジェロ~ニモ~いわく。
「ごめん、なんかイメージだけでやみくもに喋っちゃった」
  ※言葉遊び。妄想遊び。
 レミ(鈴木えみ)いわく。
「いつまでもここにしがみついてたら、あ~、やっぱりギャルは人と向き合わないで、都合が悪くなると自分たちの場所に逃げ込んでるひきこもりなんだなって思われちゃうじゃん?」

★追記
 文房具屋の土屋(高田純次)は学生運動をやっていた。
 その頃は「オトナなんて大嫌い」だったらしい。
 今回の行動もそれが懐かしくてやったとか。
 オトナたちがギャルを理解した瞬間。
 
コメント (4)
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クロサギ 第10話

2006年06月17日 | 職業ドラマ
  1
 黒崎(山下智久)は今の時代の主人公だ。
 詐欺師であることに迷っている。(黒崎本人は否定をしているが)
 たとえば、刑事ドラマの刑事は自分が刑事であることに迷わない。
 1時間、犯人を追うことに没頭する。
 だが、黒崎は氷柱(堀北真希)に別の生き方があることを指摘されて迷っている。
 アイデンティティの問題。
 だから視聴者は思い入れが出来る。

 ドラマにはふたつの方向があると思う。
 ひとつは視聴者が主人公なりに思い入れをして、いっしょに悩み、問題や事件を解決していく方法。
 「クロサギ」がそうだ。
 ふたつめは「医龍」のようなスーパーヒーロー。
 視聴者は自分たちが出来ないことを主人公がやってくれて、理想や夢を実現するのを見る。

 また、黒崎が今の時代の主人公であるのは、既存の価値への不信。
 抜け道がいっぱいの法律も、官僚化した警察も今を生きる人間はそれほど信じていない。
 ライブドア事件や村上ファンドの事件は法律の威信をかろうじて示したが、それ以前は法律の抜け道を使ってビジネスをしていた。
 そんな状況下で対抗できる手段は、反法律・反警察で対抗すること。
 敢えて言えば目には目を。
 黒崎はそんな状況が生み出した主人公だと言える。

 さて来週は最終回。
 復讐に生きることは心が安まることのない孤独な生き方。
 一方、氷柱の言う幸せを求める生き方。
 御木本篤(岸部シロー)と春日公義(萩原聖人)、そして桂木(山崎努)との事件の果てに黒崎はどちらを選ぶのか?
 個人的な意見としては、詐欺師であることが黒崎が自分自身である根拠。
 本人もけじめは自分がつけるものと言っているからやめることは出来ないだろう。

  2
 今回の名シーンは花火のシーン。
 黒崎が笑ったのも印象的だったが、ひとり花火の氷柱もすごい。
 子供の頃からひとり遊びが好きな子だったんでしょうね。
 これを演じた堀北真希もすごい。
 普通の女優さんがこのシーンをやっていたら、無邪気さは出せるかもしれないが、「痛さ」は出せない。
 まさに堀北ワールド。
 堀北真希は演じるとキャラクターに独特の雰囲気をつけ加える。
 今後、どんな役を演じるか?
 将来が楽しみな女優さんだ。

  3
 今回は通信販売詐欺。
 江守公子(いしだあゆみ)は宛名書きのツールを20万円で売りつける。
 顧客名簿を20万円で売りつける。
 その回収方法はマージンだ。
 自分が送ったDMで客が商品を買ってくれれば、その分のマージンを払う。
 しかし、実際は売り上げはなかったことにしてマージンは支払われない。

 黒崎は偽の注文をして商品を手に入れバッタ屋に売る。
 マージンが正当に支払われていないことを指摘(というより恐喝)して、2000万を奪い取る。
コメント (5)
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医龍 カルテ10

2006年06月16日 | 職業ドラマ
 今回のドラマの構造はB→A→B。
 Bはマイナス。Aはプラス。

 ドラマはいきなりマイナスから入る。
 3人目のバチスタ患者・隆くんの手術断念。
 伊集院(小池徹平)の寝返り。
 隆くんの転院が決まり、朝田龍太郎(坂口憲二)と加藤晶(稲森いずみ)は両親に謝る。
 「本物の医者を信じてください」と言った朝田に隆の母は飲み物をかける。
 下手な希望を持たされた分、なお腹が立つ。
 まして隆の両親は毎日見舞いに来る強い肉親。
 厳しい現実を見るのが嫌で見舞いに行くのを避けるのが通常。
 野口教授(岸部一徳)と霧島軍司(北村一輝)は教授会に向けて何か秘策がある様子。 
 視聴者はこの状況にモヤモヤしている。

 しかし、次の瞬間スッキリに変わる。(土曜7時のクイズ番組の表現を流用)
 11時の教授会。
 朝田たちはこのタイミングを狙っていた。(映像ではやたらに時計を挿入)
 教授不在の容態急変。
 隆は急変したわけではないのだが、朝田たちは急変したとして独断で手術を行うのだ。
 朝田と藤吉圭介(佐々木蔵之介)は隆くんの両親に言う。
藤吉「容態が急変しました。容態は安定してますが、急変したんです!医局内のオペには教授の許可が絶対に必要。しかし今は教授会の真っ最中やむを得ない」
龍太郎「これより緊急オペを執り行います。我々はこの日の為に準備をしてきました。この子の命は俺達が守ります」
 荒瀬門次(阿部サダヲ)は臨床工学士の山田の肩を叩いて手術室へ。
 晶は緊急手術の内線電話を受け取る。
 看護師長も手術に異論をはさまない。里原ミキ(水川あさみ)に黙ってうなずく。
 そして伊集院。
「そろそろコンタクトつけなきゃ。サージカルルーペ付けなきゃいけないので」
 霧島に教授会の行われる11時を待っていたことを告げ、そのための手術の練習をしていたことを告げる。
 そして霧島が一番言われたくないことを言う。
「僕なんか先生の足もとにも及ばない。これから先も。だけど一つだけ先生に負けない物がある。僕には仲間がいる。僕には心から頼れる仲間がいる。それだけは先生より優れてる。それだけは胸を張って言えます」
 緊急オペのことが教授会の野口の所へ告げられる。
 鬼頭笙子(夏木マリ)は「やるじゃない」とニヤリ。
 そして左右逆の手術への対応=利き腕でない左手での執刀。
 マイナスからプラスへ。ここで視聴者はスッキリする。

 しかし、ここで再びマイナスへ。 
 隆君の抱えている問題は他にもあった。
 動脈瘤。
 霧島はこのことを知っていたようだ。
 本当に患者のことなどは考えていない医者だ。
 朝田は動脈瘤を発見して、手術を進めることができない。
 晶は言う。
「勝ち目のない手術はできません」

 ドラマの構造……B→A→Bを使った見事なドラマ作りだ。
 おまけに今回は視聴者も騙している。

★研究ポイント
 ドラマの構造……B→A→B。

★キャラクター研究:鬼頭笙子
 本音と建て前を使い分ける大人。
 隆のバチスタ手術断念について適切な判断とコメントする鬼頭。
 これは大学病院の教授としての建前コメント。
 しかし、個人的には朝田が手術をすることを望んでいる。
 それが「やるじゃない」というコメントに。
 黒と白がはっきりしている中での灰色のキャラ。
 実に魅力的だ。

★名セリフ
 藤吉が朝田に
「この子も半年ぐらいしたら喋り出すんだろうな。パパ~とか。ご両親にも聞かせてやりたいな」
※手術を断念した悔しさを表現したせりふだが、後に藤吉たちが取った行動を考えると別の意味合いも。

★追記
 この作品の映像表現は凝っている。

 まず場所をうまく使っている。
・エレベーター
 野口・霧島の乗るエレベーターに乗る伊集院と乗らない晶。
 閉まるドア越しに見える表情。
・屋上
 密会の場所。鬼頭も時々来る。
・ドア
 霧島の部屋に入る伊集院。閉まるドア。
 その前を朝田たちが通り過ぎる。ニアミス。
 数秒遅かったら、伊集院が部屋に入ったことがバレていた。

 またテロップの使い方も効果的だ。
 手術の準備シーンで各担当にテロップが表示。
 「第2助手 伊集院登」「第1助手 加藤晶」「執刀医 朝田龍太郎」
 
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ハリー・ポッター

2006年06月15日 | 小説
 世界一有名な魔法使い。それがハリー・ポッターだ。
 毎年1回、新刊の発行日には世界中の本屋に行列が出来る。
 映画「ハリー・ポッター」のダンブルドア校長役のイギリスの名優R・ハリスは、孫に「校長先生の役を引き受けてくれなかったら、おじいちゃんのことが嫌いになる」と言われて引き受けた。

 「ハリー・ポッター」は自分探しの物語だ。
 両親を亡くして叔父の家で育てられたハリーはただの厄介者の少年だった。
 ところが11歳の誕生日の日に大魔王ヴォルデモートも恐れる魔力を持った魔法使いであることが知らされる。
 その力はまだ現れていないが、魔法界はハリーの成長を怖れとともに見守っていた。
 魔法界では誰もが知っている有名人だったのだ。
 ハリーの自分探しはそれだけに留まらない。
 第2作の「秘密の部屋」では、自分の中に悪の要素(権力欲とか差別意識)があるのではないかと悩んだりする。
 そんなハリーを助け、くじけそうになる気持ちを支えるのが、ドジで臆病なロンやおしゃまで優等生のハーマイオニーだ。
 1作ごとに自分とは何かを知っていくハリー。
 ハリーのいるホグワース魔法学院は7年生の学校だから、7年後に卒業する時、ハリーがどんな青年になっているか楽しみだ。

 「ハリー」の楽しさはそれだけではない。こんなクイズをしてみよう。

Q1:魔法の杖を買うにはどこに行けばいい?
Q2:学院の近くにある禁じられた森には何がいる?
Q3:ホグワース魔法学院にある4つの寮の名前は?
   グリフィンドール、スリザリン、レイブンクローと(     )。
Q4:ホグワース魔法学院の人気スポーツ・クイデッチ。ハリーのポジションは?

 ANSWER
Q1:ダイアゴン横町のオリバンダーの店(創業382年)に行く。
   ちなみにふくろうを買うならイーロップのふくろう百貨店。
   魔法使いの洋服を買うならマダム・マルキンの洋装店。
   いずれもダイアゴン横町にある。
Q2:狼男、巨大蜘蛛、ユニコーンにケンタウルスほか
Q3:ハッフルパフ。寮に入る時、生徒たちはその性格で組分けされる。
   勇気ある者はグリフィンドール。
   機知と知恵を持つ者はレイブンクロー。
   忍耐と努力を厭わない者はハッフルパフ。
   手段を選ばない狡猾さを持つ者が集う寮スリザリン。
 ※グリフィンドール、何という音の響き!言葉の音だけを聞いてみても楽しい。
Q4:シーカー。
   ちなみに乗っているほうきは最新型のニンバス2000だ。

 最後にホグワース魔法学院はこんな学校だ。
 7年生の魔法使い育成の名門校。
 新学期/9月1日 
 行き方/ロンドンのキングズ・クロス駅のホーム9と3/4ホームのホグワーツ特急に乗る。
 授業内容/魔術入門、変身術、薬草毒草概論、魔法世界の動物とのつき合い方、黒魔術からの護身術ほか。
 入学時に必要なもの/普段着用のローブ、三角帽、ドラゴンの皮で出来た手袋、杖、標準2型の大鍋、ふくろう、猫、ひきがえるのいずれか1匹を持参してよい。


★以前に雑誌に書いた記事を流用。
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アテンションプリーズ 「初フライト…二人の夜」

2006年06月14日 | 職業ドラマ
 今回は美咲洋子(上戸彩)VS麻生カオル(笛木優子)。

 OJTに進んでやる気満々の洋子。
 そんな洋子に麻生は嫌み。洋子は反発してがんばる。
 この洋子と麻生の関係はさらに悪化。
 機内でチェスの相手をして喜ばれた洋子。自分の評価は完璧。
 有頂天の洋子だが、麻生は「サービスが何たるか理解していない」。
 洋子は反発する。
「嫌いだから言いがかりをつけている」「悪い所があったのなら言ってください」
 麻生は「人に言われなきゃわからないようじゃCA失格ね」と突き放す。
 洋子は三神教官(真矢みき)のところにやって来て抗議する。
「評価に私情をはさまれるのは困ります」
 三神は言う。
「あなたは不快な思いをされたお客様の顔を覚えていますか?」
 チェスをしていてまわりのお客様に気遣いが出来なかった洋子。
 麻生の指摘した点はそこだった。
 教科書ではお客様に喜ばれるのを良しとする。
 チェスのおじさんには「あなたのおかげで愉しかった。また乗らせてもらうよ」と最大の賛辞をもらった。
 しかし、空では教科書どおりでは対応できない問題がいくつも生じる。
「難題を解く鍵はいつもあなたの目の前にある」
 お客様ひとりひとりの顔だ。
 また、ひとつ学んだ洋子。
 麻生の厳しさの有り難さも。
 洋子は太宰(井上順)に「強者揃いの先輩たちはどうか」と聞かれてこう答える。
「ガミガミ言われてうるさいですけど、ああいう先輩も悪くないです」
 麻生にも言う。
「麻生先輩、一生ついて行きます!本日もよろしくお願いします!」

 この話では前半と後半で洋子と麻生の人間関係が変わっていく。
  嫌みと反発→より強い反発→信頼。
 このドラマの基本構造だ。
 まさにドラマは変化なり。
 でも、このドラマの作家はシャイなのだろう。
 感動や信頼をそのまま描いて終わらせない。
 麻生が今日のフライトの指導員でないことを知って洋子は言う。
「え~っ、いっしょじゃないんですかぁ?残念ですぅ!」
 と麻生に言った洋子はふり返ってカメラに向かってこう言う。
「ラッキー」

★研究ポイント
 ドラマの作り方:変化する人間関係
 モチーフ:先輩と後輩

 このモチーフで様々な先輩と後輩の姿が平行して描かれる。
 桜田キャプテン(小日向文世)と堤修介(小泉孝太郎)。
 「待ってましたよ、美咲さん。いいフライトをしましょう」といつもは穏やかな桜田も堤には厳しい。機内アナウンスを考えて来なかった堤にこのままじゃ副操縦士は無理だときっぱり言う。
 また、中原翔太(錦戸亮)と渡辺誠(小市慢太郎)。
 ガミガミ言われて嫌だった翔太だが、今は渡辺に感謝している。
「今はナベさんが先輩でよかったと思っている」
 先輩を批判する洋子にはこう話す。
「先輩の悪口言ってそれで何か変わるわけ」

★キャラクター研究:三神教官
「プライベートです」と言いながら、洋子の初フライトが気になって飛行機に乗って来た三神。
 普段は感情や本音を見せない人が、行動でチラリと見せる。
 洋子のエプロンを直したり、寝たふりをしてどう対応するか試したり。
 ごきぶりで洋子が悲鳴をあげた時は手本を示した。
 そのキャラクターの立て方は見事。
 そしてしっかり怒る時はしっかり怒る。
 フライトで悲鳴をあげた洋子と若村弥生(相武紗季)をしっかりと怒る。
「無駄な動きが多すぎます」と教える。
 裏では洋子のことを心配して「美咲さんはどうか」と麻生に聞く。

 感情をすぐおもてに出す洋子と対照的なキャラ。名コンビだ。

★名セリフ
 麻生の洋子の評価。
「すぐに調子に乗るし、文句は言うし、正直言って手に負えません。でも、いいCAになると思います」

★名シーン
 洋子の初フライト。
 前向きな洋子も初フライトは緊張しているよう。
 椅子に座ってシートベルトをつける。
 チーフCAは「客室準備OKです」と機長に伝える。
 機長は管制塔と離陸のやりとり。
 CAどうしの打ち合わせ、フライト準備・チェック、搭乗前のブリーフィング。
 そしてこのシーン。
 飛行機を飛ばすのはこんなに大変なんだとわかる。
 同時に言葉少ない洋子で、彼女の緊張と嬉しさが伝わって来る。
 洋子は一言「やってやろうじゃん」と言う。

★用語
 ダブルアプローチ
  洋子に拠れば「ふたりのお客様から誘われること。モテモテ状態のこと」
 ドアいただきます
  先輩の乗るエレベーターのドアを後輩が開けておくこと。
  ドアなんか食べられないと洋子。
 ドメスティックコーヒー
  国内コーヒー→濃くないコーヒー。カラスのつまらないギャグ。

★追記
 洋子と弥生は漫才コンビを組んだようだ。
 本日の目標は?と聞かれて答える洋子。
「お客様のハートをがっちり掴みます!」
 すると弥生が突っこむ。
「絶対、間違っている」
 この時の弥生の控えめな突っこみ方がいい。
 
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