リタイアした高齢者は財政政策の有効需要の輪の中から外れる!!
私が経済学を学んだころ1970年台は、まだまだケインズ経済学も隆盛を極めており、実にその財政政策が有効であった時期だったように思う。政府が公共投資を行うことによって有効需要は何倍にも増加していた時代でもあった。本当のところは分からないが、教科書では消費性向は、0.8(家計の収入のうち8割を消費に回し2割が貯蓄)、有効需要は1/(1-0.8)=5倍(=乗数効果)あると書かれていた。ところがである、最近(2000~2020年)財政政策の有効需要に作用する倍数(これを「乗数」ともいいます。)は、その乗数は1.3から1.1まで下がってきているという。
さらには、「給付」(例えばコロナによる救済策としての10万円給付)として分配することもある。公共投資は初めの公共投資額の分がそっくりそのまま「公共投資」(例えば橋をかけるとか道を作るとかはそっくりそのまま企業の所得になりその中から職員給与に分配。)として使われるのであるが、「給付」の場合は、給付は個人にいきわたってもその中から消費する分は一部となり中には貯蓄に回す人もいる。したがって一段階の経済効果は、お金の回り具合は、公共投資よりも給付の方が悪い、経済効果はあまりないのである。
またよく言われるのが、給与は年一回あがるのが普通で公共投資や給付をしても、その効果は給与に回るまでに1年ほど待たなければならない。すまわち、まだお金は回っていないのである。先ほどの乗数1.3~1.1でさえ、これは3年後の経済効果をとらえたものである。すなわち、公共投資、給付は、スパンを長くしなければ、その経済効果=乗数は大きくはならないといわれている。
こういった乗数=経済効果は、経済学の本筋からもいえることで、乗数理論としては、教科書に初めから書かれていたものであった。しかし、宮本弘曉氏によれば、さらに高齢化がこの財政政策の効果に大きく影響するとしています。彼がIMFで行った調査研究をあげて、高齢化の進んだ経済では、財政政策の景気浮揚効果が弱くなることが分かったとしています。OECD諸国を高齢化の度合いに応じて2つのグループに分け、それぞれのグループにおける財政政策の効果を推計しています。財政政策が経済成長率の及ぼす影響は、年齢構成が若い国では大きなプラスの効果が生まれていますが、高齢化が進んでいる国では財政政策の効果が相当に低くなることを示す数字になっている。先ほどの乗数効果に再度戻りますが、公共投資は雇用機会を増加、人々の所得の増加につながります。そして、消費が拡大、総需要は増加。その増加した需要に応じるため、企業は生産を拡大、それが人々の所得を増加させるのです。それがまた消費を拡大させ、次に需要を拡大させ、次ぐ次にそれぞれを拡大していって、それが永遠に続くとした数字が、この財政政策の乗数効果です。
ところが、この乗数効果は、先ほどの経済効果の過程で申し上げた「人々の所得の増加」は、退職した高齢者にはあまり関係しません。雇用機会が増えても、リタイアした高齢者は職探しをしているわけでもなく、雇用拡大には反応がないことになります。また彼らは、賃金を受け取っているわけではなく、先ほどの経済循環過程のどの部分にも関与していないから、退職した高齢者にはその効果は見込めないことになります。
また、高齢者では、一般に財政政策によって消費を増やす傾向はあまり見られなく、それを増やすのは若者であることが分かっているようです。これも高齢者の消費行動としては納得できるものです。金持ちである高齢者は別として、なるべく消費はしないようにするのが高齢者でしょう。
経済全体で高齢者の割合が高まれば、消費行動として、財政政策に対する個人消費の反応は当然鈍くなり、乗数効果もあまり上がらないことになります。特に最近国(財務省)では、2000万円の貯蓄が必要との試算の発表もあり国の方で面倒は見切れないとなると高齢者の消費行動はますます控えることになります。
私も高齢者です。私ども「高齢者」が、財政政策については景気回復のブレーキをかけているように思えます。今から団塊の世代が後期高齢者になっていきます。ますます「どげんかせんといかん」と思ってしまいます。高齢者社会には、それに対応した「政策」が必要になるということでしょう。少なくとも現状では景気浮揚には財政政策は効かなくなっていくようです。
高齢化を前提にお話しをしてきましたが、数字的には、日本の2020年の高齢化率は28.6%、国民の約3.5人に1人が65歳以上となっています。WHOの基準・高齢化社会(7~14%)高齢社会(14%~21%)超高齢社会(21%~)で分けると、すでに超高齢化社会に入っているのです。
(参考) 高齢者の財政政策の部分は、「101のデータで読む日本の未来」宮本弘曉著(php新書)より抜粋要約(私の解釈の部分あり)した。
私が経済学を学んだころ1970年台は、まだまだケインズ経済学も隆盛を極めており、実にその財政政策が有効であった時期だったように思う。政府が公共投資を行うことによって有効需要は何倍にも増加していた時代でもあった。本当のところは分からないが、教科書では消費性向は、0.8(家計の収入のうち8割を消費に回し2割が貯蓄)、有効需要は1/(1-0.8)=5倍(=乗数効果)あると書かれていた。ところがである、最近(2000~2020年)財政政策の有効需要に作用する倍数(これを「乗数」ともいいます。)は、その乗数は1.3から1.1まで下がってきているという。
さらには、「給付」(例えばコロナによる救済策としての10万円給付)として分配することもある。公共投資は初めの公共投資額の分がそっくりそのまま「公共投資」(例えば橋をかけるとか道を作るとかはそっくりそのまま企業の所得になりその中から職員給与に分配。)として使われるのであるが、「給付」の場合は、給付は個人にいきわたってもその中から消費する分は一部となり中には貯蓄に回す人もいる。したがって一段階の経済効果は、お金の回り具合は、公共投資よりも給付の方が悪い、経済効果はあまりないのである。
またよく言われるのが、給与は年一回あがるのが普通で公共投資や給付をしても、その効果は給与に回るまでに1年ほど待たなければならない。すまわち、まだお金は回っていないのである。先ほどの乗数1.3~1.1でさえ、これは3年後の経済効果をとらえたものである。すなわち、公共投資、給付は、スパンを長くしなければ、その経済効果=乗数は大きくはならないといわれている。
こういった乗数=経済効果は、経済学の本筋からもいえることで、乗数理論としては、教科書に初めから書かれていたものであった。しかし、宮本弘曉氏によれば、さらに高齢化がこの財政政策の効果に大きく影響するとしています。彼がIMFで行った調査研究をあげて、高齢化の進んだ経済では、財政政策の景気浮揚効果が弱くなることが分かったとしています。OECD諸国を高齢化の度合いに応じて2つのグループに分け、それぞれのグループにおける財政政策の効果を推計しています。財政政策が経済成長率の及ぼす影響は、年齢構成が若い国では大きなプラスの効果が生まれていますが、高齢化が進んでいる国では財政政策の効果が相当に低くなることを示す数字になっている。先ほどの乗数効果に再度戻りますが、公共投資は雇用機会を増加、人々の所得の増加につながります。そして、消費が拡大、総需要は増加。その増加した需要に応じるため、企業は生産を拡大、それが人々の所得を増加させるのです。それがまた消費を拡大させ、次に需要を拡大させ、次ぐ次にそれぞれを拡大していって、それが永遠に続くとした数字が、この財政政策の乗数効果です。
ところが、この乗数効果は、先ほどの経済効果の過程で申し上げた「人々の所得の増加」は、退職した高齢者にはあまり関係しません。雇用機会が増えても、リタイアした高齢者は職探しをしているわけでもなく、雇用拡大には反応がないことになります。また彼らは、賃金を受け取っているわけではなく、先ほどの経済循環過程のどの部分にも関与していないから、退職した高齢者にはその効果は見込めないことになります。
また、高齢者では、一般に財政政策によって消費を増やす傾向はあまり見られなく、それを増やすのは若者であることが分かっているようです。これも高齢者の消費行動としては納得できるものです。金持ちである高齢者は別として、なるべく消費はしないようにするのが高齢者でしょう。
経済全体で高齢者の割合が高まれば、消費行動として、財政政策に対する個人消費の反応は当然鈍くなり、乗数効果もあまり上がらないことになります。特に最近国(財務省)では、2000万円の貯蓄が必要との試算の発表もあり国の方で面倒は見切れないとなると高齢者の消費行動はますます控えることになります。
私も高齢者です。私ども「高齢者」が、財政政策については景気回復のブレーキをかけているように思えます。今から団塊の世代が後期高齢者になっていきます。ますます「どげんかせんといかん」と思ってしまいます。高齢者社会には、それに対応した「政策」が必要になるということでしょう。少なくとも現状では景気浮揚には財政政策は効かなくなっていくようです。
高齢化を前提にお話しをしてきましたが、数字的には、日本の2020年の高齢化率は28.6%、国民の約3.5人に1人が65歳以上となっています。WHOの基準・高齢化社会(7~14%)高齢社会(14%~21%)超高齢社会(21%~)で分けると、すでに超高齢化社会に入っているのです。
(参考) 高齢者の財政政策の部分は、「101のデータで読む日本の未来」宮本弘曉著(php新書)より抜粋要約(私の解釈の部分あり)した。
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