元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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「インフレ手当」の経済効果を国は考えて<所得税は課税!社会保険料控除はちょっと疑問?>

2022-10-22 13:41:04 | 経済・歴史
 国の財布も痛まない「せっかく企業が考え出したインフレ手当」を経済政策に生かす!!

 エネルギー価格や急激な円安を背景に、食料品や日用品の値上げが相次ぐ中、企業が従業員に「インフレ(特別)手当」を支給するところが相次いでいる。 手当の特別の名目が示すように、一回限りとしているものが多いが、一定期間に行うといった様子見的なところもあるようだ。ただ、企業収益も悪化するなかで、積立金を行ってきた大企業はまだ出せる余地のあるところはいいが、中小企業やさらには小規模事業ではそうはいかないところも多い。
 イートアンドホールディングス ・社員など約480人が対象 ・10月支給分から一律8000円を毎月の給与に上乗せ
 サイボウズ          ・海外拠点を含む1000人が対象 ・日本では最高15万円を支給
 ケンミン食品         ・在籍期間に応じて1万~5万円を7月に支給
 ノジマ            ・社員と契約社員約3000人を対象に7月から毎月1万円を支給
 大都             ・会社員29人に一律10万円を7月に支給       (共同通信社・宮日新聞報道)

 以下、論点を明確にするために、インフレ手当を一回限りのものとして、限定して論じていくこととします。

 ところで、このインフレ手当は、所得税に課税されることには間違いなさそうだが、社会保険控除の対象になるかについては、不明確であったようだ。すなわち、社会保険料の対象からは、臨時的なものは除かれておりますので、この臨時的かどうかをめぐって解釈が分かれたようです。そこで臨時的とは「支給時期の発生、原因が不明確なものであること」と厳格に考えられていますが、インフレ手当を一時金で支給する場合は、一度きりの支給であり、金額も1年間の物価高騰の影響を考慮して決めるとのことですので、きわめて臨時的なものであるように考えられます。よって、社会保険料の対象から外してもよいように思えます。 

 しかし、年金事務所の見解では、一時金を「臨時的なもの」として、社会保険料の算定基礎に含めない扱いは、「極めて狭義に解するもの」とされている関係から、インフル特別手当は一時金であったとしても、賞与扱いとなり社会保険料の算定基礎に含める必要があるとのことである。(「社労士・井口克己の労務Q&A」のオンライン記事による。)
 
 いずれにしても、このような問題は課税とか社会保険料の控除をどうするのかといった考えは一応置いといて、経済的側面から、企業がわざわざ困窮した従業員のためにお金を支給しているのだから、これら全部免除するぐらいの制度として考えて欲しいものである。企業が自分のところの従業員のために支出するのだから、政府として自分の財布はいたまないのだ。もともとの発想は企業が「インフレ手当」を考えだし、政府が国民のために一般の生活困窮者に対しての給付とかを検討すると言うことになったようだ。

 そうであれば、この際、企業の考え出したこの「インフレ手当」を手取りで、そのままの額で従業員にわたるようにしてもらいたい。社会保険控除は、約15%取られるようになっているので、これが取られるとぐんと少なくなるのだ。さらに所得税が課税されるのだ。これでは、経済効果の点からいって、多くの損失になるのだ。かっての国の支給する特別定額給付金等においては、非課税であったことから考えると、国の支出と企業が支出するものと差異が感じられてならないのだ。

 ただし、企業側は小回りが利くからで支出しようと思えば容易とはいわないが、国の制度ほどではない。一方、国の制度をいじるとなると法律の兼ね合いもあり、相当の期間が必要になることは分かる。そこをどうにかならないのか、私の「つぶやき」を少しでも聴いてもらいたいのだ。

 <追伸> 「臨時的なもの」を社会保険料の対象外とするものとして、次のような通達があります。
 
 「臨時ニ受クルモノ」とは、被保険者が常態として受ける報酬以外のもので極めて狭義に解するものとすること。例えば、①従前に賞与として、一年に一回又は二回の支給を受けていた者が給与の慣行として毎月分割支給を受けるもの、②飢餓突破資金として、二月又は三月目毎に支給を受けるもの 又は③遡及して昇給が認められ、その差額として二月又は三月目毎に支給を受けるもの等は、その支給を受ける実態が、被保険者の通常の生計に充てられる性質のものであるから本法に所謂報酬(賃金・給与等)の範囲とすること。(昭和23(1948)年7月12日の通達「改正健康保険法の施行に関する件(抄)」) 

 ・井口社労士さんが、年金事務所に問い合わせた結果が報告されている。
 年金事務所に「インフレ手当」の一時金について、社会保険の算定基礎に含めるべきか確認をすると「物価上昇のため生活費を補填する手当は一時的であっても、従業員が負担すべきものに対する補填となり報酬に含めるように」と回答を受けたとのこと。これは1回限りの支払いであっても、「被保険者の通常の生計に充てられる性質のもの」となるものは、「極めて狭義に解するものとすること」に則って、臨時に受けるもので社会保険料の算定基礎から除いてよいものにあてはまらないと判断されたものと推察されます との記事があります。(「社労士・井口克己の労務Q&A」のオンライン記事)

 しかしながら、私としては、この上記の年金事務所の回答は納得できないところです。当該通達の具体例として示す「被保険者の通常の生計に充てられる性質のもの」とは、①②③のように「給与の慣行」とか「分割」「二月又は三月目毎」とかであって、今回のサイボウズの例のような1回限りで継続的でないというようなものではないのです。そもそもサイボウズの場合は、海外に拠点を置く事業所があり物価高が相当なものとなっていることから、日本を含めて従業員を救済するために、一回限りの救済策として、特別手当を出すことになったようです。敷衍して申し上げると、突然で予期せぬ出来事(物価高騰)に際して、一回のみの手当を支給するということで、これぞ「臨時的なもの」と言わずしてどうなんだという疑問です。

 なお、会社から支給されるものであっても、病気の見舞金や災害見舞金等の「事業主が恩恵的に支給するもの」は、もともと「報酬」(賃金・給与等)には該当しないされているところで、社会保険料の対象とはならないとされています。この範囲には「インフレ手当」は含まれないと考えられるところです。






 
 

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