出向先の勤務条件が変わるためその調整のための詳細整備が必要に!!
配置転換は、同じ企業内での人事異動であるが、出向は現在の企業との雇用関係はそのまま維持した状態で、相当長期にわたって他の企業の業務に従事するものです。この出向は、雇用調整や中高年従業員の処遇改善、さらには人事交流や関連会社の経営・技術指導、能力開発等の積極的な人事政策として行われるものまで、様々な目的のために利用されている。
ところで、出向については、その労働者の籍は元の企業に置いているとはいえ、他の企業の業務に従事するものであり、民法625条1項の「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第3者に譲り渡すことができない」と規定されていることから、何らかの労働者の同意が必要であるとされる。少なくとも配置転換のように周知された就業規則に書いてあるとか初めの雇用の際に同意したとかの、いわゆる包括的な同意だけでは、出向はできないとされている。
しかしながら、元の企業に籍が全くなくなる転籍出向であれば、転籍先である企業と新たな労働契約を結ばなければならないので、個別の同意が必要であるとされているのとは、違うので、出向の場合は、個別の同意というそこまでする必要もない。
考えるべきは、出向先が関連企業としてもどういう企業か、そしてその企業の労働条件等がどうなのかであり、この点の環境整備が必要であろう。すなわち、就業規則・労働協約や入社の際等において出向命令権の包括的な規定や同意があれば十分かといえば、それだけではだめで、『包括的な規定ないし同意によって出向を命じるには、密接な関連会社間の日常的な出向であって、出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが出向規定によって労働者の利益に配慮して整備され、当該職場での労働者が通常の人事異動の手段として受容できるものであることを要する。』(菅野著労働法)とされている。(「具体的同意説」)
新日本製鉄事件においては、最高裁で次のように判決が出されている。
ある事業場における特定の業務を協力会社である別会社に業務委託するに伴い、その委託された業務に従事していた労働者に出向が命じられた場合において、入社時及び出向命令時の就業規則に社外勤務条項(出向条項)があり、また当該労働者に適用される労働協約にも同様の社外勤務条項(出向条項)があり、さらに労働協約である社外勤務協定において、出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていたという事情の下では、会社は労働者の個別的同意なしに出向を命じることができる。・・・・出向は、その期間が長期化した場合でも、出向元との労働関係の存続自体が形骸化していなければ、直ちに転籍と同視して個別的同意を要するとまではいえない。当初3年間の出向を3度にわたり延長する本件出向延措置には合理性があり、これにより労働者が著しい不利益を受けるものとはいえないので権利濫用とはいえない。(最判平15.4.18 新日本製鉄事件)
参考 菅野和夫著 労働法 弘文堂
荒木尚志 労働法 有斐閣
配置転換は、同じ企業内での人事異動であるが、出向は現在の企業との雇用関係はそのまま維持した状態で、相当長期にわたって他の企業の業務に従事するものです。この出向は、雇用調整や中高年従業員の処遇改善、さらには人事交流や関連会社の経営・技術指導、能力開発等の積極的な人事政策として行われるものまで、様々な目的のために利用されている。
ところで、出向については、その労働者の籍は元の企業に置いているとはいえ、他の企業の業務に従事するものであり、民法625条1項の「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第3者に譲り渡すことができない」と規定されていることから、何らかの労働者の同意が必要であるとされる。少なくとも配置転換のように周知された就業規則に書いてあるとか初めの雇用の際に同意したとかの、いわゆる包括的な同意だけでは、出向はできないとされている。
しかしながら、元の企業に籍が全くなくなる転籍出向であれば、転籍先である企業と新たな労働契約を結ばなければならないので、個別の同意が必要であるとされているのとは、違うので、出向の場合は、個別の同意というそこまでする必要もない。
考えるべきは、出向先が関連企業としてもどういう企業か、そしてその企業の労働条件等がどうなのかであり、この点の環境整備が必要であろう。すなわち、就業規則・労働協約や入社の際等において出向命令権の包括的な規定や同意があれば十分かといえば、それだけではだめで、『包括的な規定ないし同意によって出向を命じるには、密接な関連会社間の日常的な出向であって、出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが出向規定によって労働者の利益に配慮して整備され、当該職場での労働者が通常の人事異動の手段として受容できるものであることを要する。』(菅野著労働法)とされている。(「具体的同意説」)
新日本製鉄事件においては、最高裁で次のように判決が出されている。
ある事業場における特定の業務を協力会社である別会社に業務委託するに伴い、その委託された業務に従事していた労働者に出向が命じられた場合において、入社時及び出向命令時の就業規則に社外勤務条項(出向条項)があり、また当該労働者に適用される労働協約にも同様の社外勤務条項(出向条項)があり、さらに労働協約である社外勤務協定において、出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていたという事情の下では、会社は労働者の個別的同意なしに出向を命じることができる。・・・・出向は、その期間が長期化した場合でも、出向元との労働関係の存続自体が形骸化していなければ、直ちに転籍と同視して個別的同意を要するとまではいえない。当初3年間の出向を3度にわたり延長する本件出向延措置には合理性があり、これにより労働者が著しい不利益を受けるものとはいえないので権利濫用とはいえない。(最判平15.4.18 新日本製鉄事件)
参考 菅野和夫著 労働法 弘文堂
荒木尚志 労働法 有斐閣