アルバイトでも損害賠償額予定は禁止・給料差引きは原則禁止(全額払い)・重大な過失あるときのみ損害の負担!!
学生アルバイトの皿洗いに最中に、ミスって皿を落として割った時に、店長がやってきて、(1)「皿1枚○○円するから弁償してよ」さらに、そのあと続けて、(2)「バイト代から引いとくからね」と言われました。えーつ、少ないバイト代から差し引かれるのかと思った、そのアルバイトさん。支払う必要もありませんし、バイト代差し引きは拒絶できます。
(1)のように、アルバイトの方(かた)が注意力が非常に散漫で異常に皿を落とすような場合は別として、たまたま皿を割ったような軽微な過失による損害については、支払う必要はありません。確かに、相手に不注意で損害を与えた場合、例えば、注文を聞き違えて2重に注文してしまった店に対する損害とか、ミスで皿を落としたとかのような店の財産(皿もりっぱな財産です)を壊してしまったときには、「過失責任の原則」により、損害額を支払うのが民法上の原則です。(民法415・416条、同法709条)
しかし、ことアルバイトも「労働契約を結んで」バイトに入るわけですから、こういった労働契約の場合には、使用者との労働者(アルバイトもこの意味の「労働者」です。)との信頼関係によって成り立っているわけですから、不注意だからあなたの責任で全額支払えというのは、信頼関係の維持からいってあまりにも酷です。
そこで、裁判では、使用者と労働者の経済力の格差や事業活動に伴う危険は、それによって利益を得ている事業者が負うべきという危険負担あるいは報酬責任の原則から、労働者側の責任を制限しており、軽過失の場合は、労働者には全く責任を押し付けてはいません。すなわち店側の責任負担になるとされています。労働者に重大な過失があった場合のみ、労働者にも支払いの必要はありますが、裁判では、一般従業員が深夜の労働中に高額な機械を居眠りによる事故から壊してしまった場合には、深夜労働であること、会社が機械保険加入の措置を取っていなかった等を理由に、労働者の責任を1/4に限定しました。(大隅鉄工所事件・名古屋地裁)労働者の負担が多い場合でも1/2となっています(株式会社G事件)。重過失でも労働者が支払うのはその損害額の全額ではなく、労働者の責任の程度、労働者の労働条件、店側の指示・事故予防等によって、一定割合負担になるに過ぎません。繰り返しますと、皿をたまたま割ったという場合は、この裁判例からいうと、弁償する必要はありません。
さて、(2)のバイト代から引いとくからねというのは、これは労働基準法の違反です。労基法24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(*1)とされていますので、これはできません。アルバイトといえども、労働基準監督署に相談したら、NGが出されるのは、間違いありません。
また、「皿1枚につき○○円、コップ1つにつき○○円の「罰金」」といったように、あらかじめ損害賠償額を予定しておくのは、できません(労働基準法16)。バイトの始めに、このような定めのある契約書・誓約書に印を押させようとするバイト先は、やらないようが無難です。あとあとトラブルの元となります。
⇒学生アルバイト上の注意<その2>
⇒学生アルバイト上の注意<その3>
(*1)例外的に、税金・社会保険料の差し引きという法律で定める場合や労働者代表等との労使協定で定めた場合は、差し引きできることになっていますが、法律違反のこのようなときには、労使協定に定められるはずがありません。
参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社
学生アルバイトの皿洗いに最中に、ミスって皿を落として割った時に、店長がやってきて、(1)「皿1枚○○円するから弁償してよ」さらに、そのあと続けて、(2)「バイト代から引いとくからね」と言われました。えーつ、少ないバイト代から差し引かれるのかと思った、そのアルバイトさん。支払う必要もありませんし、バイト代差し引きは拒絶できます。
(1)のように、アルバイトの方(かた)が注意力が非常に散漫で異常に皿を落とすような場合は別として、たまたま皿を割ったような軽微な過失による損害については、支払う必要はありません。確かに、相手に不注意で損害を与えた場合、例えば、注文を聞き違えて2重に注文してしまった店に対する損害とか、ミスで皿を落としたとかのような店の財産(皿もりっぱな財産です)を壊してしまったときには、「過失責任の原則」により、損害額を支払うのが民法上の原則です。(民法415・416条、同法709条)
しかし、ことアルバイトも「労働契約を結んで」バイトに入るわけですから、こういった労働契約の場合には、使用者との労働者(アルバイトもこの意味の「労働者」です。)との信頼関係によって成り立っているわけですから、不注意だからあなたの責任で全額支払えというのは、信頼関係の維持からいってあまりにも酷です。
そこで、裁判では、使用者と労働者の経済力の格差や事業活動に伴う危険は、それによって利益を得ている事業者が負うべきという危険負担あるいは報酬責任の原則から、労働者側の責任を制限しており、軽過失の場合は、労働者には全く責任を押し付けてはいません。すなわち店側の責任負担になるとされています。労働者に重大な過失があった場合のみ、労働者にも支払いの必要はありますが、裁判では、一般従業員が深夜の労働中に高額な機械を居眠りによる事故から壊してしまった場合には、深夜労働であること、会社が機械保険加入の措置を取っていなかった等を理由に、労働者の責任を1/4に限定しました。(大隅鉄工所事件・名古屋地裁)労働者の負担が多い場合でも1/2となっています(株式会社G事件)。重過失でも労働者が支払うのはその損害額の全額ではなく、労働者の責任の程度、労働者の労働条件、店側の指示・事故予防等によって、一定割合負担になるに過ぎません。繰り返しますと、皿をたまたま割ったという場合は、この裁判例からいうと、弁償する必要はありません。
さて、(2)のバイト代から引いとくからねというのは、これは労働基準法の違反です。労基法24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(*1)とされていますので、これはできません。アルバイトといえども、労働基準監督署に相談したら、NGが出されるのは、間違いありません。
また、「皿1枚につき○○円、コップ1つにつき○○円の「罰金」」といったように、あらかじめ損害賠償額を予定しておくのは、できません(労働基準法16)。バイトの始めに、このような定めのある契約書・誓約書に印を押させようとするバイト先は、やらないようが無難です。あとあとトラブルの元となります。
⇒学生アルバイト上の注意<その2>
⇒学生アルバイト上の注意<その3>
(*1)例外的に、税金・社会保険料の差し引きという法律で定める場合や労働者代表等との労使協定で定めた場合は、差し引きできることになっていますが、法律違反のこのようなときには、労使協定に定められるはずがありません。
参考 大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A 石田眞・浅倉むつ子・上西充子著 旬報社