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元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

賞与は労基法上は殆ど規定なし(使用者での任意)但し就業規則規定ならそのまま適用

2021-12-18 14:16:56 | 社会保険労務士
 就業規則等には裁量を持たせないと会社の業績が良くないときにも支給しなければならない

  賞与は、大企業においては、支給額から、またいつ出すかには、就業規則に記載するのが普通です。しかし、それほどでない小規模事業所においては今年は出さないとか、その時期も今年年末ギリギリに出すとか、あまり就業規則や労働契約書にちゃんと書けない事業所もあるかと思います。
 
 給料支払いの5原則と言うのは聞いたかと思います。これは①通貨払い(現物給与の禁止)、②直接払い原則(労働本人に直接支払う)、③全額払い、④毎月1回払い、⑤一定期日払いのことですが、賞与については、④⑤は適用になりません。①②③については、支払いについては、ごくごく当たり前のことをいっているにすぎませんので、賞与についても普通に支払えばクリアーする問題です。

 だから、賞与については、賞与を支払うかを含めて、支給対象者、支払い要件・計算方法、支払い時期などのルールは、法律上(労基法)は全く決められてなく、使用者が自由に決めることができるといえます。

 しかしながら、全く支給しない場合には、労働者のモチベーションに大きく影響するかと思われます。そこで、少なくとも支給する可能性がある場合は、賞与について、何らかの就業規則や労働契約書に記載すべきだと思われます。就業規則には、賞与は絶対的に記載しなければならないものではないが、支給する場合には、その記載を行うようになっているところです。(労基法89条)

 ところが、これを大企業並みに、大企業の就業規則を参考に、就業規則等に給与の〇倍、12月10日に払うとかカッチリ書き込んでおくと、使用者の裁量は認められずに、就業規則等どおりの額で必ず支払うハメになってしまいます。

 そこで、背伸びをせずに、賞与はどんなときに出しているか、その額はどういうふうに決めているか、いつまでに出すのか、それをありのままに記載していけば良いと考えます。
 (賞与の支払い方針)
 第19条 賞与は会社の業績により個人ごとの能力を鑑みて支払う。業績によっては支払わうないこともあるものとする。ただし、支給日に在籍しない従業員には支給しないものとする。(サッと作れる零細企業の就業規則)

 いつまでに支払うのか全く書いてないじゃないかと言う方もおられ、あんまりではないかと言う方には、次の就業規則はどうでしょうか。
  賞与は会社の業績、各人の勤務成績、会社の貢献度などを考慮して支給する。ただし、会社の業績状況などにより支給しないことがある。
 2 賞与支給の時期は原則として毎月6月及び12月とする。
 3 賞与の受給資格は賞与支給日の在籍者とする。
   (就業規則モデル条文第2版 中山滋夫)

 大きな企業ではない場合には、賞与の原資もままならないこともあり、これくらいで必要最小限の「賞与」の記載に抑えることにより、従業員には業績によって賞与ありなんとし、会社にはその支給について裁量もありなんとするのが妥当ではないかと思う。

 なお、受給資格の賞与支給日の在職者というのも、重要です。賞与支給日の以前の退職者等は、それまでの勤務成績や功績があるはずだということになり、これを書かないと支給日前の在職者にも支払うハメになってしまいます。
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退職者に対する私物・会社備品を返却なし時(宣誓・就業規則等規定ありだが・・・)

2021-12-12 09:05:37 | 社会保険労務士
 会社の備品が返却されない場合は泣き寝入りか(絶対的対処法はないのか!!)

 退職した者が、私物をそのまま置いたままにしていることもあります。特に、いつのまにか会社に出てこなくなってしまい、そのまま退職してしまったという場合には、特にあり得ます。私物については、価値も分からず本人にとっては大事なものだったということあるでしょう。かってに会社の方で処分すれば、会社が損害賠償の対象になることもあるかもしれないということで、そのままとっておくこともあるでしょう。しかし、そのままずっと処分しないで取っておくというのも置き場所に困ってしまいます。

 第84条 1 就業員は、事業場内に日常携行品以外の私物を持ち込んではならない。(就業規則の法律実務4版石嵜編 中央経済社)

 このように、予防線を張っておくこともできますが、やはりいろんなものを持ってくる人もいます。本人と連絡を取り、持ち帰るよう伝えることがまず必要ですが、連絡がつかない場合もあるでしょう。

 第〇条 従業員が退職または解雇された場合で、私物の返還に従業員本人が受領できない場合、あらかじめ本人が指定した身元保証人又は親族に送付することで返還したものとみなす。(労働基準法・労働契約法の実務ハンドブック 人事・労務編 セルバ出版)

 私物という民法上の「所有物」に対して、就業規則でこのように規定することは、問題があることかもしれませんが、一種の取り扱いのルールとして考えれば、妥当なところかもしれません。

 さて、一方で、退職した者が備品を返却しない場合もあります。この場合も、入社宣誓書や就業規則で、退社の場合に返還するよう定めておくのは常識的なところです。しかし、これも会社に出てこなくなった場合などには、対応しようがありません。最後の取るべき手段は、横領や損害賠償請求の訴えということも考えられますが、それほどの価値ある備品であることもないことも多く、会社が泣き寝入りすることが多いようです。

 退職金を出している会社では、会社が任意に計算できますので、その旨の規定してあれば、返却分相当を差し引くこともできます。しかし、労働者本人が退職金をもらうために、こんな場合は、会社との連絡等ができている場合がほとんどなので、この規定が活きることはないのかもしれません。

 なお、健康保険証の返還不能にあっては、健保協会等の保険者へ回収不能届をその旨提出すれば認められます。

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配転命令(転勤・職務変更)の有効性=3つの権利の濫用にあたらないことが必要

2021-12-05 09:21:23 | 社会保険労務士
 厚生労働省「労働条件に関する総合情報サイト」で東和ペイント事件を総括して基本的方向性を出す

  配転命令とは、同じ企業内で職務場所(転勤)や職務の内容が変わること(職務変更)を言いますが、これについては、東亜ペイント事件で最高裁まで争われ、包括的な一定の結論がなされているようです。厚生労働省は、この裁判を整理し、配転命令が無効とならないチェックポイントとして、次のような2つのものを示しています。

 ① 就業規則に、業務上の都合により転勤や配置転換を命じることができる旨が定められており、実際にこれに基づき転勤が頻繁に行われ、雇用契約で勤務地や職種が限定されていない場合には、企業は労働者の同意なしに転勤や配置転換を命じることができます。
 ② 転勤や配置転換命令について、A業務の必要性がない場合、B不当な動機・目的が認められる場合、C労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合等特段の特段の事情がある場合は、その転勤や配置転換命令は権利の濫用にあたると考えられます。

 国の方で判例をまとめたもので、判例よりはやさしい文章で書かれてはいます。これをさらに言い換えます。
 配転は、勤務地限定社員や職種限定社員には一般的には認められないことから、この限定社員を除くと、就業規則で転勤・配置転換(以下「配転」という。)ができる旨が定められ実際も配転がよく行われている場合は、個々の労働者の同意なしに配転命令は有効になる。
 ただし、権利の濫用とされる場合として、上記の②のA、B、Cの3つのケースを挙げ、これに該当しない ことが配置転換が有効な条件となる。

 3つのケースについては、前の2つ、A業務の必要性がない場合(※注※) B不当な動機・目的がある場合では、会社側が恣意的に故意的に行う場合ですので、これは経営者の方で戒めればクリアできる問題です。3つ目の労働者の甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合とは、程度問題でなかなかむずかしい判断です。ただ、家族に病人などを抱え自分が転勤しなければならないとなると家庭の維持が困難となるような場合ですので、これも従業員の家庭の都合などを考えて、会社側が運用していれば問題はないように思えます。

 結局、適正な手続きを行った配転命令は、現在考えられている3つのケースである権利の濫用にあたらない限り、配転命令は有効と考えられます。でも、いくら有効でも、会社側が強引に配転命令を行うことは、トラブルの原因となります。組織の活性化や本人の業務へのマンネリ化を防ぐ意味が配転にはありますので、そこらを十分従業員に納得させないと、社員のモチベーションにはつなげられません。
 しかしながら、会社側がいくら誠意も持って対応したとしても、中には従わない者いるでしょう。これに対処しないければ職場の雰囲気に悪影響を与えます。そんなときには、手続きを踏んだ上で、退職勧奨や解雇等の懲戒処分を検討しながら行っていくこともやむを得ないでしょう。 

 (※注※)高度の必要性は要しなく、経営上の観点からの異動であればよいとされる。

 
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懲戒処分の大原則ー罪刑法定・不可及・一事不再理等の原則<刑法の考え>

2021-11-28 08:57:34 | 社会保険労務士
 懲戒処分を行う際に考えておかなければならない大原則

  従業員が就業規則に規定する定めに違反した場合に、その制裁措置として懲戒処分をすることができます。しかし、就業規則にその理由・種類・程度を具体的に定めていなければ、この懲戒処分はできません。

 ここらは、労基法に減給制裁規定などがありよく議論されるところですが、懲戒処分の前提となる「どんな場合に懲戒処分を行うことができるか」といった大原則は、労基法自体に規定はなく、この点の議論はあまり行われない傾向にあるようです。この大原則はかって公務員を管理する人事院において、7つの原則が提示されていました。(※注意※) これらは、同じ処罰を行う刑法を扱う際の考え方から来ているところです。以下に、この7つの原則について示します。これは懲戒処分する場合に、必ずチェックしなければならない大原則ですので、これらに留意しながら行わなけれなりません。

 ・罪刑法定主義 文頭の最初に議論の対象となったものですが、就業規則に懲戒の理由・種類・程度が明記されていなければなりません
 ・不可及の原則 規定を設ける前の違反について、さかのぼって懲戒を行うことはできない。
 ・一事不再理  1つの違反について、何回も懲戒を行うことはできない。
 ・平等取り扱いの原則 先に同様の事案があった場合には、その当時の処分との均衡を考慮しなければならない。
 ・相当性の原則 懲戒の内容は、違反の種類・程度・その他の事情に照らして、妥当なものでなければならない。
 ・個人責任の原則 別の労働者の違反に対し、連帯責任で懲戒を行うことはできない。
 ・適正手続きの原則 規則などで定められた適正な手続きによって懲戒を行わなければならない。

 最近、サスペンスドラマなどでよく出てくる一事不再理ですが、他にも罪刑法定主義や不可及の原則など当然勘案すべきものを原則化した7原則です。この原則を踏まえ、適正に運用すべき重要なものといえます。この原則は、会社で決定権限をもつ経営者にとって、懲戒処分を行う際に、これが恣意的にならぬよう戒める大原則ともいえます。

(※注意※)人事院「懲戒処分の指針について(通知)」H12.3.31 公務員の懲戒については、世論を踏まえ処分内容は厳しくなる傾向にあるようですが、ここでいう大原則自体は民間でも変わらないと思われる。(ただし改正版では見受けられません。)

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フレックスタイム制における遅刻・早退・欠勤の概念とは!!

2021-11-20 16:24:46 | 社会保険労務士
 フレックスタイムは出退社が自由だが一定のルールはあるので遅刻等は人事管理の対象に!!

 フレックスタイム制とは、従業員が出社及び退社時間を自由にできる制度のことで、 分かり安く2月の28日の日数の例を取ると、その1か月の間に、一定の労働時間(ここでは法定の最大限の労働時間とする。)の週40時間×4週=160時間働けばいいということで、そうすればちゃんと1か月の分の給料はもらえるということになります。ただし、あまりかってきままに、いつ出退社してもいいとなると統制がとれなくなり、例えば、夜中出社する輩も出てくるかもしれません。一般には、出退社が自由にできる幅のある時間と(これを「フレキシブル時間」と呼びます)逆に必ず出社していなければいけない時間帯を設ける(これを「コア時間」と言います。)ことが多いようです。例えば、
  8:00       11:00=========15:00       20:00
  ⇐ フレキシブルタイム ⇒⇐    コアタイム  ⇒⇐ フレキシブルタイム ⇒     のようにします。

 このフレックスタイム制は、2019年4月以降は、ある期間内に一定の労働時間働けば(例としてあげた2月の28日の場合は160時間)良しとするところの、この当該期間(これを「精算期間」と呼んでいます。)が1か月から3か月まで拡張されましたので、例えばお子さんのいる家庭で夏休み期間にこどもと一緒に過ごす時間を取れるように調整することが可能となり、従業員には十分使いやすくなりました。また、出勤や退社時間をずらすことによって、最近問題となる密になることを避けることができます。このように、フレックス時間を活用すると従業員に喜ばれることができますので、管理者としては一度検討する余地はありそうです。

 さて、このフレックスタイムは、一般にいう「遅刻」や「早退」という概念はあるのでしょうか。一般には、遅刻・早退をした場合には、その働かなかった時間は賃金から差し引かれる対象となるでしょう。しかし、フレキシブルタイムの場合は、フレックスタイム中に出社すればいいわけですから、この時間の遅刻はありえませんが、コアタイムにいなかったらこれは普通にいう「遅刻」となります。コアタイムには、出てこなければならない時間にいないわけですから、これは遅刻でしょう。ただ、その時間にいなくても、1か月に働いた時間の総数が160時間(2月の28日の場合)であれば、給料差し引きはないわけです。

 ここでなんでコアタイムを設けるかと言うとその間に皆が出てきて、相談したり、係で打ち合わせをしたり、会議をしたりする時間のために設けていることになります。そういったことができなくなり、ルール違反のそしりは免れません。上司としては注意・指導することになります。また、これが続くようであれば、昇給・賞与やはたまた昇格に響いても文句はいえないでしょう。

 では一般にいう「欠勤」はどうでしょう。1か月の間に160時間(2月の場合の例)働けばいいわけで、1日に働く時間を多くすれば、出勤しない日があっても、十分に1か月に働かなけばならない時間160時間は確保できることになります。しかしながら、これも出勤・退社する時間が自由に決められるということだけであり、就労日であれば全く出てこないことはあり得ません。やはり、打ち合わせ等のために、就労日に全く出勤しないことはありえないわけでして、これも遅刻や早退同様ルール違反であり、「欠勤」として、人事管理の対象となってもやむをえないことになります。
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