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元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

遅刻により1日8時間超の労働でなくても時間外?<労基法は8時間超に割増賃金発生>

2021-11-07 08:59:31 | 社会保険労務士
 就業規則と異なる労使慣行の成立があれば破棄は困難だが判例は基本はその成立について慎重姿勢

  従業員が午前中遅刻して、結局昼から出勤。こんな場合に給与計算はどうされているだろうか。午前中の遅刻を頭に入れていないと時間外が発生することにもなります。

 たとえば、その会社が9時から18時までの就業時間として、うち昼12時から13時が休憩とします。昼から出勤し遅刻した分を取り戻そうとしてたとして、13時から働いていつもの定時終了の18時までに(ここまで5時間就業)加え、18時から1時間の休憩を取って、19時から再度働き午前中働いていなかった3時間をさらに働いて、結局22時に仕事を終了したとします。これでも一日働いた労働時間は8時間です。

 いわゆる残業の割増賃金は、法律上は一日8時間を超えた場合に支給されます。ところが遅刻したことを頭に入れていないと、18時以降働いた分を残業と捉え、これに1・25増しの賃金を払うことが考えられます。18時まではまだ5時間しか働いていないのにかかわらずです。ここで、労働基準法は、あくまでも通常一日8時間、週40時間を超えたときに割増しを支払うとなっている点です。

 ところが給与計算上面倒なことなどから、就業規則で18時以降の就業を時間外として払うこともあり得ます。それはそれで会社としては、労働者に有利に働くので、最低基準を定める労働基準法ではむしろOKということになります。

 しかしながら、就業規則上は、労働基準法どおり一日8時間超の労働を残業手当を支払い対象としていた場合に、「給与係」が就業規則の規定を知ってか知らずか割増賃金を払っていた場合には、どうなるのでしょう。給与係のちょっとしたミスによりちょっとの間だけ、そういった支払いをしていた場合には、就業規則どおり支払えばいいことになります。しかし、これが長期間続いていた場合は、どうでしょう。

 就業規則をあまり見ていないと、就業規則に定めているものより労働者側にとって都合の良いルールが行われて、会社内でいつの間にか定着していることがあります。こんな労働条件やルールが会社と従業員の間で当然のことと受け入れられているのを「労使慣行」といいます。労使慣行が成立するのは、①そういった事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと ②労使双方が明示的にこれを排除・排斥をしていないこと ③この労使慣行が労働条件にその決定権限を持つ労使双方の模範意識によって支えられていること この3つを満足した場合に初めて成立するこことされています。結構、厳格な成立要素が必要です。
 よくある労使慣行例  ・長期間に渡り、当たり前のように賞与を〇か月分支給
            ・遅刻しても賃金から控除していない。
            ・休憩時間を就業規則より多くとっている。
            ・就業規則で定年を定めているのに、定年年齢を超えても再雇用ではなく、
             今までどおり働く続けている。
 (以上の例は、労働基準法・労働契約法実務ハンドブック セルバ出版 人事労務編著 より)

 この労使慣行として成立している場合は、就業規則と違っていても、簡単にこの労使慣行を破棄することはできません。就業規則によりこれを変更する場合は、その変更の必要性や合理性などの就業規則を変更する場合と同様の考え方と労働者にそれを周知をしなければ、破棄できないことになります。(契約法9・10条)

 ただし、労働者との合意により労働契約は変更できることになっています。ゆえに、就業規則の変更ではなくて、個々の労働者と協議・同意を得るという「個々の労働者の合意」により契約の変更は可能なことから、使用者と個々の労働者との合意により労使慣行は破棄できることになると考えます。(契約法8条)

 なお、ここまで書いて何なんですが、就業規則に抵触する労使慣行が成立する可能性は、就業規則が労使のルールとして明文化されていることの重要性に対して、不文の形での労使協定成立を認めるどうかという点から、判例は慎重な態度を取っていることを付け加えます。
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安全配慮義務は請負・委託であっても適用される場合がある得る!!

2021-10-31 09:06:54 | 社会保険労務士
 安全配慮義務は判例により信義則を基に出てきたものであり労働契約法成立以前から存在

 会社は従業員に対して安全な形で仕事をしてもらうというのが、その義務としてあります。これは「安全配慮義務」として労働契約法第5条に記載されています。
 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。<労働契約法5条>)

 契約上の安全に対する必要な配慮とありますので、労働契約の内容に安全に関してなんらの記載がなかったとしても、契約している以上、身体だけでなく精神的なものを含んで、使用者は労働者の安全を確保しなければなりません。この義務を怠り労働者に損害を与えたときは、その損害を賠償しなければなりません。

 ところで、この条文は、労働契約に伴う使用者が労働者に対するものの間の義務です。それゆえ、請負契約や業務委託契約で働く労働者には適用はないことになり、「安全配慮義務」は「関係ないよ」となってしまいます。しかし「それでいいの」となりそうです。建設業においては、下請・孫請があり、こういった請負契約等で仕事を行っている例がみられます。こういう労働者のことを一般的に「社外労働者」と呼んでいるようです。<※注1>

 この安全配慮義務は、民法上の信義則(信義に従い誠実に行動せよ)からきており、使用者側が労働者に働いてもらっているという前提の下、労働者の安全を確保しながら働いてもらうのは当然だという認識によるものです。そのため、裁判例の積み重ねから、信義則を基礎にして、この安全配慮義務という原則が出てきたといえるものです。それを法律と言う形でまとめて成立させたのが、この労働契約法で平成19年に成立しました。法律制定はつい最近のことです。しかし、平成19年以前から、裁判では「安全配慮義務」は判例の積み重ねにより、厳然として存在していたことになり、労働契約法のこの規定はその「確認」をしたということなのです。

 そして、その裁判で存在していた「安全配慮義務」は、必ずしも労働契約に伴う労働者にとどまらず、請負契約等においても、もっと広く解釈されています。
 下請企業の労働者が元請企業の造船所で労務の提供するにあたっては、いわゆる社外工(社外労働者)として、元請企業の管理する設備、工具等を用い、事実上元請け企業の指揮、監督を受けて、<※注2>その作業内容も元請企業の従業員である本工(本労働者)とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係の下においては、元請企業は、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、その労働者に安全配慮義務を負うものである。(最二小平成3.4.11三菱重工業神戸造船所事件)


 実は、昭和50年代頃から裁判所では、安全配慮義務の対象を広く、この「特別の社会的関係」に入った者の間で義務として捉えていたようなのです。「特別の社会的接触の関係」ということで、まったく事業所での接触のない下請けについては適用になりませんが、ここでいっている元請の設備・工具の使用や事実上の指揮監督関係が認められ、また作業内容が同じような場合、端的に言えば、同じ工場内での下請のような作業については、安全配慮義務が成りたつ場合があるということなのです。

 したがって、下請で働く従業員で直接の雇用関係にはないといえる場合は、労働基準法は少なくとも適用はありませんが、社外労働者であっても、会社に雇用されている従業員と同じ仕事内容とか同じ労働環境にある場合は、この労働契約法の安全配慮義務は認められる可能性はありますので、本社と同様に下請の従業員の安全マネジメントも十分行う必要がありそうです。<注3>

 ※注1 労災においては、建設業において、数次の請負が行われる場合、下請けの労働者であっても元請けを使用者とみなすとなっている。
 ※注2 いかに形式的に指揮命令が別であっても、事実上の指揮監督は元請けという意味。
 ※注3 地方自治体においても、協会・協力会等を置き、同じ仕事内容・同じ職場環境というような場合は、注意すべきでしょう。
     (以前、偽装請負が問題となった時に整理はしたと思われますが、この場合はちょっと違った観点からです。事実上の指揮命令となっている点に注意です。)
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コロナの無症状はテレワークできるか<安全配慮義務に違反する恐れ>

2021-10-17 09:14:28 | 社会保険労務士
診療体制が整えばできることもあるが第5波のような状況では困難か!!
 コロナ感染者であっても無症状の方は、テレワークでの作業は出来ないことはありません。そこで、会社として従業員に勤務をさせていいのでしょうか。

 まず、従業員が新型コロナに感染したときには、新型コロナは2類感染症相当となっており、事務所への出勤は許されておりませんが、自宅でテレワークをする限りはなんら支障はないはずです。しかし、軽症の間の自宅療養、そして入院が必要になったときの即入院のような「症状に応じた即時の対応」ができるのであれば支障はないのでしょうが、第5波のように、中等症の程度の者へさえ手が差し伸べられずやむをえず自宅療養になるような状態では、重症化し最悪は死亡となってしまいます。このような状業では、軽症(無症状)であるかどうかを「保健所」が正確に判断したかも分からず、コロナ感染者である従業員は精神的な負担のある中でテレワークを行うことになり、場合によっては肉体的な負担を強いることにもなるでしょう。また、このような状況下では、重症化・死亡することも考えられ、従業員のリスクは最大になります。

 これは、会社は安全配慮義務(労働契約法5条)の違反、すなわち会社にとっては「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう必要な配慮をする義務」の違反が問われる恐れがあります。第5波のような療養体制では、最終的には国・自治体の責任になるのでしょうが、会社としてもそのような状況は予測できたとして、この配慮義務に違反するおそれがあります。そうなれば、労働者からの損害賠償責任を求められることもあるでしょう。(※注※)

 それゆえ、今後も第5波のような療養体制が続く限り、安全配慮義務の観点から、当分の間は、コロナ感染者のテレワークの継続は、会社としてはやめておくべきということになります。しかし、将来的には、自宅療養であっても訪問診療やIT技術活用の診療データ整備による体制等が充実して症状の急変に備えられ、いつでも入院できる体制が整備され、安全配慮義務違反といった会社の責任も問われなくなる日が来ることも考えられます。(※注1※)

 無症状の従業員からテレワークを希望してきた場合であっても、以上述べてきたそのリスクは同様ですので、認めるべきではありません。(※注2※)

 さて、こうなった場合には、従業員の収入はどうなるのかですが、接客業等であれば労災が適用になる場合もありますが、一般には業務外の事由による病気により仕事ができなかったとして、傷病手当金(休んだ連続3日の後4日以上から支給額1日あたり2/3)が給付されます。ただし、休業手当(労働基準法26条)は、就業禁止は県などの措置によるものであり、「使用者の責に帰すべき事由」による休業ではないため、一般的には、休業手当の支払い(平均賃金の60%)は必要ないことになります。 
   
※注※ 地方によっては運用がうまく整っているところもあったようであるが、押しなべてうまくいかなかったようだ。
※注1※ 国の方で第5波の反省を踏まえ状況の改善を図っていくことが考えられますので、将来的にはうまく運用されることに期待いたします。しかし、このコロナはまだ正体が分かっていない部分も多くあり、今後どう展開していくか分からない部分もあるのです。
※注2※ 「症状の悪化に対し会社は責任を負わない」といった誓約書を労働者と交わすこともあり得ますが、これが安全配慮義務という法義務的に対しどれだけ有効化は、疑問が残ることろです。
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テレワークの「ちょこっと残業」はグレーの労働時間<事前許可制・その運用を適切にすべし>

2021-10-10 09:01:53 | 社会保険労務士
 黙示残業命令ゆえに「ちょこっと残業」は労働時間と捉えられる場合もあること

 企業のテレワークが増える中で、「ちょこっと残業」というのが聞かれるようになった。「ちょこっと残業」(※注※)と言うのは、自宅での仕事のため、いつでも仕事が始められるので、いったん本来の仕事を終了したのち、ちょっとの間、仕事をすることをいうようである。確かに、あそこに仕残したとかあるときに、風呂に入る前にとか、夕食前にとか、ちょっとパソコンを立ち上げ仕事をすることがある場合もあろう。

 この場合、労働者本人は、労働時間の申請をしない者もいるだろうし、かっきり労働時間の申請を行おうと考えている者もいるかもしれない。労働時間は、使用者の支配下にあり命令されて行うものとされているので、この「ちょこっと残業」は、本来、労働時間とはとらえられないものであろう。しかし、上司からの「黙示の命令」として捉えられることもあるので、全く労働時間として考えられないかというとそうでもない。極端な例であるが、労働者本人が本人本位に残業を行って、それを後から会社側が認めるという形になっているならば、黙示の命令による残業時間であろう。したがって、この「ちょこっと残業」については、残業代請求の火種を秘めている大きな問題である。

 では、この「ちょこっと残業」をちゃんと労働時間として、あるいは逆に労働時間ではないとして捉えるにはどうしたらいいのか。事前許可残業申請制度とその運用の適正化をすればよいと考えられるところである。就業規則に残業する場合は事前に許可を受けなければならないことを規定すること これを規定しただけではだめで、従業員がこの規定どおり許可申請を行った上で残業をしているかのチェックをしなければならないのである。人によっては残業許可申請をせずに残業するものもいるので、そういう方が見受けられるようになると、会社が残業を「黙認」しているとして「黙示の残業命令」が考えられるようになり、後から残業請求されることになりかねないのである。会社に来ているうちは、残業しているかのチェックできるが、テレワークになるとこのチェックは難しくなる。そのため、「ちょこっと残業」の問題が出てくるのである。

 事前許可制である限り、本当に必要でない「ちょこっと残業」については禁止していることになる。このことをテレワークを始める際に、従業員に伝える。また、テレワーク途中においても、メールで、テレワーク会議においても、折に触れ伝えることを忘れてはならない。また、「ちょこっと残業」を行っているようなことを見つけた場合は、すぐさま中止させて、さらに全体の従業員に再度伝えることが必要であろう。事前許可制度を採用していても、テレワークにおいては、さらなるチェックが必要となるのである。

 ただ、事前許可制度においては、全部残業を禁止しているのではなく、本当に必要な残業においては、許可を受けて残業を行うことになっているのは周知のとおりである。例えば、取引先や顧客対応のため、残業が必要になってくるだろう。そのときは、本当に緊急性の高い案件については、事前に上司の(場合により相談の上)の判断で、会社は許可を与えていくことになる。事案によっては、時間がなく事後の許可もやむをえないこともあろう。

 (※注※) この「ちょこっと」とは、意味は「少し」ということで「ちょっと」と同じであるが、違いを言えば「さらに少し」という意味であろう。

 参考 ビジネスガイド10月号・テレワークにおいて発生しがちな問題と具体的解決策(特定社会保険労務士 榊裕葵著)
    →この中で「ちょこっと労働」として使われている。
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テレワークができるIT産業の会社員は地方移住可能か<おかえりモネ・地方回帰の考察>

2021-10-03 08:56:37 | 社会保険労務士
 自分の人生を振り返り/ 東京集中の企業集積の利益!IT産業は企業集積とは
無関係か?いまこそ国等の「地方創生」支援を!


 おかえりモネで、モネが故郷の気仙沼市(亀島)に帰った際、幼なじみで微妙な関係の亮くんから「なんで帰ってきたの」「地元のために働きたいの」。そしてそれは「きれいごとだよな」と一発パンチを見舞われる。亮にとっては、震災で親が船を失い親子で今でもそこから這い上がれずにいる。モネが東京に出て人生の伴侶を見つけテレビで成功したと思っている亮にとっては、まぶしく思えたに違いない。モネにとって震災の時に島を離れ何もできなかったという経験から、地元で働くということが、人生の目的のようになっているにも関わらず、それを知ってか知らずかである。また、お坊さんの家に生まれた三生にとっても、家を継ぐかどうかは一大決心であった。このように、このストーリーでは、故郷回帰が一つのテーマとなっている。

 さて、ここでは、私の人生を含めて、故郷回帰、I・Uターンについて考えてみたい。私は現在71歳、町の中心部には歩いて1時間以上かけて出かけるという「田舎」に育った。小学校の頃、ようやく町に往復するバスの開通式があった(それでも町の中央まで30分以上かかった。) 今では大きな谷に大きな橋がかかり歩いてすぐに中央部には出かけられるのであるが。であるから、子供の頃には、農家を継ぐ長男以外は、みんな都会への就職が普通であった。故郷に帰るということは考えられなかったのである。高校のころには職業系が多くあって、教育のグレードはあがったが、親の商売・建設業等親の職業を継ぐ者以外の卒業生は、皆故郷を離れていくといった都会への人口集中は同じであった。仕事を探すならば郷土以外で探すほかはなかったのである。

 私は、普通高校を出て大学に行かせてもらったが、卒業後、地元の地元の「町」には戻らず、同じ県内で行政に携わることになった。そこでの仕事は、企業の誘致であった。当時は誘致企業は県内で100企業(年度の件数)を超えてピークであったが、ここでは仕事先が地元ではなかなか見つからない時代であったので、地元に企業を誘致して職業の機会を増やそうという「企業誘致課」を標榜し行政の意気込みがみられた。そして、確かここ20年の間にI・Uターンの動きが生まれ、行政も支援するという現象が生まれた。それでも、これらが大きなうねりとはならずに、「地方創成」という言葉も生まれたが、東京集中の動きは変わらないのである。

 なぜ、東京集中が生まれるのか。企業が集積することによって、そこに資本が集まり経済合理性に無駄がなくなり競争によってさらに合理性が生まれていくからである。さらには、ここに人が集まり、大きな所得の拡大があり、この消費が次の生産力を生んでいくという経済の循環を生む。このように企業の集積には必然性がある。ところで、集積には限界があり、土地がなくなり消費が過熱して物価があがるというようなマイナスの作用を生むというということもあるとの考えがあるが、今でもそのマイナス面は大きく作用していないようである。むしろ、東京集中よりは、地方の疲弊が大きな問題であって、限界集落と呼ばれた村が、今、人口減少により村の機能が出来なくなり消滅しているのである。東京集中は、一方で地方の機能が失われていることに注目しなければならない。 

 国で「地方創生大臣」を作り、支援策を打ち出していたが、前述の企業の集積の利益が存在する限り、なかなかうまくいくものではない。そこで現れたのがコロナである。従来も施策としてあったにあったが、政府は「テレワークを推奨した」、これにはなにか急に出てきた感がある。しかし、大企業やIT産業においては、テレワークやったら出来なくはないなという感触を得た企業もある。特にテレワークで運営することにより、事務所がなくてもOK、あるいは事務所の縮小を考えるところも出ている。ということは、テレワークになれば、地方で仕事をしてもなんの支障もない。地方の空気の良い、人口は密でなく非常に快適である。やっと地方に出ていく、人口流失の機運ができたのである。

 この時期を逸したら、また元の木阿弥である。ITが大都会で集まったのは、ITの優秀な人材が都会にあったからであるといわれている。しかし、これは、経済合理的な「企業の集積の利益」の直接的な効果によるものではなく、その結果として、人が集中しその中にIT関係に強い人材も集まった結果であって、2次的なものである。つまり、必ずしも都会にIT産業が集まる必然性はないのではないか。だが、そうはいうものの優秀な人材が集まるところには、さらに優秀な人材が寄ってくるという点ではどうしようもない。どこかでこれを抑制しなければ中央のみの集中は断ち切れない。そこで、国等においては、この時期を逃さず、テレワークができる企業に従事する者を中心とした「人口移転」の誘導政策を行っていただきたいと考える。ここで、ただテレワークと叫んでも、地方におけるネットワークやサテライトオフィスの充実と「IT教育」がなければ、動きようがない。是非ともここから支援充実を図ることを怠らないようにお願いしたい。

 かって(今から45年前)の誘致企業の多くは、繊維産業であったが今ではその隆盛は見る影もない。それを考えれば、今後はどうなるか分からない。しかし、少なくともIT産業(将来性はあると考えられるところ)という産業の内の一部でも地方に移転できれば、地方の疲弊の実態から考えあわせるに、万々歳と思うのである。予算化され地方に投資されるであろうIT関連の整備と若者の定着という2重の要素は、相乗効果により大きな活性化が図られるのではないか。
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