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プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

北朝鮮核武装化と北東アジアの安全保障 中期スパンで構える度量が必要

2007-01-06 20:00:28 | 政治経済
北朝鮮は予想されたとおり年末の六カ国協議では、核保有国になったという立場から強気に出てきた。北朝鮮以外の五カ国はもちろん北朝鮮が核保有国であるとは認めず、あくまで核廃絶を迫っていく立場である。しかし、五カ国は、内部にそれぞれの事情を抱えている。

アメリカは北朝鮮とイランが核開発で連携することを最も恐れている。北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの技術が他国に移転されないようにすることを絶対防衛線にするかわりに北朝鮮が事実上の核保有国になることには眼をつぶるというのが本音のようだ(佐藤優「混迷するアジア外交」『日本はどうなる2007』金曜日2006)。北朝鮮はアメリカとの交渉で「核技術の移転をしない」というカードを最大限活用するであろう。

中国も北朝鮮を「核クラブ」のメンバーに加えようとする意向は毛頭ない。しかし、北朝鮮が自暴自棄に陥って、国家が崩壊するようなことになれば、大量の難民が流れ込むことが予想されるため、北朝鮮の国家体制の維持を希望する面がある。中国は多数の少数民族を抱えており、そこに北朝鮮からの難民が加わることは避けたいところである。結果として北朝鮮が事実上の核保有国であることを黙認せざるをえない。

現時点で北朝鮮が崩壊してしまうならば、韓国による吸収・併合となるほかないであろうが、韓国にとっても過大な経済負担を抱え込むことになる。アメリカを後ろ盾にした韓国と直接国境を接することになる中国にとっても好ましいことではない。

ロシアは、北朝鮮の核開発は金正日による2003年時のプーチン大統領への約束への裏切りとして怒り心頭に発している。
しかし、北朝鮮がアメリカとことをかまえ、チェルノブイリ型(黒鉛減速沸騰軽水冷却型)原子力発電所が破壊されることにでもなれば、その死の灰はロシアや中国に向かって吹いてくる。ロシアとしても短期的には“弱者の恫喝”に付き合わざるをえない事情がある。

こうした各国が抱える事情を考えると、今後の六カ国協議がすべての問題を短期間に解決することはきわめて困難である。しかし、北東アジア地域の安全保障協議の場としてこの六カ国協議を足場とするほかに妙案があるわけではない。
領土問題にしても、歴史問題にしても、安全保障上の問題にしても、対立する二国間だけでは、見解を異にする個別の問題に過度に執着し、包括的で大胆な解決策を提起しにくいものである。
北東アジア諸国が抱える問題についての打開策を平和的に模索し、解決していくためには、現在行われている六カ国協議の延長線上で集団的な安全協議システムを展望し、地域全体の安全保障上の視点から問題を整理し、合意形成をめざすねばり強い努力を積み重ねるほかないであろう。北朝鮮が暴発した場合、その被害を受ける蓋然性がもっとも高いのは、日本と韓国である。短期は損気ということを忘れてはならない。

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