Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUのある病院とない病院における中間治療室入院患者の死亡率

2025年02月03日 | ICU・システム
これまた世界のOhbe等による研究。

Ohbe H, Kudo D, Kimura Y, et al.
In-hospital mortality of patients admitted to the intermediate care unit in hospitals with and without an intensive care unit: a nationwide inpatient database study.
Crit Care. 2025 Jan 20;29(1):34. PMID: 39833886.


Intermediate care units (IMCUs)に2016年から2022年の間に入室した約300万症例のうち、25%は院内にICUのない病院のIMCUに入室した。交絡因子を除外すると、ICUのない病院のIMCU入室患者の死亡率のオッズ比は1.15だった。

ICUの定義の問題で、院内にICUを作れない代わりにHCU(など)を作る。そうすると、院内にICUが必要な重症患者が発生しても、ICUのある他院に転院したりせずに自分のHCUで診療を継続する。これは十分にあり得るし、実際に日本中で起こっているに違いない。そういう環境での死亡率が高いことは、医療者の専門性や看護患者比から容易に想像できる。
ちなみに、ICUのあるHCUだとICUのスッテプダウンがメインだったり術後患者が多かったりするのかと思ったら、Table 1を見る限り、非術後患者がメインで、入院当日にHCU入室する患者の数はICUのあるHCUの方が多かった。
さらにちなみに、ドーパミンがICUのないHCUで倍以上の頻度で使われていて、ちょっと笑える

結論の"IMCUs should be placed in hospitals with ICU"には全面的に賛成。
重症患者はどんどん転院したらいいのでは。そうする仕組みというか習慣を作ることが大事だと思います。
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ICUにおける腎代替療法:保存的戦略から制限的戦略へ

2025年02月02日 | 腎臓
Chaïbi K, Dreyfuss D, Gaudry S.
Renal replacement therapy in ICU: from conservative to restrictive strategy.
Crit Care. 2025 Jan 22;29(1):40. PMID: 39838403.


提案の部分をそのままコピペ。
"Given the safety of a conservative RRT initiation strategy, we suggest extending this concept to a new approach (called restrictive RRT strategy) that could potentially solve the hot topic questions of RRT dosing and RRT weaning. This approach would consist in the suspension of RRT after 3 days. At this moment, metabolic abnormalities that mandated RRT initiation would no longer be present and the cause of AKI would be, in most cases, treated (for instance by controlling sepsis or hemorrhage). Then the question would be the same as before the initiation of the first RRT session i.e., does the situation require starting RRT or can it be delayed until a conservative RRT initiation criterion is observed again?"
「 保存的RRT開始戦略の安全性を考慮すると、我々はこの概念を新しいアプローチ(制限的RRT戦略と呼ばれる)に拡張し、RRT投与とRRT離脱という話題の問題を解決できる可能性があることを提案する。このアプローチでは、3日後にRRTを中止する。この時点で、RRT開始を義務づけた代謝異常はもはや存在せず、AKIの原因も、ほとんどの場合、(例えば、敗血症や出血のコントロールによって)治療されているはずである。つまり、RRTを開始する必要がある状況なのか、それとも保守的なRRT開始基準が再び観察されるまで延期できるのか、ということである。」

3日経つと、確かに患者さんの状態は改善していることは多いが、そうとは言えない状況も少なくないし、状態が良くなったら今度は除水を考えたくなるから、この方法が画一的に実施できるかどうかはちょっと疑問。

でも、確かに、と思う部分はある。
早期RRTにしても、早期ECMOにしても、non-renal indicationにしても、過剰な物質の除去や肺保護というメリットが、体外循環という不自然で無茶な行為によるデメリットを上回るか、が問題で、多くの研究でプラマイゼロ、有益でも有害でもないという結果になっている。それなら体外循環の時間自体を短くしたらどうですか?と言われると、ちょっと納得してしまう。

Less is moreが流行の時代。
RRTもドーズではなく時間をlessにしたらどうか、という提案は検討の価値があるのではなかろうか。
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集中治療系と麻酔科系雑誌のimpact factor 2023

2025年02月01日 | EBM関連
2011年5月から開始したこのブログ。昨年のクリスマスイブに開設5000日を達成。人気になることもなければ、かと言って完全に廃れることもなく、毎日500人の訪問と1000ページの閲覧をいただいている。何度もやめようと思ったし今も思っているが、たまーにお褒めの言葉をいただくのでなんとか継続中です。

gooブログでは過去3ヶ月の記録が見られるので、試しにどの記事がもっとも読まれているのかを調べてみた。そしたら、2位とは3倍近くの差をつけてこの記事がダントツの1位、毎日平均10人が閲覧していることが判明。そんなに需要?があるのなら、最新版の方が役に立つかと思い、毎年作っている表をコピペして、こっちにリンクを貼ることにした。

集中治療系:雑誌名にcritical careかintensive careが含まれているもの+CHEST+SHOCK
INTENSIVE CARE MEDICINE 27.1
AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRITICAL CARE MEDICINE 19.3
CHEST 9.5
CRITICAL CARE 8.8
CRITICAL CARE MEDICINE 7.7
Annals of Intensive Care 5.7
Intensive and Critical Care Nursing 4.9
Pediatric Critical Care Medicine 4
Journal of Intensive Care 3.8
Anaesthesia Critical Care & Pain Medicine 3.7
Current Opinion in Critical Care 3.5
JOURNAL OF CRITICAL CARE 3.2
Neurocritical Care 3.1
CRITICAL CARE CLINICS 3
Nursing in Critical Care 3
JOURNAL OF INTENSIVE CARE MEDICINE 3
Intensive Care Medicine Experimental 2.8
AMERICAN JOURNAL OF CRITICAL CARE 2.7
SHOCK 2.7
Australian Critical Care 2.6
SEMINARS IN RESPIRATORY AND CRITICAL CARE MEDICINE 2.3
Journal of the Intensive Care Society 2.1
Critical Care Nurse 2
AACN Advanced Critical Care 2
Critical Care Research and Practice 1.8
Acute and Critical Care 1.7
Indian Journal of Critical Care Medicine 1.5
Canadian Journal of Respiratory Critical Care and Sleep Medicine 1.5
Critical Care Nursing Clinics of North America 1.4
Critical Care and Resuscitation 1.4
Dimensions of Critical Care Nursing 1.4
Trends in Anaesthesia and Critical Care 1.4
Journal of Emergencies Trauma and Shock 1.2
ANAESTHESIA AND INTENSIVE CARE 1.1
Critical Care Nursing Quarterly 1

麻酔科系:雑誌名にanesthかanaesthが含まれているもの
ANESTHESIOLOGY 9.1
BRITISH JOURNAL OF ANAESTHESIA 9.1
ANAESTHESIA 7.5
REGIONAL ANESTHESIA AND PAIN MEDICINE 5.1
Journal of Clinical Anesthesia 5
Best Practice & Research-Clinical Anaesthesiology 4.7
ANESTHESIA AND ANALGESIA 4.6
Korean Journal of Anesthesiology 4.2
EUROPEAN JOURNAL OF ANAESTHESIOLOGY 4.2
Anaesthesia Critical Care & Pain Medicine 3.7
Canadian Journal of Anesthesia-Journal canadien d anesthesie 3.4
Minerva Anestesiologica 2.9
Indian Journal of Anaesthesia 2.9
Journal of Anesthesia 2.8
INTERNATIONAL JOURNAL OF OBSTETRIC ANESTHESIA 2.6
BMC Anesthesiology 2.3
Current Opinion in Anesthesiology 2.3
JOURNAL OF NEUROSURGICAL ANESTHESIOLOGY 2.3
JOURNAL OF CARDIOTHORACIC AND VASCULAR ANESTHESIA 2.3
PEDIATRIC ANESTHESIA 1.7
Brazilian Journal of Anesthesiology 1.7
Anesthesiology Research and Practice 1.6
Current Anesthesiology Reports 1.6
Journal of PeriAnesthesia Nursing 1.6
Anaesthesiology Intensive Therapy 1.6
Local and Regional Anesthesia 1.5
Journal of Anaesthesiology Clinical Pharmacology 1.5
Trends in Anaesthesia and Critical Care 1.4
Saudi Journal of Anaesthesia 1.3
Seminars in Cardiothoracic and Vascular Anesthesia 1.1
ANAESTHESIA AND INTENSIVE CARE 1.1
Anaesthesiologie 1.1
Annals of Cardiac Anaesthesia 1.1

7年前と比べると、impact factorが高くなっているのはもちろんだが、雑誌の数が圧倒的に増えていることがわかる。あまりに多いので、今回はIFが1以上のもののみに限定。
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せん妄の発見と治療にAIを活用

2025年01月30日 | AI・機械学習
もうすぐ1月も終わるのに、ICMの今月号がまだ出ない。新しい編集長が気張って作っているのかな。
でもonline-pubはバンバン出ていて、その中で目立つのがAI関係のeditorial。10くらいはあるのではないか?

これはそのうちの一つ。我が師Dr.Bellomoのチームから。
Young M, Kotfis K, Bellomo R.
Using AI to detect and treat delirium.
Intensive Care Med. 2025 Jan 20. Epub ahead of print. PMID: 39831998.


この文章の主旨とは少し異なるのだけど、読んでいて思ったこと。
自治さいたまでは2年前から約40項目のAIによる予測を臨床で使えるようにしていて、昨年9月からはACSYSでリアルタイムで見られるようになっている。「24時間以内のせん妄の発生」もその一つで、予測のAUROCは0.844。AIによるせん妄の予測についての研究は複数あり、どれも有望そうな結果で、このeditorialにも"... opens the door to early automated screening and intervention...”なんて書いてある。

この”有望そうな”予測が実際に臨床の場で使える状況にあるわけだけど、じゃあみんなが使っているかと、話題に登っているのを聞いたことがない。作成者側は残念に思っているかというと、そういうことはなく、どちらかといえば「この数字を人々は実際に使うのか?」を観察するために作っていて、予想通り使われていない。

使われない理由は簡単で、せん妄の予防も治療も確立したものはないから。周囲にカレンダーや時計を置いたり、メガネや補聴器を普段使っている患者さんに提供したり、そういう”当たり前”のこと以外は予防も治療もないのだから、「この患者さんはX%の確率でせん妄になりますよ」と言われても、対応のしようがないし、だから話題にも登らない。

何をアウトカムにしても、データがあれば予測するのは簡単で、精度もそこそこ出ることが多い。
でも臨床で実際に有意義な予測というのは、なかなか無い。
あるけどね。
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論文の書き方についてのいろいろな意見

2025年01月26日 | 勝手に紹介
自治さいたまICUのTEAMSで紹介された動画を見た。
僕も論文の書き方について何度か書いたけど、プロはやっぱり違うなと思った。

【必ずacceptされる医学英語論文執筆のコツ 基礎コース「初心者も安心、論文執筆の心構えと準備」】_康永秀生 2024医学英語論文執筆セミナー
【必ずacceptされる医学英語論文執筆のコツ 発展コース「なぜあなたの論文はacceptされない?」】_康永秀生 2024医学英語論文執筆セミナー

そしたら、Googleからこのページが紹介されたので、こっちも読んでみた。
初めて論文を書くあなたへ_論文執筆の際に頻回に行ったアドバイスをまとめました.私が目指す格好いい論文を書くためのtipsです.

どちらも、いかに採用される論文を書くか、を目的としているのだけど、康永先生は「Simple is best」、こちらの方は「キャッチーであること」を重要視している。僕はどちらかというと「キャッチー」派。康永先生の動画を見ていて10%くらい僕の意見とは異なる部分があって、うーん、考え直した方がいいかなーと思っていたので、ちょっと安心。

意見に違いがあるのは当然。採用される論文の絶対的ルールというものはなく、editorやreviewerが自分で判断しているから、なんとなくの原則はあっても100%同じということはない。だから投稿する側も経験することが少しずつ異なり、その結果として論文の書き方についての意見も少しずつ異なる。

でも逆を言えば90%は同じ。だから初学者は、というか自分の意見をしっかり持てるようになるまでは、先人の知恵に耳を傾けた方が絶対に得ですよ。動画を見た後に恥ずかしくなって過去の記事を消そうかと思ったけど、少しは役に立つかもと思い直した。

ということで過去ログ(新しい順)。
論文執筆は図表が全て。
Peer reviewを500回やって思うこと。
文献の書き方:データを手に入れてから原稿が出来上がるまで
IntroductionとDiscussionの書き方
論文の表の書き方
"Mom, I did it!"な研究
英語で論文を書くということ
文献執筆と食品偽装
Plagiarismとは盗用/剽窃という意味
文献を書くことは、ダンスのようだ。
文献の執筆は料理と同じ
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日本の高齢ICU患者における生命維持介入の利用と転帰

2025年01月09日 | ICU・システム
ついにJIPADデータを使った研究がICMに掲載された。

Shiotsuka J, Masuyama T, Uchino S, et al.
Utilization and outcomes of life-supporting interventions in older ICU patients in Japan: a nationwide registry study.
Intensive Care Med. 2025 Jan 7. Epub ahead of print. PMID: 39774864.


これで、自治さいたまからICMが1本、CCが2本、JIPADを使った研究を出せた。
さらには、Editorialに、
"...should be lauded for undertaking the endeavour to maintain a national registry in a large healthcare system to monitor the state of the art in intensive care."
「集中治療の最先端をモニターするために、大規模な医療システムにおいて全国的な登録を維持する努力を行ったことは賞賛されるべきである。」
って書かれて、二重の意味でルンルン。
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JIPADデータの使い方

2025年01月06日 | データベース・JIPAD
初めてJIPADデータを使って研究する人に、毎回必ず言うことがある。
まとめて書いておけば、次からは「これを読め」と言えば済むので、ここにまとめておく。

・ICUでの手技を除外
入室形式が"ICUの手技"の症例はICU患者としての研究対象には含まない方がいいので、最初に除外する。

・Type of admissionの作り方
JIPADには、入室形式、入室経路、入室区分という、ちょっと似た感じの分類が3つある。このまま研究に使用すると、Table 1もそれを使った多変量解析も変な感じになってしまう。JIPADの収集項目は基本的に僕が決めたのだけど、これは手本となった ANZICS-APDが収集していた項目だからであって、僕のせいじゃない。で、研究するときはどうすれはいいかというと、主に入室経路を用いて分類し、手術室だけは入室区分を使って予定手術と緊急手術に分ける。最終形は、
予定手術、緊急手術、病棟、救急外来、転院直入、その他
になり、いい感じ。

・敗血症は使わない、infectionを使う
主病名コードにある敗血症は他のコードに分類できない感染症が対象となる(カテ感染とかフォーカス不明とか)。なのでそのまま利用してしまうと敗血症が数%しかいなくなり、Table 1が変な感じになる。なので、敗血症は”その他”に分類し、辞書の182ページにある感染症コード表を用いて"Infection"という項目を主病名コードとは別に作成する。

・副病名コードは使用しない
話が長くなるので理由は割愛するが、副病名コードはJIPADでは使用していない。具体的には年次レポートには含まれていないし、入力チェックのためのクエリ制度や不定期チェックでも対象になってない。じゃあ何のためにあるかというと、各施設で統計情報として好きに利用してもらうため。なので研究には使用しない。

・慢性疾患の分類方法
JIPADの慢性疾患は全部で10種類あるのだが、これはAPACHE IIとIIIとSAPS IIを全て算出可能にするため。なので研究で使用するときは少し工夫が必要。
1:白血病/多発性骨髄腫とリンパ腫が分かれているので、これを"hematological malignancy"として一つにまとめる。
2:肝不全は肝硬変がYesであることが前提なので、使用しない。
3:AIDSは症例数が極端に少ないので免疫抑制にまとめる。
最終的に、心不全、呼吸不全、肝硬変、血液悪性腫瘍、癌転移、免疫抑制、維持透析、の7種類にする。

・3.0に気を付ける
JIPADでは2018年度から収集項目が増えた(JIPAD 3.0)。ただしそれらが収集されていないデータを受け付けないようにしたのは2020年度から。なので施設によって時期が異なるが、カテコラミン、HFNC、Plt、Lacは欠損したデータが一定数存在する。対応方法は、これらが重要でない場合は2015年度からの全データを用い、これらが研究のメインになる場合は欠損データを全て削除、ちょっと重要な場合はどちらかを感度分析にする。ただ、症例数が年々増加しているので、数年後には必ず除外するようにしても困らなくなるけど。

・入室時気管切開は再挿管を検討するときに利用
JIPADでは人工呼吸の開始終了日時を入力する。なので終了日時と次の開始日時を比較すれば再挿管が行われたかどうかが分かりそうだけど、気管切開されていれば再挿管にはならない。気管切開施行日があるので、これを利用すればいいのだけど、入室時から気管切開があると再挿管を判断できない。そのため、3.0から入室時気管切開Yes/Noという項目を追加した。なので3.0から再挿管について検討することが可能になっている。

・入院ー入室を使うとモデル精度が向上
これはJIPADデータに限らないが、入院してから入室するまでの日数は予後と強い関連がある。何故なら、救急外来経由の患者よりも病棟に数日入院してからICUに来る症例の方が予後が悪いし、同じ入院患者でも病棟に長期入院してからICUに来る症例は予後が悪いから。

2020年2月からJIPADの研究利用が開始された。2024年11月の段階で73の申請があり、文献化されたものはこんなにある。今後はデータが年に数十万例ずつ増えていって、どこかのタイミングでANZICSを抜くだろうから、研究価値は高まるばかり。
データは利用してなんぼだから、どんどん使ってあげてください。


タイトル:「まとめて書いておけば、次からは"これを読め"と言えば済む」 by Chat-GPT 4o
相変わらず言葉がちゃんと書けないChat先生。英語が正しく書けているところは進歩かも。
あ、それ以前にタイトルと絵が一致していない気もするな。
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急性心筋梗塞入院患者における学会発表と院内死亡率の関連

2025年01月01日 | EBM関連
あけおめです。
今年の一発目はこれにしました。理由は、面白いから。

Takada D, Kataoka Y, Morishita T, et al.
The relationship between conference presentations and in-hospital mortality in patients admitted with acute myocardial infarction: A retrospective analysis using a Japanese administrative database.
PLoS One. 2024 Dec 9;19(12):e0315217. PMID: 39652554.


DPC研究。循環器学会で発表した人がいる施設は、誰も発表していない施設に比べて、AMIに対する薬剤使用が根拠に基づいていた頻度が高く、死亡率が低かった。

研究をすると、いろいろなことが変わる。文献は読みやすくなるし、宝とゴミが混在していることも分かるようになるし、根拠に基づいた医療の重要性がより深く理解できるし、などなど。研究している人とそうではない人は、臨床の仕方も違うし、カンファなどでの発言も違う。これって、研究したことがある人なら誰でも経験することだけど、したことがない人には分からない。ただし、学会発表は研究か?という問題はある。学会発表されたもののうち実際に文献になる比率は低い。上記の変化を感じるには、学会発表ではなく国際雑誌に採用されることが必要。

この文献は学会発表をした人がいる施設かどうかで比較しているので、いよいよ”研究効果"が薄まる。でも視点が面白いし、結果は感覚と一致している。

ICUで働く若い医療従事者の方へ(医師だけではない)。
働き出して数年経って、何となく周りが見えてきたなと思ったら、研究しましょう。そうすると、見えてきたと思ったことが実は全然間違いだったことに気がつけます。
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日常的に収集されるICUデータの力を活用する

2024年12月30日 | AI・機械学習
ICMのePubでAI関係のeditorialがたくさん出ている。2025年1月号は編集長が代わって最初の号になるので、そこで特集が組まれているのかな?

Lijović L, Elbers P.
Leveraging the power of routinely collected ICU data.
Intensive Care Med. 2024 Dec 11. Epub ahead of print. PMID: 39661137.


このeditorialは、僕がいつも考えていることをそのまま文章にしてくれた感じ。特に、
"One notable challenge associated with the secondary use of routinely collected ICU data is concern over data quality, which may affect the reliability of any derived insights. This is typically referred to by the umbrella expression “garbage in, garbage out”, implying that flawed, incomplete, or low-quality input data will inevitably lead to faulty outputs, regardless of how sophisticated the data processing or analysis might be."
「日常的に収集されるICUデータの二次利用に関連する注目すべき課題の一つは、データの質に関する懸念であり、これは導き出される洞察の信頼性に影響を及ぼす可能性がある。これは一般的に 「garbage in, garbage out 」という包括的な表現で呼ばれ、欠陥のある、不完全な、あるいは低品質の入力データは、データ処理や解析がいかに精巧であろうと、必然的に欠陥のある出力につながることを意味している。」

電子カルテや部門システムが電子化されているのでデータとして利用しやすいとは言っても、その多くは人間が入力しているので、精度がデータ利用時に大きな影響を与える。とても大事なことだと思うのだけど、ICUの医療従事者はそこまで考えて入力していない。目の前の患者さんの方が重要だから、そこに関与しないことに関心を持たないのは当然と言えば当然だけど。

2023年にChatGPTが大きな話題になり、2024年はノーベル賞でAIが2つも賞を取り、来年はさらにAIが身近になる年になるでしょう。でもAIを使おうと思ってもまともなデータが無ければ使えない。気がついたらすでに遅かった、とはならないようにするには、今が大事。
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集中治療研修施設の認定が重症呼吸不全の補助療法の選択と予後に及ぼす影響

2024年12月29日 | ICU・システム
以前の同僚がfirst authorの研究。良い研究なので紹介します。

Yoshida T, Shimizu S, Fushimi K, et al.
Impact of board-certified intensive care training facilities on choice of adjunctive therapies and prognosis of severe respiratory failure: a nationwide cohort study.
J Intensive Care. 2024 Dec 19;12(1):52. PMID: 39696527.


DPC研究。2016~2019年に4日間以上の人工呼吸を必要とした患者さんを、病院が集中治療医学会認定研修施設かどうかで分けて比較。非認定施設の方がICU/HCUでの管理が少なく、鎮静・鎮痛剤の使用が少なく、シベレスタット・ドーパミンの使用が多く、死亡率が高い。

死亡率については、認定研修施設で軽症患者を長期人工呼吸していたかもしれないし、早期に死亡していたかもしれないので何とも言えない。でも治療内容の違いは明確と言っていいでしょう。いろいろなところで、集中治療の専門性についてアピールする時に使えるのでは。

他にも、認定研修施設のICUがある病院でICU/HCUの使用率が72%しかないのはどうなのかとか、Lancetの研究から20年近く経っているのにドーパミンを使う人ってどうなんだとか、いろいろ思うところがあり、面白いです。
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