Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

BlendedICUデータセットの紹介

2024年02月26日 | ICU・システム
昨年末、ダウンロードしたけど読んでいない文献が200を超えてしまい、年末年始で読むぞー、と頑張ったけど15くらい残ってしまった。この連休でその残りを読んでいたら、その中にヤバイやつがあったのに気がついた。

Oliver M, Allyn J, Carencotte R, et al.
Introducing the BlendedICU dataset, the first harmonized, international intensive care dataset.
J Biomed Inform. 2023 Oct;146:104502. PMID: 37769828.


AmsterdamUMCdb, eICU, HiRID, and MIMIC-IVをまとめて、30万例以上、158項目のデータベースを作成。しかも、4つのデータベースと同様、登録すれば誰でも利用できるようになっている。それだけじゃなくて、生データとは別に、1時間ごとに集約してmissing valueもimputationして、異常なデータを除いた、つまりはクリーニングの終了しているデータも提供されるらしい。
ただし、4つのデータベース全てに登録してデータを取得し、かつpythonのコードを自分で動かさないといけないので、ハードルはちょっと高いけれど。

Githubはこちら
頑張ってみようと思う人は是非。
利用者が増えれば作成者もバージョンアップしてくれるだろうし。


タイトル:Introducing the BlendedICU dataset, the first harmonized, international intensive care dataset
ちょっとカッコいい。でも相変わらず英語のスペルは苦手なChatさん。

ちなみに、このデータベース、ICUでよく使う113の薬剤がリストアップされているのだけど、そのうちオピオイドは、fentanyl, morphine, hydromorphone, sufentanilで、remifentanilはありません。
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SOFAの呼吸の"respiratory support"って?

2024年02月25日 | ICU・システム
めっちゃ今更なのだけど、疑問に思ってしまった。

ご存知の通り、SOFAの呼吸の3点以上には"respiratory support"が必要。でもその定義が不明確で、人工呼吸のみなのか、NPPVやHFNCも含むのか、よく分からない。どちらかの記載はあってもそこに根拠はなく、みんな勝手に決めている感じ。例えば、
Pérez-Torres D, Merino-García PA, Canas-Pérez I, et al.
Real-world inter-observer variability of the Sequential Organ Failure Assessment (SOFA) score in intensive care medicine: the time has come for an update.
Crit Care. 2023 Apr 21;27(1):160. PMID: 37085825.

6年以上の経験のある専門医がSOFAを計算したところ、呼吸のKappa値は0.42しかなく、六臓器の中で最も一致率が低かった。こんな研究が昨年発表されるくらいだから、混乱は世界中で起こっているようだ。

僕は人工呼吸のみだとずっと思っていた。なのでNPPVやHFNCも含めるという話を聞くたびに、「間違ったこと言ってるなー」と思っていた。でもつい先日、「あれ、根拠を知らないぞ!」ということに気がつき、自分に対して驚いてしまった。
仕方がない、調べるか。

当然のことながら、SOFAの原文には記載がない。でもこれ以外に”正しい定義”と呼べるものはない。ただ、当時はNPPVもHFNCもほぼ臨床で使用されていなかったので、respiratory support = mechanical ventilationだったと考えるのが妥当でしょう。
でもそれでは根拠にならないので、SOFAを作ったVincent先生が書いている文献を片っ端から確認した。その結果、見つけたのがこれ。

Vincent JL, Moreno R.
Clinical review: scoring systems in the critically ill.
Crit Care. 2010;14(2):207. PMID: 20392287.

SOFAの原文の2nd authorであるMoreno先生との共著。ちなみにこのレビューはICUにおける重症度スコア全般についての解説で、掲載された当時「めっちゃ良いから読んでね」と僕がそこらじゅうで宣伝してたやつ。
で、この中に、SOFAのrespiratoryの項目として"PaO2/FiO2 ratio, mechanical ventilation"の記載を発見!
少なくとも2010年の段階ではこのお二人は"respiratory support" = "mechanical ventilation"とお考えであったことが分かる。

ちなみにJIPADでは2018年度から入室時のSOFAを算出しているけど、respiratoryの算出は人工呼吸のみ。理由は簡単で、HFNCとNPPVはICUでの使用については収集しているけど、入室24時間の情報は人工呼吸しかないから。

とりあえず間違ったことはしてこなかったようで、一安心。
と言っても、もうすぐ発表されるであろうSOFA2.0ではこの辺の混乱も解消されることでしょう。
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21世紀になって日本で利用可能になった薬剤

2024年02月24日 | ひとりごと
のうち、これは便利・有益だと思い、実際に使っていた薬について考えてみた。
昨日のレミのように、「新しいけど別に」な薬はたくさんあるけど。

抗微生物薬(細菌、真菌、ウイルス)はいろいろある。
すごく高価で滅多に使わない薬もいくつかある。
それらを除くと、
・アミオダロンの静注薬
・アセトアミノフェンの静注薬
・デクスメデトミジン
・クエン酸(正確には昔からあるけど)



あれ?
あれれ?
全然ないぞ。しかも2つは昔からある薬剤が静注になっただけだし、一つは日本で使いやすいとは言えないし。抗痙攣薬やβブロッカーは違うし、PPIは20世紀だった気がするしH2Bでもいいし。。。
もう少し考えてみるけど、一気に増えることはなさそう。

集中治療で重要なことに、新しい薬剤を使えるようになることは含まれない。
そんな気がする昨今、皆さんはどうお過ごしでしょうか。
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レミフェンタニル

2024年02月23日 | 神経
最近、やけに耳にするようになったな、と思ったら。
ああ、そうなんですね。2022年8月に効能が追加されたんですね。
臨床やめると、こういう情報は疎くなるわ。
僕的には、「半減期が短いなどの理由で一時的に話題になり、OP室では使われているけど、ICUでは大した効果が示されず、忘れて良い薬」リストに10年以上前に入れていたので、はて?と思っていた。

手元の文献を改めて確認したけど、新しい文献が全然ない。どうして自分でこう結論づけたのかの根拠を忘れてしまった。文献を紙管理からPDF管理にしたのが2012年で、それ以前の文献は99%捨ててしまったし。

仕方ないのでPubMed。
remifentanil [ti] AND ("intensive care" OR "critical care")
で検索し、RCTでフィルタリングした結果がこれ。

思った通り、ブームは10年以上前に終了している。
さらに、ここ数年の文献のタイトルを眺めてみたけどICU関連のRCTは全然なくて、結局、ICUのremifentanilについて調べた人なら誰でも知っていそうなこのメタ解析を確認すればよい、という結論になってしまった。

Zhu Y, Wang Y, Du B, Xi X.
Could remifentanil reduce duration of mechanical ventilation in comparison with other opioids for mechanically ventilated patients? A systematic review and meta-analysis.
Crit Care. 2017 Aug 3;21(1):206. PMID: 28774327.


Remifentanilを使うと人工呼吸期間が1.5時間、ICU在室期間が2時間短くなる、と。
手元にこの文献がなかったのは、何年も前に”忘れて良い”リストに入れていた薬についての文献を久しぶりに見かけたけど、結論を見て残す価値なしと判断したんじゃないか、という気がしてきた。

大事な点は、メタ解析の対象が23研究、N=1905であること。つまり大きな研究がない。PropofolもDEXもNEJMやJAMAがあるのに。ICU界隈ではあまり興味が持たれなかった、ということを示唆するし、実際、PADIS2018にもNEJMの鎮静のレビューにも優位性については記載がない。

コストが数倍だったり、ボーラスしにくくかったり、ルートに気をつけないといけなかったり。
確認の結果、自分の中での評価は変化なし、です。
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術後合併症軽減のための周術期アルブミン補充

2024年02月22日 | 循環
おお、アルブミンのRCTが外科系のトップジャーナルに掲載されている!
今更かー!

Schaller SJ, Fuest K, Ulm B, et al.
Goal-directed Perioperative Albumin Substitution Versus Standard of Care to Reduce Postoperative Complications: A Randomized Clinical Trial (SuperAdd Trial).
Ann Surg. 2024 Mar 1;279(3):402-409. PMID: 37477023.


で、結論は、"cannot generally be recommended"。
良かった、良かった。Positiveだったらどうしようかとドキドキしながら読んじゃったよ。

それにしても、最近アルブミンをよく見かける気がする。ここ数ヶ月でも、これとかこれとか。
何かあったんかい??
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SCCM系雑誌への投稿の準備と審査におけるAIの適正使用

2024年02月21日 | AI・機械学習
Buchman TG, Tasker RC.
Fair Use of Augmented Intelligence and Artificial Intelligence in the Preparation and Review of Submissions to the Society of Critical Care Medicine Journals: Critical Care Medicine, Pediatric Critical Care Medicine, and Critical Care Explorations.
Crit Care Explor. 2024 Jan 19;6(1):e1017. PMCID: PMC10798684.


Statements
2. (途中から)For example, “Dr. Smith submitted the text to the Generative Pretrained Transformer version 4.0 (GPT-4.0) to analyze the spelling, grammar, syntax and usage of the prose and to propose edits that conform to standard scientific English.” Such reporting is always appropriately included in the Methods section of the submission.

4. Certain uses of artificial intelligence during the creation of the report are strongly discouraged. These discouraged uses include creation of prose, tables, or figures; creation of reference lists to accompany prose that is either already written or being generated by computers.

AIに文章を書いてもらったり図表を作ってもらうのはダメだけど、文章を直してもらうのはOKと。

Critical CareもOKだったし、SCCM系の雑誌もこれでOKをもらったし。もうビビらずに、どの雑誌に投稿する時も、
"ChatGPT-4.0 was used to analyze the spelling, grammar, syntax and usage of the prose and to propose edits that conform to standard scientific English.”
これをコピペしてMethodsに貼って、英文校正にお金を払うのはやめようかなと思っている。
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早期敗血症ケアにおける自動リアルタイムフィードバックの効果

2024年02月20日 | ICU・システム
Leisman DE, Deng H, Lee AH, et al.
Effect of Automated Real-Time Feedback on Early-Sepsis Care: A Pragmatic Clinical Trial.
Crit Care Med. 2024 Feb 1;52(2):210-222. Epub 2023 Dec 13. PMID: 38088767.


敗血症が疑われる患者さんに対して、敗血症バンドルに沿った検査と治療(抗菌薬開始、血液培養採取、乳酸測定、および異常値だった場合の再検)が行われなかったら、それをポケベル(!)で知らせる仕組みを作り、この仕組みで連絡するかしないかを無作為に割り付け比較。1377名が対象となり、敗血症バンドルに沿った検査が行われた頻度は21.1% vs.29.6%と有意に上昇したが、死亡率は8.3% vs. 8.4%で改善はなかった。

まず、ほぼ70%はアラートに関係なしにバンドルの対象ではなかった可能性があり、20%はアラートされなくても検査が行われた。なのでそもそも介入できる患者さんが全体の10%しかいない。これが自動アラートの限界。
人は必ず忘れるし、コンピュータは忘れない。なのでコンピュータが人の役に立つことはきっとあるはずだけど、本当に有効な仕組みを作るのは難しい。
その典型例のような研究。考えされます、ほんとに。

一つ思うのは、こういう仕組みを作る時って、抜けを減らそうとしてどうしても広くアラートしてしまう。そうするといわゆる”オオカミが来たぞー”症候群が起こり、正しくアラートされた時ですら無視されるようになってしまう。それだったら、抜けがあってもいいから、絶対に役に立つアラートだけした方が役に立つんじゃないだろうか。

実は、3年ほど前からフィリップスとこれ関係のアプリを開発中で、もうすぐ臨床応用ができそうなレベルまで来ている。コンセプトは「うるさいと思われないこと」。
さて、ユーザーに便利だと思ってもらえるか、実際に有効性が示されるか、乞うご期待。
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急性呼吸不全生存者のための移動クリティカルケア回復プログラム

2024年02月18日 | ICU・システム
Khan BA, Perkins AJ, Khan SH, et al.
Mobile Critical Care Recovery Program for Survivors of Acute Respiratory Failure: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Netw Open. 2024 Jan 2;7(1):e2353158. PMID: 38289602.


呼吸不全でICUに入室し生存退院した患者さんを、最初の半年は2週に1回、その後は月に1回訪問して、身体的および精神的な評価と介入を行なった。その結果、QOLは改善せず、ER受診と入院の確率が増え、死亡率に有意差は認められなかった。

つまりはPICSに対する介入研究、と考えていいだろうか。
結論だけ見ると有効そうじゃないけど、死亡率は10.3% vs. 16.3%でp値は0.05。実際に計算してみるとChi squareで0.0562。確かに0.05を上回っているけど、定期的に訪問すると体調や病気に対する注意が払われて、「病院行った方がいいよ」とより頻回に言われ、もろもろの結果として死亡率が低下した、と考えるとスッと理解できるので、どちらかと言えば有効性を示した研究のように思える。

最近のAJRCCMにもこんな記事が載っていて、いわゆるICUサバイバーの長期管理の重要性について述べている。PICSの関心がいよいよ高まっている感じ。

ただ、PICSのフォローやケアはICUの仕事なのか、については疑問。
ICUに来なくても長期入院でADLが低下する人はたくさんいるし、AKI後のCKD管理の重要性なども言われているし、入院による状態悪化を長期フォローする仕組みが必要で、PICSはそこに含まれれば良いのではないか。

ICUリサーチの担当は、PICSという病態を世に知らしめて、より大きな仕組みの中に組み込んでもらうところまで、な気がするのだけど、
それってちょっと無責任か??
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それにしても、いつも思うのだけど。

2024年02月17日 | ひとりごと
普段からやるべきことをやっていれば、例えば制度が変わってもバタバタする必要はないし、インシデントは起こりにくくなるし、監査で文句もつけられない。
記録関連、モニタや医療機器の使い方、搬送時、RRSなどなど。

もちろん制度変更の対応は必ず必要だし、インシデントは絶対ゼロにはならないし、監査で何も文句言われないことなんてありえない。でも、それらを減らすことはできるし、何かあるたびに振り回されるICUもあれば、比較的スムーズに対応できるICUもあるはず。いや、実際にどちらのパターンも見たことある。

ICUでは一つ一つをちゃんとやることが大事。重要そうに見えることだけじゃなくて、小さいことも。そうすると、より良い臨床が行えて、能率が上がって、患者さんにメリットがあって、結果的に自分も楽になる。「面倒だ」、「自分の仕事じゃない」、「ルールは作ったけど守られない」は、自分の首を絞めているのと同じ。

わあ、説教くさい。
もうアラカンだから仕方ないのよ。許してね。
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ICUにおける血液ガスのベストプラクティス

2024年02月15日 | ひとりごと
来年度からの診療報酬改定でSOFAがいよいよ重要になるらしい。
それに関連して、周囲でSOFAの算出とか精度とかについてちょっとざわついている。多分、日本中のたくさんのICUで多かれ少なかれ話題に出ているのではないか。

データの自動抽出については以前まとめて書いた。
部門システムからのデータの自動取り込みにおける注意点
部門システムからのデータの自動取り込みにおける注意点
「上手く取り込めないなー」と思っている方は、ご参考に。

さて。
さすがに100ヶ所もICUを訪問していると、臨床的にもデータ利用的にも、血液ガスはこうやって測定するのがベスト、というのが見えてくる。実践できている人からしたら「それがどうした?」的な話だけど、実は驚くほど行われていない。
なので、これがベスト、というのをまとめておくことにする。

・採取はベッドサイドナースが、医師のオーダーに基づくのではなく、自分で取るべきだと判断した時に行う。
・測定はICU内にある血液ガス測定装置で行う。
・測定時は、患者ID(バーコードとか)の入力だけでなく、FiO2と検体種別(動脈、静脈、胸水、髄液、その他)も入力する。
・測定結果は自動で電子カルテ・ICU部門システムに飛ばす。紙の結果はそもそも出力しない。
・結果はナースが評価し、異常があるか、ある場合は自分で対応するか医師などに相談するか、を判断する。
・医師はナースに言われなくても結果を自分で確認する(定期的に経過表や検査結果のページを自分で見る)。

ベストじゃない例:
・医師が血ガス採取の担当
・医師の指示でのみナースが血ガスを採取
・検査室に検体を送る
・FiO2や検体種別を入力しない
・表示が見にくいなどの理由で紙に印刷された結果を見る
・電子カルテや部門システムに取り込まれないので紙をスキャンしている
・異常値が放置される(医師、ナース)

僕の知る限り、ほぼ満点を取れるICUは5-10%といったところ。
あなたのところはどうですか?



「ICUにおける血液ガスのベストプラクティス」というタイトルでChatDPTに絵を描いてもらったら、わけわからんことになった。
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