Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

TIGRIS trialが年末か年始に終了しそう。

2024年10月06日 | 感染
久しぶりにSPECTRALの話題。
もう忘れている人も知らない人もたくさんいるかもしれないが、PMXのFDA承認を得るためにTIGRIS trialというのが何年も前から実施されていて、SPECTRALというのはその運営会社。僕はこの会社のウェブサイトをずーっとチェックしているのだけど、最近、ついにTIGRISの終了時期の予想が掲載された。

Spectral Medical Provides September Tigris Trial Update
・9月末の時点で132例が登録
・2024年は今の時点で51例登録
・2023年の登録症例数は31だったので、速くなっている
・150例が目標なので、あと18例。この調子で行くと、2024年末のあたりで目標到達
ですって。

過去ログを見ると、TIGRISの話が公表されたのが2017年。それがいよいよ2025年には決着しそうです。
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研究者はpeer reviewをする義務がある。

2024年10月01日 | ひとりごと
Peer reviewをすると自分のためになるよ、とかいう以前の話。

自分が投稿したときにpeer reviewしてもらっているのだから、自分もしないと、そもそもこのシステムが維持できない。
自分の論文がacceptされるまでにpeer reviewコメントを3回もらう(editor kickは含まない)、1つの投稿でpeer reviewerが3人いると仮定して単純計算すると、自分がfirst authorとして掲載された文献数の9倍はpeer reviewしないといけないことになる。

もちろん、死ぬまでにやればいいのだけどね。
でもpeer reviewすると見えてくることも多いし、早めにやって損はない。

ちなみに僕はとっくにクリアしてるっす。えっらーい。



もっと楽しそうにやればいいのに。。。
あ、「義務」という単語がそうさせているのか?
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No ventilation, no ARDS

2024年09月28日 | 呼吸
IMAGING IN INTENSIVE CARE MEDICINEに自治さいたまの報告が載りましたー。

Okamura G, Nishiyama S, Ono S, Katayama S.
No ventilation, no ARDS: insights from four-dimensional computed tomography as dynamic imaging.
Intensive Care Med. 2024 Sep 23. Epub ahead of print. PMID: 39311900.


動画が綺麗なので、ぜひ見てください。
タイトルも良い。Chat先生に考えてもらった。「こんな内容の報告をする。ちょっとキャッチーなタイトルをいくつか考えて」と聞いたらバッチリ考えてくれた。

それにしても。
少なくとも肺外ARDSにおいては、「換気されない、つまり肺が動かなければ、透過性低下は起こらない」と言われてもふーんと思う程度だけど、画像として見せられると納得してしまう。まさしく百聞は一見にしかず。
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DPC研究に思うこと、いや、思っていたこと

2024年09月27日 | ひとりごと
今朝、外部講師による医局内の勉強会があった。僕は通勤途中で、電車の中で聞いていた。まったく予測していなかったのだが、人生で一番と言っていいくらい褒められた。恥ずかしいやら嬉しいやらで、この気持ちを満員電車の中でどう処理したらいいか、すごく困った。

まあ褒められる時はそういうものだろうが、ちょっとだけ批判された。
それはこのブログの数年前の記事についてだった。日本のDPCデータを用いた研究で、僕が批判的に書いた内容に対する抗議だった。
このブログが始まって17年目になり、記事の数も2000を超えているが、日本人の研究についてはできる限りネガティブな記載をしないようにしていて、この記事は数少ない例外の一つ。書かないようにしている理由は、日本人だとこのブログを読む可能性があるので、研究者に不快に思ってほしくないから。どうして例外が起こったかはもう5年前のことなので覚えていないのだが、多分、以前から思っていたDPC研究に対する不満が、自分の関心の強い話題だったので漏れてしまったのではないかと想像する。

非常に申し訳ない。

書き方が悪かった、というか足りなかったので、その時の思いを(想像しながら)書いてみる。
一時期、2010年代かな、日本の集中治療の世界でずっと議論になっている治療方法について、片っ端からDPCを使った研究がメジャー雑誌に発表されていた。ご存知の通り、DPCは集中治療における介入についての研究を目的としたデータベースではなく、患者背景(特に重症度、検査結果)に限界がある。それはどんな最先端の統計学的技術を使ってもカバーできるものではなく、その限界の中で示された治療法Xのオッズ比がいくつで有意差がある(ない)から結論はこうだ、と言われても、いやー限界あるでしょ、重要な背景因子を一つ追加したら容易に結果は変わるでしょ、という感想しか持つことができない。そういう明確な限界のある研究が、データを利用できる一部の人により、多分Nの大きさが最大の理由でメジャー雑誌にたくさん掲載される状況が不満だったのだと思う。

もちろんDPC研究が全部ダメとは全然思っていない。例えばこれなどは、急性疾患に対して行われた人工呼吸のうちICUで開始された割合が40%しかないという、もうDPCを使わなきゃ絶対にわからないだろという情報を提供してくれて、かつ病棟での人工呼吸管理が予後の悪さに関連しているというメッセージまでついていて、素晴らしいとしか言いようがない。
介入研究も、明確な限界はあるものの、エビデンスというのは一つ一つの研究が積み重なって構築されるものなので、無駄な研究というものはない。ただ、「ちょっとズルくね?」とは思うけど。最近は集中治療におけるDPC研究もひと段落した印象があり、そう思うことも少なくなったので、今日改めて以前の記事を読んで、「なんでこんなこと書いたんだろ?」と反省しきり。

タイトル:「反省しているセミリタイアした元集中治療医」 by ChatGPT-4o
実物と比べてちょっとカッコよさが足りないが。
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IRADの25年にわたる観察と心臓血管学への影響

2024年09月22日 | データベース・JIPAD
IRADとは、 International Registry of Acute Aortic Dissectionのこと。

Trimarchi S, Mandigers TJ, Bissacco D, et al.
Twenty-five years of observations from the International Registry of Acute Aortic Dissection (IRAD) and its impact on the cardiovascular scientific community.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2023 Jul 13. Epub ahead of print. PMID: 37453718.


IRDのデータベースを利用した研究は97あり、各国の19のガイドラインに69研究が参照されていた、と。
結論:「RADは、急性大動脈解離患者の予後を改善するために、観察、信頼できる知識、研究課題を提供する重要な役割を担ってきたし、現在も担っている。」

つい先日、僕がいた部屋の外から、「JIPADなんて全然興味ない、だって病院が得するだけでしょ?」という会話が聞こえてきた。全然イラっとしたりはせず、こういう人にどうやってデータベースの意義を理解してもらったらいいのだろう、と冷静に考え出した自分に少し驚いた。

毎年、今くらいの時期に集中治療医学会から認定施設向けに調査が行われる。そのうち20項目くらいは患者情報(症例数、治療内容、重症度スコアなど)を提供しないといけない。今年も先週、部長から依頼されたのだけど、JIPADのアプリにはこれを一気に示す機能がついていて、数クリックで数字が全部出る。1分もかからない。JIPADに参加していなくて自前でデータベースを作っていない施設ではそれなりに手間をかけているのだろうと想像すると、簡便さにちょっと笑ってしまった。

JIPADのデータを用いた研究は、すでにこれだけ発表されている。これ以外にも40以上の研究が進行中。参加施設は基本的に自由にデータを利用できる(直近で約30万例)。

自分の施設で研究をやろうと思った時でも、JIPADがあると患者背景や治療内容や重症度スコアや予後は収集する必要がない。部門システムからデータを出力して加工したら、JIPADと合わせれば簡単に数千例のデータを使った研究になる。

自治さいたまでやっている、ICU患者のデータベース作成とそれを使った予後予測を自治本院でも導入しようとしているのだけど、本院はまだJIPADが本格稼働していないので、部門システムから抽出される情報だけだとどうしても限界がある。例えば患者情報が乏しい。病名とか既往歴とか入室経路とか。人がこれらの情報なしに部門システムの経過表を見ても病態は理解できないことから容易に予測される通り、AIによる予測も当然限界がある。

これだけじゃ足りないかなー。
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ICUにおけるレベチラセタムの投与経路による環境的影響

2024年09月20日 | ICU・システム
ICMで最近よく見かけるGreen ICU系の研究。

Santander S, Le Guennec L, de Maisoncelle I, et al.
Comparison of environmental, economic and professional impacts of levetiracetam according to its administration route in intensive care unit.
Intensive Care Med. 2024 Sep 2. Epub ahead of print. PMID: 39222138.


ある神経ICUで、レベチラセタムの静注を内服に変更したら、年間1400kgのCO2排出を減らせると試算された、と。

地球温暖化まで話を広げなくても、内服で済む薬は内服で投与すれば、コストも仕事量も減る。
確かにレベチラはつい静注で継続しがちかも?
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重症救急患者の敗血症予測における医師の早期の直感とスクリーニング・ツールとの比較

2024年09月19日 | 感染
旧twitterで、医者の直感が機械学習に勝った、的な感じで紹介されていたので、読んでみた。

Knack SKS, Scott N, Driver BE, et al.
Early Physician Gestalt Versus Usual Screening Tools for the Prediction of Sepsis in Critically Ill Emergency Patients.
Ann Emerg Med. 2024 Sep;84(3):246-258. PMID: 38530675.


ちょっと違った。
まず機械学習といってもLASSOを使った多変量解析で、決定木系やニューラルネットワークといった「機械学習と言えばこれ」的なモデルではなかった。そもそもタイトルに”スクリーニングツールとの比較”と書いてあり、主に比較対象となっているのはqSOFAやMEWSなど、いかにも比較されそうなスコア。

ちなみに何をしているかというと、救急外来の重症対応の部屋(救命センターの初療室的な?)で治療を受けた2484例に対し、来院15分および60分の時点で、最終的(退院時)に敗血症であったと診断されるかを医師に予測(VASで0~100)させ、それを多変量解析や各スコアの予測精度と比較した。その結果、例えば来院15分でのAUROCは、医師:0.90、多変量解析:0.84、qSOFA:0.67、SIRS:0.67、SOFA:0.67、MEWS:0.66だった。
この手のスコアの敗血症の予測精度が低いことは、それこそqSOFAが発表されてすぐに示されているので、当然の結果。この研究が評価されるべきは医師の直感、というよりは限られた情報を用いた診断が、結構高い精度であることを示した点。スコアを使って診療するのはちょっと無理があるよね、という妥当な結論が導かれている。

多変量解析が人間に負けた理由について。
文献を読むと15分及び60分の時点でどんな情報が利用可能かが分かる。例えば血液検査などは15分ではほとんど判明していないので多変量解析にとっては情報が少なすぎる感じがするけど、60分の時点でも0.93 vs. 0.87と負けている。
ではなぜ負けたかというと、理由は明白に思える。多変量解析が利用している情報は、性別・年齢・バイタル・血液検査・簡単な身体所見(腹部が硬いかどうか、皮膚に潰瘍があるかどうか、その他の皮膚所見)程度。でも人間はこれらに加えて、救急隊(や患者家族)からの情報、詳細な身体所見、エコー所見(15分以内にほとんどの症例で実施)を利用している(はず、普通に考えて)。どちらかと言えば、これらの情報なしに0.06しかAUROCが下がらない多変量解析が偉いのではないかと思えてしまう。多くの場合で決定木系は多変量解析を凌ぐことを考えると、いよいよ人間の優位性には疑問が出てくる。

来院15分の時点で、伝聞や身体所見やエコー所見を電子的に利用できる仕組みができたら、きっと機械が勝つ。
言い方を変えれば、そういう技術(自動口頭筆記、正確な要約など)の開発と普及の重要性が示された研究、という風に僕には思えました。


以前、旧twitterで出回っていた画像。
説明は不要でしょう。
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AIモデルは医療従事者に対して説明可能であるべきか?

2024年09月17日 | AI・機械学習
4日連続の予定だったが、良い感じのやつがCCに出たので5日連続で。

Abgrall G, Holder AL, Chelly Dagdia Z, et al.
Should AI models be explainable to clinicians?
Crit Care. 2024 Sep 12;28(1):301. PMID: 39267172.


Models should be explainable for clinicians: yes!
Models should be explainable for clinicians: no!
と、自分でPro/Conをしている。結論を要約すると、
「AIの説明可能性は重要だが、対象に応じた説明は難しいし、説明可能性だけではAIの効果的な適用は保証されない。」

僕はICUでのAI予測には基本的に説明可能性は不要と考えている。詳細はここでそれなりに詳しく話したので割愛。簡単に言うと、「説明変数が多すぎて説明にならない」が理由。

説明可能性の是非よりも、この文献に出てくる表が大事。
Table 1 Top 10 must-knows for clinicians using AI models
1. Objective & Scope
2. Model insights
3. Data source
4. Evaluation & Validation
5. Model limitations
6. Clinical integration
7. Ethical considerations
8. Regulatory aspects
9. Maintenance & Audit
10. Feedback & Reporting

つまりAIを提供する側はユーザーに対してこれだけのことを情報提供しないといけない、ということ。こういうのを見ても、「モデル作った、すごいでしょ」じゃダメ、ということが分かる。

つい先日、自治さいたまでやっている予測について、10をやった。今は9、つまりモデルのアップデートをしている。
やること一杯、夢一杯(かどうかは微妙)。

「AIモデルは医療従事者に対して説明可能であるべきか?」をタイトルとした、かわいいイラストを描いて。
とChatGPT4oに依頼した結果。
なんか違うぞ。そして"clinicians"のスペルが間違ってるぞ。
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機械学習による菌血症予測に対するICU専門医の信頼性

2024年09月16日 | AI・機械学習
普通の医学論文とは書き方も内容も異なるので読みにくいが、やっていることは面白そう。
ただ、内容を読み間違えている可能性があり、自信がないので、自分の理解の範囲内で感想を。

Katzburg O, Roimi M, Frenkel A, et al.
The Impact of Information Relevancy and Interactivity on Intensivists' Trust in a Machine Learning-Based Bacteremia Prediction System: Simulation Study.
JMIR Hum Factors. 2024 Aug 1; PMID: 39092520.


47人の集中治療医に架空の3症例を提示し、菌血症かどうかを予測させた。
どの症例も10の臨床情報と、AIによる予測を示した。ただし、
・1例は臨床的に意味がありそうな10項目(体温、呼吸数、乳酸血など)を自動で提示、項目を選ぶと過去24時間の情報も見られる機能付き
・1例は臨床的に上記と同じ10項をカルテから手入力させた(過去の情報は無し)
・1例は実際にAIが予測に利用している10項目(PF比の75パーセンタイル値、過去3日間の平均血圧、入院からの日数など)を自動で提示、過去24時間の情報も見られる機能付き

そして実験終了後、どれくらいAIの意見が信頼できるかについてアンケートを行った。その結果、どの症例でもAIの予測と医師の予測の一致率に違いはなかったが、
・提示された情報に意義があると感じた人ほどAIへの信頼は高かった
・インタラクティブに操作できたと感じた人ほどAIへの信頼は高かった

この結果から考察されること(少し理解が怪しいかも):
・実際の情報や機能より、それをユーザーがどう感じたかの方がAIの信頼性と関連がある
・「えー、こんな項目でAIって予測してるんだー」と思われてしまうとAIへの信頼性は下がる
・自動でデータが抽出され、かつそのデータを自分で操作できると、AIへの信頼性は高まる

ザクっとまとめると(いよいよ怪しいかも):
・ユーザーが喜ぶ情報提示方法が大事
・いわゆる”説明可能AI”が信頼性を高めるとは限らない

どちらも、納得の行く結果。
AIが完全に人間を圧倒し、医療がAI中心で行われる世の中になるまでは(21世紀中にはそんな時代が来るかも)、AIはあくまで意思決定の補佐。そして補佐するためには信頼が必要で、信頼は正しい予測さえしていれば得られるわけではない。

この辺、日々実感しています。

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ICU入室時点で気管切開の必要性を予測する

2024年09月15日 | AI・機械学習
Nguyen M, Amanian A, Wei M, et al.
Predicting Tracheostomy Need on Admission to the Intensive Care Unit-A Multicenter Machine Learning Analysis.
Otolaryngol Head Neck Surg. 2024 Jul 30. Epub ahead of print. PMID: 39077854.


気管切開を行うかどうかの判断は、ご存知の通り結構難しい。
それを入室時点で予測できたらスゴイじゃん?臨床でも便利じゃん?無駄な人工呼吸が減って、合併症も減って、患者さんにとってもグッドじゃん?
と思いたい、よね。

自治さいたまでは、昨年春からこんな感じでAIによる予測を提供している。最近はこれ以外にも複数の介入や合併症の確率も提供していて、内容的には結構盛りだくさん。しかも、これまでは平日の朝に1回、予測結果をPDFにしたものをTEAMSで共有していたのだけど、先月末から部門システムに組み込まれ、今は毎時アップデートされる予測が誰でも簡単に見られるようになった。
「退室時に気管切開が行われている確率」も、全患者で毎時予測している。AUROCは0.933、キャリブレーションもいい感じでy=xの直線上にだいたい乗っている。人間がICU全ての患者さんの気切確率を1時間毎にこの精度で予測するのは相当難しいと思うし、それが仕事中にワンクリックで見られるのだから、スゴイでしょ?
だからみんな便利に使ってくれている。
と思いたい、けど。

でも実際はそうじゃない。ちょっと考えてみよう。
キャリブレーションが正確ということは、気切確率30%の患者さんは30%の確率で気切され、70%の患者さんは70%の確率で気切される。
さて、人工呼吸開始数日の段階で、この患者さんの気切確率は70%と言われたら、どう考えるだろうか。いつも通り2~3週待つのは無駄だから早期に気切しようと判断するだろうか。多くの人はそうは考えないのではないか。確率70%ということは気切せずにICUを退室できる可能性が30%あるということで、予測に基づいて早期に気切してしまうと結構高い確率で不要な気切をすることになる。気管切開は、手技そのものにリスクがあるし、抜去するのはなかなか勇気がいるし、その判断を病棟医に依頼するのは気が引けるし、病棟で気切チューブ閉塞で心停止というのも一定の確率で起こるし、全部が上手くいったとしても首に傷が残る。早期判断はいろいろな意味で難しい。
逆のパターンも同様。長期挿管になっても気切確率があまり高くないときに、では気切せずに抜管を目指そうというのはどこかで限界が来る。

気切するかしないかで意見が分かれたり、判断が難しいなーと思っている時に、第三者的な意見として参考になる可能性はあるし、実際にそういう風に使われることもある。でもそれは比較的珍しいケースで、多くはあまり臨床に利用されていない印象を持っている。実際、カンファで「気切確率がX%だからこうしよう」という会話はまず聞いたことがない。

何を予測するにしても、多かれ少なかれ同様の問題というか限界がある。気管切開はその典型例で、治療介入や抜管挿管や退室よりも判断が患者さんに与える影響が大きい。
なのに、この文献のconclusionに、
"the potential to institute earlier interventions and reduce the complications of prolonged ventilation"と書いてあって、「いやー、そんな簡単じゃないだろ」と思ったのが、紹介することにした理由。

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