Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関係の面白そうな文献を紹介していきたいと思います。ただし、紹介するだけなので、興味を持ったら読んでね!

EOLIA時代のECMO

2020年10月30日 | 呼吸
EOLIAをご存知ない方へ。これです。
あ、間違えた、これです。

MacLaren G, Combes A, Brodie D.
Saying no until the moment is right: initiating ECMO in the EOLIA era.
Intensive Care Med. 2020 Oct;46(10):1894-1896. PMID: 32737521.


最後の文章をコピペ。
It may be tempting to deploy ECMO without having first tried other approaches to management, but this temptation should be resisted. Less is more. Start with the basics such as prone positioning and avoiding harmful mechanical ventilation before considering an expensive, complex and high-risk therapy such as ECMO.
ついでにDeepLで和訳。
「 最初に他の管理方法を試したことがなくてもECMOを展開したくなるかもしれませんが、この誘惑には抵抗するべきです。少ない方が良いのです。ECMOのような高価で複雑でリスクの高い治療法を検討する前に、腹臥位でのポジショニングや有害な機械的換気の回避などの基本的なことから始めましょう。」

まったく同感。
その逆に、これはまったく同感できない。

Combes A, Peek GJ, Hajage D, et al.
ECMO for severe ARDS: systematic review and individual patient data meta-analysis.
Intensive Care Med. 2020 Oct 6:1–10. PMID: 33021684.


CEASERとEOLIAを足し合わせたメタ解析。90日死亡率が有意にECMO群で高い。

これ、ダメでしょ。
もうやる前から、研究が2つしかないことも、結果が有意になることも分かっている。

じゃあ、どうするか。
目の前の患者さんにECMOをするのかしないのか。
この話は答えがないけど、
・やり過ぎもやらな過ぎもダメだということと、
・ここ最近はECMOをすることがステータス的な感じもあるので、やり過ぎに振れやすいこと、
この二つは言っていいと思う。
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クエン酸 vs. ヘパリン

2020年10月29日 | 腎臓
Zarbock A, Küllmar M, Kindgen-Milles D, et al.; RICH Investigators and the Sepnet Trial Group.
Effect of Regional Citrate Anticoagulation vs Systemic Heparin Anticoagulation During Continuous Kidney Replacement Therapy on Dialysis Filter Life Span and Mortality Among Critically Ill Patients With Acute Kidney Injury: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2020 Oct 27;324(16):1629-1639. PMID: 33095849.


CRRTの抗凝固剤としてクエン酸を使うかヘパリンを使うかでRCT、N=638。クエン酸は膜寿命が長く、出血が少なく、死亡率は同じかちょっと低い。
今まで言われてきたことが多施設RCTで改めて示された。

慈恵では10年くらい前からクエン酸でCRRTしているし、今や世界標準だけど、あまり日本では広まらない。
最大の理由は当然のことながらナファモスタットがあるからで、その比較はやらないといけないとずっと思いながら、ついに引退してしまった。
誰かやってくれないだろうか。

ちなみに、タイトルに”Continuous Kidney Replacement Therapy”とあるのは、KGIDOが一般人に分かりやすいように"renal"とか"nephro"とか使うのをやめて”kidney”にしようと言ったためらしい。確かにAKIもCKDもkidneyだ。
PubMedで調べてみると、9月以降に掲載された文献のうち、"CKRT”を使っているのが9個、"CRRT"を使っているのが72個で、さすがにCRRTの方がまだメジャーだった。
さて、世間はどっちに向かうだろうか。慣れているのでまだCRRTと言いたいけど、風向きが変わったらサラっとCKRTに変えよっと。

クエン酸についての過去ログまとめ。
JCCにクエン酸の研究が二つ。
慈恵ICU勉強会 180605
慈恵ICU勉強会 180306
AN69STとクエン酸
慈恵ICU勉強会 160802 160809
クエン酸CRRT中の透析膜後のCa濃度
クエン酸と持続腎代替療法

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心肺蘇生ガイドライン2020

2020年10月24日 | 循環
そうか、今年は5の倍数の年だった。

2020 International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science With Treatment Recommendations

2020 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care

ILCORのexecutive summaryだけ眺めた。体温管理アドレナリンの記載がどうなっているかな、と思って。
そしたら、体温は、
However, the ALS Task Force chose to delay updating this SysRev until the completion and publication of the TTM-2 (Targeted Hypothermia Versus Targeted Normothermia After Out-of-Hospital Cardiac Arrest) RCT (NCT02908308).
アドレナリンは、
The ALS Task Force recommends giving epinephrine as soon as feasible in cardiac arrest with nonshockable rhythms unless there is a clearly reversible cause that can be addressed rapidly.
ですって。
体温は、TTM-2のリクルートはこの7月で終わっているようだ。結果はもう発表されたのかな。知らない。
アドレナリンは、さすがに「神経予後を改善しないから推奨しない」とはならないわな。

昔のことを思い出した。
2005年、オーストラリアから帰ってきて3年目、まだギラギラしていたころ。休みの日に、出たばかりのILCOR2005の全文を読んだ。朝から始めて、読み終わったのは夕方。部屋の中が夕焼けで赤く染まっていた。そしたら、その2週間後に今度はAHA2005が出て(以前は別々に発表されていた)、さすがに読めず、どっちかだけ読むならAHAだったかなー、とちょっと後悔した。
そんな37歳の秋のこと。あのエネルギーは何だったんだろうなー、という思い出。
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COVIDにトシリズマブ

2020年10月23日 | COVID-19
3日前のJAMA Internal Medicineに研究がまとめて3つonline pubされた。

Salvarani C, Dolci G, Massari M, et al.; RCT-TCZ-COVID-19 Study Group.
Effect of Tocilizumab vs Standard Care on Clinical Worsening in Patients Hospitalized With COVID-19 Pneumonia: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2020 Oct 20. Epub ahead of print. PMID: 33080005.


Hermine O, Mariette X, Tharaux PL, et al.; CORIMUNO-19 Collaborative Group.
Effect of Tocilizumab vs Usual Care in Adults Hospitalized With COVID-19 and Moderate or Severe Pneumonia: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Intern Med. 2020 Oct 20. Epub ahead of print. PMID: 33080017.


Gupta S, Wang W, Hayek SS, et al.; STOP-COVID Investigators.
Association Between Early Treatment With Tocilizumab and Mortality Among Critically Ill Patients With COVID-19.
JAMA Intern Med. 2020 Oct 20. Epub ahead of print. PMID: 33080002.


どれもdefinitiveなものではないので、結果はアブストラクトを読んでいただくとして。
それよりも、これらの文献をまとめたeditorial。

Parr JB.
Time to Reassess Tocilizumab's Role in COVID-19 Pneumonia.
JAMA Intern Med. 2020 Oct 20. Epub ahead of print. PMID: 33079980.


こっちの方がeducationalな意味では読む価値があると思う。
たった3ページの文章だけど、COVIDに対するトシリズマブのエビデンスのまとめと現在の立ち位置がわかるだけでなく、RCTと観察研究とか、サンプルサイズとか、early terminationとか、それをひっくるめてどう対応するべきとか、ちょうどいいEBMのまとめになっているから。

特に初学者は読む価値あり。
例があった方がわかりやすいもんね、こういう話は。








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COVIDの死亡リスクと赤血球分布幅

2020年10月22日 | COVID-19
Foy BH, Carlson JCT, Reinertsen E, et al.
Association of Red Blood Cell Distribution Width With Mortality Risk in Hospitalized Adults With SARS-CoV-2 Infection.
JAMA Netw Open. 2020 Sep 1;3(9):e2022058. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.22058. PMID: 32965501.


ボストンの4病院、1641例。RDWのカットオフを14.5%とすると、死亡のrelative riskは2.73。年齢、D-dimer、リンパ球数などで補正してもRDWは有意に死亡に関連した、と。

RDWって、病院によっては血算をオーダーしたら勝手に含まれてくる項目。
あまり臨床では気にしていなかったけど、そっかー、COVIDの予後予測に使えるんだー。

と思った方へ。
間違いではないのだけど、ちょっとここまで来ると違和感がある。
RDWって、COVIDに関係なく、ICU患者の予後に関連することが複数報告されている。
red cell distribution width [ti] intensive care
ってPubMedに入れたら、55文献出てきた。

COVIDの予後に関連する検査項目って、上記のD-dimerとかリンパ球とか、さらには血小板数とかLDHとかCrとかいろいろ言われているけど、これら全部、ICU患者全般の予後に関連がある。COVIDで、とか言っているけど、単にICUで予後に関連しうる項目を一つの重症病態について調べただけではないかい?

こんなことを書いていた3月頃に読んでいたら「へー」と思ったかもしれないけど。
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東京都の発症年齢の分布:42週

2020年10月19日 | COVID-19


新規患者数、年齢分布、重症患者数すべて横ばい。定常状態に達したということか?
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よく読まれている記事ベストテン

2020年10月11日 | ひとりごと
人気ブログでよくあるやつ。
一度やりたいと思っていたので、人気ブログじゃないけどやってみた。日曜日だし。

先月1ヶ月でアクセスが多かった記事。ただしトップページとかは除く。

1位:WBCとCRPについて思うこと 1503PV
なんとこれが全部で1641件の記事のトップ。もう7年以上前に書いたもの。
それだけググる人が多いということか。
最近はここまで極端なことを言う人には会わなくなった。そしてCRPが有益だとする文献の数は増えた。

2位:観血的 vs. 非観血的血圧測定 1191PV
これなんか、もう9年前。
この話題はこの後も何度か書いてるはずなのに、一番古いのがランクインしている。
過去ログのまとめはこちら

3位:血糖値の単位の換算 1137PV
へー。これが3位かい。みんな困ってるのかな。単純計算で1日40人近くがここで調べてる。

4位:COVID-19にステロイド 984PV
これは先月。きっと数ヶ月後に同じことをしたら消えているはず。

5位:無駄なアラームを減らす方法3 717PV
不思議。1から4まであるのに、どうして3だけ?
過去ログもよろしければどうぞ(124

6位:ハイポなんて言葉、この世からなくなればいいのに。 712P
自分で書いたものでは、これは相当好きなやつ。ランクインしていて嬉しい。

7位:肩書きが一つ増えました。 621PV
これも先月。
週1で通っております。

8位:集中治療系と麻酔科系雑誌のimpact factor 603PV
これはもう古いね。でも麻酔科のはこの年しか書いてないかも。
最新の集中治療版はこちら

9位:筋弛緩薬は筋力低下を引き起こすか 560P
へー。不思議。
最後の歌が良かったか??

10位:下大静脈の呼吸性変動と補液の反応 549P
これも古い。
過去ログのまとめはこちら

セミリタイアして3ヶ月。
とりあえずまだ文献チェックの趣味は続いているので、このブログもしばらく続ける予定です。
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ノルアドの免疫応答への影響

2020年10月10日 | 感染
Stolk RF, van der Pasch E, Naumann F, et al.
Norepinephrine Dysregulates the Immune Response and Compromises Host Defense during Sepsis.
Am J Respir Crit Care Med. 2020 Sep 15;202(6):830-842. PMID: 32520577.


・In-vtroで白血球のノルアドとバソプレシンの存在下での反応性
・マウスの敗血症性ショックモデルを作り、ノルアドとバソプレシンの持続静注によるサイトカイン産生量
・健康なボランティアにノルアドとバソプレシンを5時間持続静注してエンドトキシンを投与
・敗血症性ショック患者におけるノルアドおよびβブロッカーの投与と血中サイトカイン濃度の関連
を調べた。
全ての検討で、ノルアドはproinflammatory mediatorsを減らし、antiinflammatory mediatorsを増やした。バソプレシンにはそのような効果は認められなかった。

すごい前から言われている話だけど、ここまで徹底的にやった文献は珍しいのではないか。それがAJRCCMの理由か。
問題は、それが臨床にどう影響するかで、少なくともノルアドとバソプレシンの比較研究でバソプレシンが勝ったとは言えない。

ただ、長期にノルアド依存の患者さんとか、どうなんだろう?とふと思った。
ふと思っただけで、そういう患者さんはバソプレシン単剤にしよう、とは言っていない。
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術中の麻酔科医の交代と患者予後

2020年10月09日 | ICU・システム
Boet S, Djokhdem H, Leir SA, et al.
Association of intraoperative anaesthesia handovers with patient morbidity and mortality: a systematic review and meta-analysis.
Br J Anaesth. 2020 Oct;125(4):605-613. PMID: 32682560.


8研究のメタ解析。そのうち7の研究では麻酔科医の術中の交代と患者への悪影響に関係があることを示した。
メタ解析の結果、有害事象の発生頻度は40%増加した。

これは術中の話だけど、ICUでも医療者の交代と申し送りは頻繁に行われている。
24/7で働くことは不可能なので当然交代はするけれど、申し送りの回数はシステムによって異なる。
ナースの3交代制と2交代制とか、医者の夜勤体制と当直体制とか。

さてさて。
医療者の幸福と患者の幸福を天秤にかけているとしたら、どうする?

P.S.
患者の幸福の方が大事だ!
と真剣に思った方へ。
Burn Outにお気をつけください。誰かみたいにならないように。
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COVIDが女性による論文投稿に与えた影響

2020年10月08日 | その他
Kibbe MR.
Consequences of the COVID-19 Pandemic on Manuscript Submissions by Women.
JAMA Surg. 2020 Aug 4. PMID: 32749449.


託児所や学校が閉鎖されて、子供の面倒を見ないといけなくなったため、 arXiv.orgおよびbioRxiv.orgに投稿された文献のうち、女性が著者リストの最初か最後に記載されていた割合が男性よりも5%減った。
そういう報告があったので、JAMA surgeryでも調べてみたところ、やはり同様の結果だったと。

集中治療とは関係ないが。
影響がこんなところにも、と驚いた。
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