Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

献本御礼:RStudioではじめる医療統計 第2版

2024年08月28日 | COVID-19
り、リンクが貼れない。理由不明。新しすぎるからか??

これは古いやつ、第2版が出たので、献本をいただきました。

最近臨床研究を始めた同僚にプレゼントしました。
以下がその感想文。

ーーーーーーーーーー
この本では序文の通り医療従事者が学会発表や論文作成を行う際に必要となるRStudioの使い方が精選されて解説されている。初心者がRで統計解析をしようと思って検索しても、山のように情報が出てくるもののまず何をしたらよいかが分からず、結局何もできなくなってしまう。しかしこの本では「まず何をするか」が具体的に解説されているので初心者でも先に進めるようになる点が秀逸。ただ前提となる統計知識は必要でそこは他書で補う必要がある。
ーーーーーーーーーー

ここで宣伝するまでもなく、メッッチャ売れているらしい。
繰り返しになりますが、リンク、間違えないでね。

お詫びに、他の本のリンクも貼っときまーす。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JIPADと集中治療室管理料の関係

2024年08月17日 | データベース・JIPAD
時々質問されるのですが、その度に調べるので、ここでまとめておきます。

まず、特定集中治療室管理料の基本はこちら。ここの注1に、
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者であって、急性血液浄化(腹膜透析を除く。)又は体外式心肺補助(ECMO)を必要とするものにあっては25日、臓器移植を行っ たものにあっては30日)を限度として、それぞれ所定点数を算定する。」
の記載があります。

で、「別に厚生労働大臣が定める施設基準」というのがこちら
第2 特定集中治療室管理料の、
7 特定集中治療室管理料の「注1」に掲げる算定上限日数に係る施設基準の、
(2) 当該治療室に入院する患者について、関連学会と連携の上、適切な管理等を行っていること。

で、「関連学会と連携の上」というのがこちら
問94:「関連学会と連携」とは、具体的にはどのようなことを指すのか。
(答)日本集中治療医学会のデータベースであるJIPAD(Japanese Intensive care Patient Database)に症例を登録し、治療方針の決定及び集中治療管理を行っていることを指す。

で、「JIPADに症例を登録」の定義がこちら
1. 直近の年次レポートにデータが利用され、施設名が掲載された施設
2. さらに直近6ヶ月の間にデータをアップロードし、、、JIPADワーキンググループが2ヶ月毎に評価し、今後の年次レポートに使用可能な症例数が概ね200症例を超えて登録

ぜいぜい。
バラバラのところに書いてあるから、加算って分かりにくい。。。
でもこれからは「これを読め」で済むぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人工呼吸を必要とする患者のICU入室における病院と地域差

2024年08月14日 | ICU・システム
世界のOhbe等による研究。

Ohbe H, Shime N, Yamana H, et al.
Hospital and regional variations in intensive care unit admission for patients with invasive mechanical ventilation.
J Intensive Care. 2024 Jun 5;12(1):21. PMID: 38840225.


結果よりも、そもそも人工呼吸の開始がICUでなされた症例の割合が40%であることに愕然。データは2018-2019年で、COVIDで集中治療の存在感が増したとは言え、現状でこの数字が大きく変わっているとは思えない。

2003年に日本に帰国したとき、集中治療医の職が見つからず、救命センターに勤務した。
あれから20年。JSEPTICのメーリスは集中治療医の勧誘で溢れているし、医師転職サイトを見れば集中治療医の募集がすぐに見つかる。ずいぶん変わったものだと思うけど、臨床はまだまだこの程度。

病棟で急性病態に対して人工呼吸器を使用することがいかに普通じゃないか。それに日本が気がつくのはいつの日か。
次の20年に期待したい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公共におけるマスク着用が呼吸器症状の自己報告に及ぼす効果

2024年08月13日 | COVID-19
集中治療とは違いますが、以前マスクについては何度か書いたのと、ちょっと気になったのとで、紹介。

Solberg RB, Fretheim A, Elgersma IH, et al.
Personal protective effect of wearing surgical face masks in public spaces on self-reported respiratory symptoms in adults: pragmatic randomised superiority trial.
BMJ. 2024 Jul 24;386:e078918. PMID: 39048132.


5000例弱のRCT。公共の場でマスクをするかどうかで無作為割り付け、14日以内の呼吸器症状を自己申告するかどうかがprimary outcome。結果は、8.9% vs. 12.2%で有意にマスク着用群で少なかったと。

先日、5年ぶりに海外旅行でヨーロッパに行ってきた。誰もマスクしていない。旅行中の日本人と思われる人もしていない。そんな中で我々夫婦は頑なに屋内ではマスクをしていた。それほど奇異な目では見られなかったけど、最初は気持ち的に大変だった。

なのでこの研究結果は我が意を得たりと言いたいところだけど、さすがにちょっと。
まず14日で呼吸器症状が出るような感染を起こすか?この頻度だと、単純計算では平均で年に2-3回は風邪を引くことになる。それはいくら何でも。
そして何よりも、サブ解析でマスクの効果を信じているかどうかで分けているのだけど、信じている群ではオッズ比が0.64、信じていない群では1.66と逆転している。さすがに自己申告は無理があるのでは。実際、COVIDの発生はどちらも21例ずつ(これも自己申告だけど)。

客観性、大事ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

酸素についての文献3つ

2024年07月27日 | 呼吸
Peng L, Qin X, Chen L.
Hyperoxemia may be more beneficial for patients with sepsis.
Crit Care. 2024 Jul 19;28(1):252. PMID: 39030635.

1施設の後ろ向き。敗血症患者ではPaO2>80を維持した方が予後が良かった。

Nielsen FM, Klitgaard TL, Bruun NH, et al.
Lower or higher oxygenation targets in the intensive care unit: an individual patient data meta-analysis.
Intensive Care Med. 2024 Jul 11. Epub ahead of print. PMID: 38990335.

2つのRCTのメタ解析。PaO2ターゲットが8kPaと12kPaで予後に差はなし。

Buell KG, Semler MW, Churpek MM.
Individualized treatment in critical care: the oxygenation paradigm.
Intensive Care Med. 2024 Jul 10. Epub ahead of print. PMID: 38985181.

過去の研究を簡単にサマライズ。
"The ICU–ROX, O2–ICU, HOT–ICU, PILOT, and ICONIC trials found no significant average treatment effect, whereas the Oxygen–ICU and HOT–COVID trials reported better outcomes with a lower oxygenation target and the LOCO2 trial reported better outcomes with a higher oxygenation target."

ご存知の通り、Mega-ROXとUK-ROXが現在進行中。Mega-ROXは4万例、合計すると6万例の巨大RCTになる予定。さて、いつ頃結果が出るのだろうと調べてみると、詳細はわからないものの、Mega-ROXの旧ツイッター情報からは、昨年1月に1万例到達、今年の1月に2万例到達したようなので、単純計算であと1年半、結果が発表されるのは2026年のどこかかな?

結果はどうあれ、集中治療リサーチの歴史に刻まれることは確定。サブ解析も山ほど行われることでしょう。
それまでは、酸素についての現在のプラクティスを大きく変えちゃダメですよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人工知能は終末期の無力な患者の代弁者になれるか?

2024年07月23日 | AI・機械学習
おお。
これは考えてなかった。

Brender TD, Smith AK, Block BL.
Can Artificial Intelligence Speak for Incapacitated Patients at the End of Life?
JAMA Intern Med. 2024 Jul 22. Epub ahead of print. PMID: 39037787.


心停止蘇生後で意識のない患者の意思について、仲たがいした娘に聞いても推測することは難しい。
でも、外来での会話がすべて記録されていて、その中から自分の人生観についての会話だけを取り出して聴くことができたら?
同様の状況になった患者の予後を提示することができたら?
同じような生活環境にあった人たちがどんな意思を持っているかを予測することができたら?

代理意思決定者がどれくらい正確に患者意思を推測できるかは疑問だし、living willとかACPとかが広く普及しているとは言えないし、医療者が客観的に情報提供をできているわけでもない。現状に明らかに問題があるのだから、AIの時代になったら今よりも良くなるのではないか?
でももしその予測が不正確だったら?

むむむ。
という僕の感想と同じ感想をeditorも持ったようで、すっごく短いeditor's noteを書いている。
"We published this Viewpoint because it is very interesting, somewhat scary, and probably inevitable."

さて、inevitableな未来ってどんな未来だろう?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

論文執筆は図表が全て。

2024年07月21日 | ひとりごと
論文を書く順番は、
・まず図表を決定する
・それを作る方法をMethodsに書き、図表で強調したい点をResultsに書く
・なぜこの図表の作成に意義があるかをIntroductionに書き、図表の解釈をDiscussionに書く
というのがもっとも書きやすいのではないかと思います。つまり、図表が完成した時点で、IntroductionからConclusionまで何を書くかが自動的に決まるということです。ここを理解していないと、"型"が守れなくなり、読者に言いたいことが伝わらず、peer reviewで評価されません。逆を言えば、論文全てが書けるような図表を作る必要があるということにもなります。

もう少し具体的に書くと、
・自分がこの文献で言いたいことを列挙する
・それが示される図表を作る
・図表作成時点で何を議論するかも決めておく
正確に言えばIntroductionは研究開始時に書けるし、MethodsとResultsは図表を説明するだけだから自動的に書けるので、残るはみんなが苦手とするDiscussionだけになりますが、言いたいことのリストがあって、かつそれを伝えることができる図表があれば、何を議論するかも決まるはず。そして何を議論するかが決まれば、書き方の型に合わせて書けばいい。

難しくないと思うのですけどね。
でもそれって教習所の教官と同じか。。。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インパクトの大きいRCTにおける複合アウトカム指標

2024年07月18日 | EBM関連
Walker HGM, Brown AJ, Vaz IP, et al.
Composite outcome measures in high-impact critical care randomised controlled trials: a systematic review.
Crit Care. 2024 May 28;28(1):184. PMID: 38807143.


16のhigh-impact journalsに2012-2022年に発表された重症患者を対象としたRCTを調査。194研究中39.1%でcomposite outcome (COM)が使用されていた。COMを使った研究の方がサンプル数が少なかったが、有意差が出る頻度は同等だった。ほとんどの研究でeffect sizeは過大評価されていた。93%の研究において、患者さんにとっては重要ではないアウトカムが含まれていた。

結論は、
”Further work to improve the use of COM in critical care should focus on the design and validation of COM that include patient important outcomes and effectively represent the heterogeneity of the pathologies studied in the critical care literature.”
つまりは、使うなら賢く使おう。おっしゃる通り。

ちなみに、集中治療系のRCTが載るhigh impact journalってどれだろう?
NEJM, Lancet, JAMA, BMJ, Lancet RCCM, AJRCCM, ICM, CCM, CC, Chest
ここまでは当然として、これで10か。あと6は何だろう?
と思ったら。
雑誌のリストは10年前のこの研究と同じものを使用していることが判明。そのせいでLancet RCCMとCCが含まれていなかった(全リストはこちらの2ページ目)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ノルアド投与量報告の不均一性が死亡率予測に及ぼす影響

2024年07月17日 | 循環
僕がビビったのが去年の10月。ガイダンスが出たのが今年の3月。
おお、この話題で臨床研究が出たぞ!と思って読んでみたら。。。

Morales S, Wendel-Garcia PD, Ibarra-Estrada M, et al.
The impact of norepinephrine dose reporting heterogeneity on mortality prediction in septic shock patients.
Crit Care. 2024 Jul 3;28(1):216. PMID: 38961499.


濃度が違えば死亡率との関係は当然変わる。グラフを横に伸ばした感じになる。ただそれを実際に示しただけ。MIMIC-IVのデータを使っているのでNは4000あるけど、ただそれだけ。それをoriginal articleにするとは。ちょっとイラッと来た。

とネガティブなことを言っても仕方ないので、どうしてこれがCCに採用されたかについて考える。
とは言っても、
・ちょうど話題になっている。
・Nが比較的大きい。
・有名なデータベースを使用している。
・分かりきっていることだけど、それをちゃんと数字や図にした。
・型を守った書き方をしている。
くらいしか思いつかないが。

でも逆を言えば、このルールに従えば良い雑誌に採用される確率が高まるとも言えるか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

集中治療におけるレジストリを組み込こんだ研究の妥当性と持続可能性

2024年07月16日 | データベース・JIPAD
Salluh JIF, Amado F, Pilcher D, Hashmi M.
The relevance and sustainability of registry-embedded research for critical care.
J Crit Care. 2024 Aug;82:154765. PMID: 38492521.


データベースの意義について人に何度話したか分からない。でも、それを聴いて「じゃあやろう」と思う人はごく僅か。それは仕方ない、人間だもの。
JIPADに参加していないけど独自のデータベースを作成している施設は限られるだろうから、参加施設数から推測するとだいだい日本のICUの四分の三はデータベースを持っていないことになる。普段からデータベースを使用している者からすると信じられない数字。

ちなみにこの文章はこの研究のeditorial。
エチオピアの人も" ICU registries are invaluable tools"と気がついているようだ。
あなたはまだですか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする