Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

西暦2050年、ある集中治療専門医の回想

2023年10月28日 | ICU・システム
ここ数年、未来の集中治療はどうなるのか、ほぼ毎日考えている。
そしたらドンピシャリの文章がCCに出ていたので、ちょっとビックリ。

Cecconi M.
Reflections of an intensivist in 2050: three decades of clinical practice, research, and human connection.
Crit Care. 2023 Oct 9;27(1):391. PMID: 37814338.


西暦2050年に引退を考えている集中治療医が、この30年間を振り返った文章。
モニターは大きくてインターラクティブなものとなり、専門医へのコンサルテーションはネット内のアバターに行うようになり、治療はadaptive RCTの結果とAIの判断に基づいたpersonalizeされたものとなった。Fluid challengeも自動化されている。そして何よりも、患者や家族のために使う時間が長くなった。

集中治療医になったばかりの若者への言葉(DeepLで和訳したものを補正)。
・好奇心を持ち続けろ:テクノロジーは進化し続けるが、人間の生理学とケアの基本は不変である。
・テクノロジーを受けいれろ、でも頼るな:技術は専門知識を助けるために利用するものであって、取って代わるものではない。
・つながれ:患者やその家族とつながる時間を増やそう。人とのふれあいはかけがえのないものである。
・忘れるな:機械は予測、分析、計算はできても、悲嘆にくれる母親を慰めたり、患者の心を軽くするジョークを披露したり、家族の目が恐怖で曇っているときに安心の手を差し伸べたりすることはできない。

僕が医者になったのは1993年なのでちょうど30年前(集中治療を専門として選んだのはその4年後)。その頃と比べて一番変わったことと言えば、やはり知識・情報へのアクセスが容易になったこと。当時は調べものや雑誌の閲覧をするには図書館に行く必要があったし、勉強しようと思ったら本屋に行く必要があった。医者は夜中も土日も働くのが当たり前(今もそういう人はいるだろうけど)の時代、知識を得るための時間を作ることがそもそも大変だった。

これからの30年。
どうなるだろう。楽しみだわー。
コメント
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