Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

「了解しましたは失礼」と集中治療

2023年02月19日 | 勝手に紹介
無茶なタイトル。

「了解しました」は無礼なので「承知しました」を使いましょう、という話には違和感が強く、僕は頑なに「了解しました」を使い続けている。でも、自分が受け取るメールやSNSでは「承知しました」が100%なので、流石に肩身が狭くなってきた。仕方ないので諦めるか、でもその前に少し調べるか、と思ってググってみた。
そうすると、「了解しました 承知しました」で検索すると「了解しましたはマナー違反」というサイトばかり出てくるけど、「了解しました 失礼 嘘」と検索するとこれもたくさん出てくることが分かり、その中でも有名なサイトがあることを知った。僕以外にも知らない人もいるかもしれないので紹介。

「了解しました」より「承知しました」が適切とされる理由と、その普及過程について
過去のWEBメディアを検索し、かつ1980年以降のマナー本数十冊を調べたところ、
・ある人が、2000年代に「了解しました」より「承知しました」の方がいいと感じるようになり、そのことをマナー本で書いた
・2010年に発売されたマナー本でこの記述が参照され、この本が5万部売れた
・WEBサイトで多く取り上げられるようになり、加速度的に広まって”常識”化した
ということが分かったと。

僕はこれからも頑なに「了解しました」を貫こうと決意しつつ、たった一人の意見が日本中で常識化するってすごいなと思いつつ、これって医学や集中治療の世界にもあることだなと思った。

その典型は、やっぱり"CHDF"でしょう。
1990年代にある人が言い出し、単なる持続の腎代替療法としてではなくサイトカイン除去という積極的な治療法として日本でブームになった。2000年代に入り、主に海外で多くの研究が行われ、予後を改善しないどころかサイトカインの血中濃度も下げないことが示され、臓器不全のサポート目的で持続腎代替療法=CRRTとして定着したけど、未だにCRRT=CHDFと思っている(特に集中治療を専門としていない)人たちは残存している。自治さいたまのCRRTの基本選択はCHDなのだけど、つい先日、ある患者さんにCHDFが行われていて、副部長がその理由を聞くと、当直だった医師が「患者の主治医が炎症の除去のためにCHDFをしてほしいと言ったので」と返事をしていた。30年以上も言葉と概念が使用され続けているって、すごいことだよね。

僕も残せるなら何か残してみたいけれども。
AKIの日本語は「急性腎障害」じゃなくて「急性腎傷害」ですよ、というのを普及しようとしたけど失敗したし。もうリタイアしちゃったし。諦めてICUの隅で静かに座っていることにします。
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