Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

好みの問題か、それ以上か。

2023年05月01日 | ひとりごと
昨日の続き。
少し誤解される可能性があるな、と思い追記する。

例えばPMX。
現在のベストエビデンスはEUPHRATES。命は救わないというのが現時点での結論。でも高いし、体外循環しないといけないし、カテも挿入して留置しないといけない。ただし、RCTが現在も進行中で、完全に有効でないことが定まっているわけではない。ではPMXの使用は好みの問題か?

リコモジュリン。
ベストエビデンスはSCARLET。命は救わないというのが現時点での結論。でも高いし、血が出る。ただし、この研究に対して反論したい人はたくさんいる。これは好みの問題か?

セプザイリス。
書くのはもう飽きたのでこちらを。普通の膜以上のことは何もしない。でも普通の膜より高いし、CRRTが不要の場合に行うと体外循環とカテ留置の問題がある。ただし、と書くほどの反論はできない。そもそもRCTがない。これは好みの問題か?

敗血症性ショックに対するステロイド。
RCTはたくさん。命は救わない(もしかしたらちょっとだけ救うかも)。でも、白血球数とかCRPとか体温といった臨床判断の指標が使いにくくなるし、血糖コントロールも面倒。ただし、ショックからの離脱は早くなる。これは好みの問題か?

実際のところは、これは好みの問題でこれは好みの問題ではなくてこっちを選択するべき、とは言えない。どれも、期待される利益と、起こりうる合併症と、コストのバランスで判断されるべきもので、そのどれを重要視するかは人によって違うから0 vs. 1では語れない。でも上記の最初の3つは0.1 or 0.9くらいでは語ってもいいんじゃないかな。
ステロイドはほぼ0.5 vs. 0.5な気がする。
CHDかCHFかCHDFかは、0.5 vs. 0.3 vs. 0.2くらいでどうか。
SIMVかCMVかは、0.4 vs. 0.6くらいかな。0.35 vs. 0.65でもいい。
勝手に判断基準を数字に直してみただけで、根拠はない。

SIMVの議論について気になる点がもう一つ。
SIMVがダメというのは生理学的説明と比較的Nの少ない観察研究に基づいている。でも、過去を振り返れば分かることだけど、こういうのは後にRCTで否定されるか、RCTすら行われずに消えていくかのどちらであることがほとんど。今から20年後くらいに、「いやー、昔はリバーストリガーだ!とか言って深鎮静にしたりしてたんだよー」なんて昔話をするはめになるかも。

不十分なエビデンスに基づいて行動すると、後でその行動を自己否定せざるを得なくなる確率が高くなる。それよりも、sit tightしている方が僕は好きです。
あ、これも好みの問題か?
コメント
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