Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

早期警告スコアの一部としての臨床評価

2022年08月25日 | ICU・システム
Nielsen PB, Langkjær CS, Schultz M, et al.
Clinical assessment as a part of an early warning score-a Danish cluster-randomised, multicentre study of an individual early warning score.
Lancet Digit Health. 2022 Jul;4(7):e497-e506. PMID: 35599143.


デンマーク8施設のクラスターRCT。NEWSによるスコアリングに基づいてRRSを発動するか、そのスコアを観察者が増減して、その結果をもとにRRSを発動するかを比較。仮説は、人が評価することによって無駄なRRSが減り、患者には悪影響を与えない、というもの。しかし実際は逆で、コール回数はほとんど減らず、有意ではないものの死亡率は悪化した。

面白い。単純に考えると、人の評価が加わった方が、単なる数字よりも患者さんの状態がより正確に判断できそうと期待したくなる。でも実際はそうはならず、NEWSに加点されることはほぼなく、減点がチョコチョコ行われ、コールするタイミングが遅くなり、結局呼ぶ回数は変わらずに予後が悪くなったように見える。

薬の効果は投与の有無で評価ができるけど、RRSはそうは行かない。人の行動なので、たくさんの要素があるから。
例えば、もしRRSの有効性が高く評価されていたら、みんながRRSを喜んで呼んで、この研究の結果は真逆になっていたかもしれない。でも、もし評価が高くなくて、RRSのチームメンバーが楽しそうに見えなかったり、RRSで来た人に否定的なことを言われたりしたら、結果はもっと悪くなっていたかもしれない。
どっちに傾きやすいかと言うと、やっぱりネガティブな方向でしょう。だって面倒だもの。みんな忙しいし、仕事増やしたくないし。

RRSの有無を比較した唯一の多施設RCTは有効性を示していない。それイコール無効ということにはならいし、実際に明らかに有効と思われる(コードブルーが激減)施設もある。ただ、有効性が示されるように導入するのはとても難しい。この研究もそれを示しているのではないかと思います。

コメント
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