超級龍熱

香港功夫映画と共に

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」 (2) ドラゴン、韓国に出現!!「四騎士」

2016-01-15 12:39:21 | 作品レビュー
「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」、第2回はこれまた邵氏公司作品にして張徹導演作品「四騎士」(72)です。
この映画は70年序盤の香港映画としては珍しく実際に韓国ロケを敢行した作品で、劇中では当時の韓国市内の様子も映し出されます。
朝鮮戦争直後の韓国を舞台に、姜大衛、狄龍、陳観泰、そして王鍾が韓国軍相手に大暴れするこの「四騎士」ですが、倉田さんに触れる前にまずは王鍾に触れておきます。王鍾はこの「四騎士」で“張家班”のニューフェイスとして本格的に売り出された1人で、そのサーカス仕込みのアクロバット・アクションで何本もの張徹作品に出演した武打星でしたが、結局のところ爆発的な人気が出ずに終わった人でした。
これは同じ事が李修賢にも言えるんですが、この2人は“張家班”では何とも中途半端な扱いと言うか、逆に李修賢は独立してからやっと俳優としての本来の魅力に開眼した人でしょう。それもあってか、李修賢は私が張徹導演の事を訊いても、張徹導演に関しては全くコメントしませんでした。
で、倉田さんです(^_^)。この映画での倉田さんはアンドレ・マルキス演じるホークスの部下の雷泰なる悪漢に扮しているんですが、注目すべきはその雷泰の初登場シーンです。
韓国市内の空き地で、自分に群がる暴漢たちを片っ端から倒した狄龍が悠然とその場を立ち去ろうとしますが、そこに立ちはだかるスーツ姿の男性・・・雷泰だ!!(画像参照)
「お前・・・やるのか!」「・・・・」身構える狄龍に煙草の煙を「ふううう!」と吹きかけた雷泰は一瞬目を細めると「パッ」と煙草を投げ捨て、電撃の連続正拳突きを放つ!!思わず後退した狄龍に雷泰は次々と容赦ない攻めを叩き込み、最後は狄龍を失神KO!!
私は昔に初めて「四騎士」をオランダ製VHSで観た時、この倉田さんvs狄龍の対決シーン、特に倉田さん演じる雷泰の凄味タップリの佇まいに強い衝撃を受けました。以前から倉田さんの演技力がどうのこうの、と言う人がいますが、私はこの狄龍相手に倉田さんが見せた一連の殺気漲るパフォーマンスは、とても映画出演数本の役者には披露出来ない迫力だと断言しますし、それは高校生だった倉田さんが憧れた、あの日活伝説のスター赤木圭一郎を彷彿させる若さの中に見え隠れする狂暴なまでの荒々しさ、だったのかも知れません。
「四騎士」のクライマックスは、体育館に追い詰められた4人の主人公が韓国軍の銃弾に1人、また1人と倒れていき、雷泰もまた見事なまでの死にっぷり(?)を見せてくれています。
倉田さんが香港映画に進出するまでの香港映画の悪役といえば、石堅や谷峯といった貫禄十分の中年男性が中国服姿で憎々しげに構えている、が定番でした。
そこに倉田さんがパリッとしたスーツ姿でクールかつ若々しいルックス、それでいて闘いとなると主人公顔負けの蹴り技で猛然と追い込んでいく、という全く新しいタイプの悪役像を確立したわけです。
まさにこの邵氏公司時代の2本で“価値ある悪役”像を新たに確立した倉田保昭は、以後怒涛の出演作ラッシュへと突入していく事となるのでした!!そう、合言葉はドラゴォォン!!

「ああ「四騎士」ね。あの映画は韓国ロケしてたと思いますが、韓国に行く前は俺もモテるかな?なんてちょっと期待して行ったんですが、実際は全然モテなくてね(苦笑)。逆に姜大衛や狄龍なんてバスに乗り切れないぐらいのファンに囲まれてたなぁ。あとタクシーに乗っても、タクシーの運転手がバックミラーでこっちを見ながら「あんた、日本人だろ?俺は日本語話せるけど、あんたとは話したくない!」とか言われたりね。まだそんな日本に対する反感が根強い時代でしたね。あとこの映画で張徹監督の下にいたのが呉宇森で、この頃はまだ助監督でしたけど、当時から真面目な男でしたね」(倉田保昭:談)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする