土曜日の8時過ぎ そろそろ店も 閉店に向けて準備を始める。
専門店はそれぞれの売り上げを持ってやってくる。 この時間はバックには私一人のことが多い。この時間から 閉店までの2時間ほどは大忙し。
そんな時電話が入った。
「食品コーナーにつないでください。」
うちは売り場が とても広くて内線で繋ぐことは殆ど無理 こういう電話には 私が話を聞いて跡で調べて 返事をすることにしている。
「あの 乾燥した白インゲンありますか?」
「白インゲンって あの白あんにする豆ですか?」
「なんだか知らないけれど 白いんげんです。」
そんなもんあるだろう とは思ったけれど もしもの事を考えて 後で返事をすることを約束して電話を切る。 白インゲン何に使うんだろう? 乾燥しか駄目って 普通豆食べるんなら乾燥しかないだろう。
食品のマネージャーに携帯で電話をかけて確認する。 今どき煮豆する人もほとんどなくて マネージャーにもよく分からないらしい。
「白インゲンはないけれど 白花豆はある キドニービーンズはあるけれど・・・」
あかん 呼び方が違うと若い男の子には解らないかもしれない。
そうこうしていると 次々電話が みんな判で押したように 聞いてくる。
「乾燥白インゲンあります?」 そのうちもどってきた他の社員を捕まえて 電話番を頼む。これはどうしても売り場を見てこないと駄目。
事務所から遠い 走って走って・・・
売り場にあった乾燥豆 大豆 黒豆 虎豆 浸し豆 ウズラ豆・・・うーんない
今 煮物をしない家庭が多くなって こんな面倒なものは 殆ど売れないらしい。
冷凍は? あ 缶詰は? 何故乾燥が良いのか良くわからいので何とかしろインゲンを見つけようと 探し回ったのだけれど ない 缶詰で チリコンカーンになっているもの サラダ用の ミックスナッツにかろうじて入っている。
やがて豆売り場には 人だかり
みんな棚に 顔をくっつけて 探している。
「一体何があったのですか?」
「今テレビでやっていてね 乾燥インゲンを粉にして ご飯と一緒に食べると やせるんだって・・・」 はーぁ そんなことだとは思ったけれど
ねぇ 寒天はどうなった? ところてんはどうなった?
私が思うに 乾燥豆を粉にする事は面倒だし 美味しかなさそうだけれどね。
反対はしないよ そのためにうちの売り上げも伸びるのだしね。 でもー
白インゲン騒動は 次の日も続き 電話をとると テープに吹き込んだ様に「白インゲンありますかー?」と聞いてくる。