勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

見て見ぬふり

2005-12-21 23:56:40 | Weblog
 江戸の町には町屋講というシステムがあった。お互いに知恵を出し合い、助けあう相互扶助システムとして、寺子屋でも「講とは世の中のこと、漢字では世間と書く」と教え、子どもの頃から人と人がしっかりと手を取り合い、安心して住むことが出来る世の中にすることを教えたそうです。「江戸の繁盛しぐさ」より

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 或る日、地下鉄に乗ったときのことです。
程々に混んだ電車の中ほどに、中途半端な座り方をしている男性がいました。
よく見ると、隣の女性との間に、その女性の持ち物であると思われるハンドバッグが置かれていました。
そのため気の弱そうなその中年男性は深く座れず、椅子にちょっとだけ腰を乗せて座っていたのです。
隣の女性は、深々と座り平気な顔をしているのを見て、僕は黙っていられなくなり、側まで行ってその女性にいいました。
「そのバッグどかしなさい!」
すると女性は、驚いたような顔をして僕に「すみません」と言ってバッグを膝に乗せたのです。
男性は降りるとき、ちょこんと僕に頭を下げて降りて行きました。

 また別の日です。
やはり電車に乗ると、立っている人もいるのに誰も座っていない一角があります。
見るとそこには労務者風の風情のよくない男が足を投げ出し、ふん反り返って座っていました。
僕はその足を静かに払いのけてそこに座りました。
その男はそれを腹立たしく思ったのでしょう、腕をまくりあげ二の腕の刺青を見せ付けています。
僕は知らん顔をして前を向いて座っていました。しばらくすると、向かいの女性が僕に目配せをして何かを訴えています。
チラッと横を見ると、その男、先の尖った工具のようなものを僕に突きつけようとしています。
僕は、不本意ながら、このままで何かが起きてもつまらないと思い、立ち上がって少し離れたところに立ちました。
幸い何事もなく済みましたが、僕にはこのような輩(やから)許せないのです。

 正義を振りかざすつもりも、道徳を導き出すつもりもありません。
自分自身、正しく、道徳的に生きているわけではありませんが、他人に大きな迷惑をかけることはしたくないし、黙っていられないのです。

 ただ、このようなことは危険を伴うので、やはり見て見ぬ振りをするほうがいいこともあるようです。
皆さんは気をつけてくださいね。
2005.12.21