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“シンポジウム・2050年に向けた革新的エネルギー・環境イノベーション”を聴講して

先週は北がICBMの発射実験を成功裏に実施したにもかかわらず、日本のマスコミのトップ報道は“日馬富士事件の行くへ”だった。今回試射した火星15号は従来の14号のエンジンを2基束ねたものであったという。2基のエンジンを束ねるというのは両エンジンの出力のバランスを取るという、結構難しい技術であって、これを数カ月の間で獲得したというのは驚きである。従って、その推力は単純に2倍弱と見て良い。これによって、射程範囲は米国の東海岸含めて本土全域のみならず、方向を変えれば欧州ほとんども含まれることになる、という。いわば世界の先進国殆どが、戦略的に北の核攻撃の脅威に曝されることになる。これまでは先進国中、日本だけが北の脅威に曝されていたが、これによって世界の殆どが日本と同じ立ち位置に至ったことになる。しかし逆に見方を変えれば、米国をはじめ世界中が北への圧力を高める要因となり、それが対北戦争へ一歩近づくことを意味することにもなる。その点で極めて重大なニュースであったが、二の次の報道となったのは、これも平和ボケ日本の実態を示したことになるのではないか。
米韓と日本を伴う3空母打撃群主力の海上兵力演習は終わったが、今週は多数のスティルス戦闘機F22,F35を含む航空戦力による米韓軍事演習が始まるという。ここでスティルス性能を試すべく、北への領空侵犯を試みた場合、非常に危険な事態に至ることが考えられる。朝鮮半島情勢は非常に神経質な状況にあることは確実なことだ。

しかし、先週末のテレビの報道解説番組によれば、米政権のロシア疑惑も絡んだ金権腐敗、プーチン政権の不安定性、平昌五輪の国際的政治的利用等々が複雑に絡んで、一転、米朝首脳のウラジオストック会談もあり得るという。極々些細なことで、開戦か和平か紙一重の状態にある。そして、そういった複雑怪奇な国際情勢の中で、日本は利害というより被害影響が大きいにもかかわらず、何の関与もできる訳ではないという冷厳な事実を認識しなければならない。
これは、日米安保の裏にある地位協定により米国のポチとなっている日本の国際的地位の結果である、ということも認識する必要がある。
とにかく、無事年末年始を迎えることができるのか否か、十分に警戒する必要があるのは間違いないことだ。米朝開戦となれば、少なくとも東京方面に北のミサイルが放たれることは高い確率で確実なのだ。そこには極東地域米軍の司令部が集中しているからだ。もし、核弾頭搭載のミサイルが着弾すれば、都民400万人が巻き添え死するというのだ。

さて外界は大嵐にもかかわらず、コップの中の嵐である“日馬富士問題”は報道が奥歯に物が挟まったような忖度報道では一般人には真実が伝わっていないように思える。このいい加減かも知れない報道による“事実”しか知る由はないが、それらを冷静に再配列してみれば、“白鵬の傲慢”に全てのベクトルが集まるように思われる。警察側の調書や貴乃花親方の証言が明らかになれば、幾分でも客観的真実の一端が見えてくるように思う。
相撲は心技体と言われるが、傲慢な大横綱に日本相撲協会が振り回されているのは、何とも情けない図である。そしてそれに輪をかける相撲協会周辺に巣食うバケモノ有識者の発言も不様さを助長するばかりである。特に危機管理委員会の委員長は名古屋高検検事長というが、検察出身者があのようにいい加減な中間報告を発表するとは呆れるばかりだ。日本的組織のガナバンス力のなさと醜態を思い知らされるばかりだ。

思えば、最近の一流企業の不祥事もこういったガナバンス力の不足によるものばかりではないか。ここに真偽を見通す肚のある指導者が居ない日本社会の凋落が見て取れる。経営者が無名だった台湾人になることで、シャープは早くも東証一部に上場復帰するという。日本人経営者がダメにし、ほかの日本人も見捨てた会社が無名だった台湾人によって再興したのは紛れもない事実だ。
そしてISO審査は意図的なウソや虚偽には全く無力であることが、いよいよ明らかになった。ISO業界と関係者はこの問題に向き合わなければならないが、これまで通り見て見ぬフリをするのだろう。ISOはこうした不祥事を防ぐためのものだったはずだが、これに全く無力と分かれば今後さらに衰退するであろう。現に近年その傾向は顕著であるが、最近のこの一連の事件はそれを決定的にするはずだ。ISO9001より厳しいISO/TS16949の要求事項を順守せよと供給者に迫っていた自動車会社自身が、ISO9001以前の業界ルールを順守していなかったのは、堕落の極みである。
こうしたことも含めて、日本人のモノの考え方に有象無象の忖度が加わって日本の社会が一向に旧弊の宿痾から脱せず、近代化できないのを見るのは悲しいことだ。一旦、落ちるところまで落ちなければ再生はあり得ないのかもしれない。しかし落ちればそこは、無辜の多数の犠牲者を伴う とんでもない地獄であるというのは確かなのだ。日本社会は何度こうした地獄を見て来たのか。全てを水に流し、歴史に学ばない稀有な人々なのか。


さて、げんなりする話ばかりで恐縮だが、本題に入りたい。実は先々週、大阪中之島の西端で“第12回地球温暖化対策シンポジウム”が開催された。私ははじめての聴講だったが、このシンポジウムはこれが最終回だと開会冒頭の挨拶であった。少々残念だが多分当局からの補助金が打ち切られることになったのだろう。どういう風向きなのだろうか。

実は、このシンポジウムの始まる前の午前中は枚方に私用があって、京阪で中之島に直行したのだ。昼食は車中でと考え、サンドウィッチを調達して赴いたが、残念ながら特急車両が2階建てではなく、普通車両でしかも混んでいて車中で食べる訳にはいかなかった。2階建て車両の下の階では、乗客も少なく食事はできると踏んだのが読み違えであった。京阪は特急には必ず赤黄ツートンの2階建車両を列車に使用するようにしてほしいものだ。
余裕があれば、会場のNCBビルの31階のレストランで下界を見下ろしながらゆったりと食べたいものだ。別の日にここで食事したので、ここではそうしたことにして、一寸紹介したい。それは中之島センター・ビル(NCB)最上階31階にある、眺めのいい和食レストラン“うおまん”での食事だった。海鮮料理主体のお店だとおもったので、“海鮮まかない丼とミニうどん”のセットを頼んだ。期待通りの内容。11時半に来たので北西角に着席。神戸の六甲山系を見、翻って中之島東部・肥後橋方面の2方面を眺められて、美味い食事で絶好調だった。
食事後、ビルの西側に行って眺望を楽しむ。そこでは中之島の西端と川と橋の交錯があり、今はほぼ失われた光景である水の都・大阪の面影を久しぶりに思い起こす気がした。

地球環境関西フォーラム主催の“第12回地球温暖化対策シンポジウム:2050年に向けた革新的エネルギー・環境イノベーション”のプログラム内容は以下の通り。
【場 所】リーガロイヤルNCB 2階「松の間」
【挨拶】秋山喜久氏(地球環境関西フォーラム 地球環境100人委員会代表委員)
【基調講演】①「地球温暖化対策のイノベーション」  
     山地 憲治氏((公財)地球環境産業技術研究機構 理事・研究所長)
【トピックス紹介】
  ②「洋上風力発電の歴史と展望 ~EUを見る~」   
    鈴木 胖氏(公益財団法人地球環境戦略研究機関 関西研究センター所長)
  ③「再生可能エネルギー普及に伴う直流送電グリッドの動向と展望」   
    真山修二氏(住友電気工業株式会社 電線・エネルギー事業本部新エネルギープロジェクト開発室室長)
  ④「業務用・産業用 固体酸化物形燃料電池SOFC-MGTハイブリッドシステムの市場導入に向けた取組み」  
    冨田和男氏(三菱日立パワーシステムズ株式会社燃料電池事業室設計グループ長) 
  ⑤「国際CO2フリー水素サプライチェーン実現への取組み」   
     西村元彦氏(川崎重工業株式会社 技術開発本部水素チェーン開発センター副センター長 理事)
【⑥パネルディスカッション】<コーディネーター> 鈴木胖氏 
              <パネリスト> 山地憲治氏、真山修二氏、冨田和男氏、西村元彦氏

①はいわゆるRITE(ライト)すなわち地球環境産業技術研究機構のトップの発言である。つまり政府当局に政策提言する立場の人だということ。そういうことのためか、何が“イノベーション”なのか言っていることが非常に分かり難い。しかも原発は現在の日本にとって欠くべからざるエネルギー供給要素であるとの認識であった。
②は①とは異なり、政府とは少々距離を置く機関IGES(アイジェス)の人だ。ヨーロッパの洋上風力発電の開発意欲は並々ならぬものがあり、それは日本にも脅威となる影響力があるように語っていた。先日“びわ湖ビジネスメッセ”で末吉 竹二郎氏(国連環境計画・金融イニシアチブ特別顧問)の語っていた内容の一端がここにあるのだということが、確認できたように思う。しかしながら、再生エネルギーで電力が2~3円/kWhが国際常識との末吉氏の指摘は言い過ぎであることが分かった。
③,④,⑤は民間での電力供給に関する開発状況の報告であった。これこそマイケル・ポーターの言うCSV(Creating Shared Value:共有価値創造)に相当する活動であろう。ここへの投資こそ未来への投資と言える。
③は一般にはあまり知られていない科学的事実を素人に知らせてくれた。それは遠距離の電力送電は直流でなければ送電不可能だという事であった。そのため欧州の洋上発電ではこの直流送電技術が使われているとのこと。ところが足元の日本では、こういった技術の必要性が認識されていないとのこと。知らぬ間に日本が遅れてしまう技術があるのだということを思い知らされる。
④は発電システムの効率化に必要な燃料電池システムについての開発エピソードであった。
⑤は今も有効活用がなされていない豪州の褐炭から水素を取り出し、日本に出荷し、残留するCO2は現地政府の沿岸のCCSプロジェクトを活用し埋設する計画を実験中であるという内容である。この水素のフル・コストは30円/ノルマル立米であるという。日豪間の大量輸送の900万トン/年で水素は18円/ノルマル立米となり、26千MWの発電が可能で11円/kWhになる可能性はあるという。現状の火力で最も安価なLNG火力の13.4円/kWhより安価になる見込みだという。

⑥でのパネルディスカッションでは、コーディネーターの鈴木胖氏の“日本の再生エネルギー開発がチャレンジャブルでない”のが残念だという指摘から始まった。そしてその原因は何なのか の議論になった。直接的には政府系機関RITEの山地憲治氏への問いかけであったが、同氏は“原発をどうするのか決められないこと”に原因があるとの回答にならない応答で議論を意識的に外した印象であった。
確かに、褐炭からの水素抽出プロジェクトでも電力は11円/kWhになりそうで希望的になるが、世界の目指す再生エネルギー・コスト2~3円/kWhにはまるで及ばないレベルであり、結局のところやらないよりはましのレベルだ。
ヨーロッパでの洋上風力発電開発もオープン・マインドな大戦略に基づいていた。中国はソーラー発電で積極的に外国の技術・資本を使って、圧倒的な大量生産により日本のソーラー発電をコスト的に太刀打ちできないようにした。日本にもチャレンジャブルな開発には国家的戦略が必要なのではないか、との結論で終わった。
こうした国家レベルでの戦略を策定する場合も、真偽を見分け将来を見通す肚のある指導者が必要だと思い知らされた次第だ。チマチマとしたしがらみ(例えば“原発”)ばかりに囚われて改革ができず、口先だけでやたらに“革命”とまで言い出す安倍政権のプロジェクトに愚かしさを見て、辟易するのは私ばかりだろうか。さりとて、それを投票を忌避する言い訳にしていては、事は何も進まないのだが・・・。

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