「般若心経」とは、正式には「摩訶般若波羅蜜多心経 (まか はんにゃ はらみった しんぎょう)」といいます。
二百六十二文字足らずの文章で 「観自在菩薩(かんじざい ぼさつ)」 < おシャカ様に代わって般若心経を説く人 > が舎利子(しゃりし)というおシャカ様の十大弟子の一人に対して 「空」 について克明に説いたもので、私たち衆生に最も親しみのあるお経です。
「観自在菩薩」 とは、智慧の上からのお名前であり、慈悲の上からのお名前は 「観世音菩薩(かんぜおん ぼさつ)」 といいますが、実は、私たち衆生自身のことです。
六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)という一端を徹底することにより、すべての作用は自在であるということを代表して観自在といっているのです。
舎利子は、おシャカ様が成道された後に弟子とともに帰依(きえ)され、「舎利仏尊者(しゃりほつ そんじゃ)」 とも呼ばれているお方です。
「般若心経」 の教えの根幹をなすものは 「空」 です。
「空」というものは、修行によって有ったものが無くなった、ということではありません。
「転迷開悟(てんめい かいご)」 というお言葉がありますが、迷いを転じて悟りを開くという意味です。
私たち衆生は、いつも 「空の中で生活している」 のに、距離(隔て)をもって考えてしまうので、迷いが生じるのです。
これらはすべて我の働き(我見)によるものです。
その我をなくし、「本来の空(ものと一つになる)」 になることを説いた 「般若心経」 は、私たち衆生の禅や日常生活を行じていく上で、最も大切なお示しです。