先日、ここ最近読み進めていた宮本常一著「忘れられた日本人」を読了。
元々伯父に「民俗学に興味があるなら、この本は面白いし内容も素晴らしいよ」と薦められて読み始めたのだけど、いやあホントに読み応えがありました。
著者である宮本氏が戦前戦後にかけて行ったフィールドワークによる、日本中様々な村の老人の話を纏めた内容で、今ではもう無くなってしまったと思われる昔の庶民(基本的に農民)の文化風俗が描かれてます。
またその文面は、老人の語り口調であるとかが脳裏に簡単に浮かぶほど分かりやすい表現(もちろん昔の言い回しも出てくるが)で、50年前の作品であるとは感じられなかった気がする。
民俗学の本と言いながらも、著者が聴き歩いた姿を描く物語として十分に読めたしね。
貧しくてもアグレッシブであった昔の人々の生き様を読むにつれ、自分のなんと気の抜けた事よと思うことも多々w
まあ、日本人はこの100年~50年で大きく生き方が変わってしまったのは間違いないけど、その昔の姿の記録書として、この本の価値は素晴らしいモノがある様に思います。
それにしても、昔のそういう人たちの話は、やれ夜這いだ何だという男と女の話が実に多い。
それ自体が娯楽の一つのようなものであったのかもしれないけど、価値観もずいぶん違った感じで、これはこれで客観的に面白いなあとは思う。
「土佐源氏」の話の主役である河原乞食の翁のなどは、まさにそういう男の一代記。
この一章だけでも一人の人生の物語としてずいぶん読み応えがありますわ。
あとは「私の祖父」の章で、老人が幼い孫(著者)に言って聞かせた自然に対する敬意といった伝承(堅苦しい話ではなく子供に対して言い聞かせる類のお話)を読んで、今の核家族化で失われつつあるであろう大事な何かを考えさせられたりしました。
子供の頃、明治生まれの爺さんに週に一度預けられていた自分としては、そういう関係性を想像するにつけ、ウルっと感じ入るものがあったりするのです。
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