伊藤計劃氏の長編小説3冊の内、最期の1冊「ハーモニー」を読み終わりました。

身体を常に監視し健康を維持する先進医療技術が確立し、あらゆる病気が駆逐された世界。
人々はその存在自体が社会の重要なリソースとして在る世界を描いたSF作品。
デビュー作の「虐殺器官」でもその筆力には敬服したのだけど、この「ハーモニー」はオリジナル2作目(「メタルギアソリッド4」のノベライズを入れれば3作目)にして、「虐殺器官」なんてまだまだ助走だったのだという伊藤氏の才能に気づかされる出来栄えでした。
病気にならない世界という、一見理想的に思えるその世界の鬱屈感というか、そこにある人間が行きつく先のユートピアとディストピアの表裏を、登場人物の私的な目線で世界を語るという…哲学めいた"私"の物語。
俺の世代だと"人類補完計画"という単語が思い浮かぶような、SFとしては割とある題材を、表現ひとつで新しい傑作にしてしまったような作品でした。
冒頭、ページをめくった時点で目に入る何やら奇妙な文字列。
HTMLを触ったことのある人ならなんとなく察しのつくタグが文章の合間に書かれ、その先に選択肢や単純な箇条書きの様な項目が並ぶ。
「なんだか変わった表現だな」と思いながら読んでいくと、これが一人称で書かれた主人公の考えを追うのにわかりやすい。
最初こそ読むのに詰まりはしたけど、途中から気にならなくなるし、「なるほどこういう表現もあるのか」と作者のある種の発明(?)に感心した次第。
だけどこの表現が、全体を通して世界観を表現し、そして作者の仕掛けとして考えられたものだとは、ついぞ…。
これにはやられました。
デビュー作の「虐殺器官」ほど映画やゲームなどを引用した遊びはないのだけど、知っている人が読めば「セルゲイ・ゴルルコビッチ」という名前だけでニヤッとしてしまうか。
さすが伊藤氏、どこまでも「メタルギアソリッド」ファンですねw
その伊藤氏は、この作品を出版した4カ月後に34歳の若さで肺がんのために死去されました。
この本を書いていた時点で病は進行していたそうだし、それを自覚しながらこの本のテーマである「病気が駆逐された世界」というSFを書いていたと思うと…。
巻末にはこう書かれています。
「感謝をささげます---私の困難な時にあって支えてくれた両親、叔父母に。」

身体を常に監視し健康を維持する先進医療技術が確立し、あらゆる病気が駆逐された世界。
人々はその存在自体が社会の重要なリソースとして在る世界を描いたSF作品。
デビュー作の「虐殺器官」でもその筆力には敬服したのだけど、この「ハーモニー」はオリジナル2作目(「メタルギアソリッド4」のノベライズを入れれば3作目)にして、「虐殺器官」なんてまだまだ助走だったのだという伊藤氏の才能に気づかされる出来栄えでした。
病気にならない世界という、一見理想的に思えるその世界の鬱屈感というか、そこにある人間が行きつく先のユートピアとディストピアの表裏を、登場人物の私的な目線で世界を語るという…哲学めいた"私"の物語。
俺の世代だと"人類補完計画"という単語が思い浮かぶような、SFとしては割とある題材を、表現ひとつで新しい傑作にしてしまったような作品でした。
冒頭、ページをめくった時点で目に入る何やら奇妙な文字列。
HTMLを触ったことのある人ならなんとなく察しのつくタグが文章の合間に書かれ、その先に選択肢や単純な箇条書きの様な項目が並ぶ。
「なんだか変わった表現だな」と思いながら読んでいくと、これが一人称で書かれた主人公の考えを追うのにわかりやすい。
最初こそ読むのに詰まりはしたけど、途中から気にならなくなるし、「なるほどこういう表現もあるのか」と作者のある種の発明(?)に感心した次第。
だけどこの表現が、全体を通して世界観を表現し、そして作者の仕掛けとして考えられたものだとは、ついぞ…。
これにはやられました。
デビュー作の「虐殺器官」ほど映画やゲームなどを引用した遊びはないのだけど、知っている人が読めば「セルゲイ・ゴルルコビッチ」という名前だけでニヤッとしてしまうか。
さすが伊藤氏、どこまでも「メタルギアソリッド」ファンですねw
その伊藤氏は、この作品を出版した4カ月後に34歳の若さで肺がんのために死去されました。
この本を書いていた時点で病は進行していたそうだし、それを自覚しながらこの本のテーマである「病気が駆逐された世界」というSFを書いていたと思うと…。
巻末にはこう書かれています。
「感謝をささげます---私の困難な時にあって支えてくれた両親、叔父母に。」
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