雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

知ることと信じること(その1)

2007年02月23日 | 入院生活
病気で入院しても、診療報酬の関係で3ヵ月経つと退院か転院を
迫られる、というのはよく聞く話ですが、私が入院している
難病病棟は例外らしく、もう何年も入院している、という人が
沢山います。私ももうすぐ入院3カ月になりますが、師長さんから
言われるのは、ここが我慢のしどころ、とにかく焦らずに
ゆっくり養生すること、そればかりです。

ここにいるのはALS、パーキンソン病、認知症といった
「長期にわたる闘病が必要な、治らない病気」の患者ばかりで、
その殆どが日常生活の殆ど全ての場面で全介助が必要な状態です。
自分で箸を持って食事をし、椅子に座ってであればシャワーが
浴びられ、長距離は無理とはいえ自分で歩いてトイレに行ける
私は、ここでは「最も元気な患者」の1人です。

そんな病棟に入院してきて5週間になるAさん。
まだ軽症で私と同じ「元気な患者」である彼女は、入院前に
告知を受けたとのことで、ご本人も最初から病名をオープンに
されていましたが、言葉の端々に「早く治して退院しないと」
「リハビリを頑張れば治る」という言葉が出てくるのは、
「進行性の病気で、すぐに命がどうこうということではない
けれども、これから生涯にわたって治療とリハビリの必要な
病気」だと何度も繰り返している主治医の言葉を気持ちのうえで
受け入れきれないのだろう、と思っていました。

ところが、 先週の副院長回診(ここは大学病院ではない
のですが、週に1度「白い*塔」よろしく回診があります)
の後、妙にど~んよりしているAさん。
「私の病気ってさぁ、100%元通りになるっていうのは無理
なんだって。そんなの、今日初めて聞いたからさぁ…」

…な、なんですって~?私が知ってるだけでも、アナタの
主治医はこの病室に来る度にそういう話をしていましたよ?
ちゃんと聞いてなかったの?
あの先生は早口でまくし立てるから何を言ってるかよく分から
ない、やっぱり女の先生(彼女の主治医は女性)の言うことは
重みがない、何週間か入院さえすれば元通りになって帰れると
信じていたのに、彼女はそう言うのでした。

仕方がないので、前回入院していた病棟の談話室に彼女の病気を
特集した健康雑誌があったのを思い出して、その雑誌を借りて
きて見せてあげると、しばらくじっと読んでいて、ようやく
納得した様子でした。
結局この時まで、彼女は自分の病気がどういうものであるのか、
今何のために入院しているのか、自分が飲んでいる薬が
どういうもので、どのように処方を調整していくのか、
「説明を受けているはずなのに」全く解っていなかった
らしいのです。

だから、もうひと月以上も入院しているのにちっとも治らない、
検査ばかりして薬も量が増えていってる、と不信感だらけに
なり、更に主治医とのコミュニケーションが悪くなる、という
悪循環に陥っていたようでした。