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メディハニー・・蜂蜜の力

2007-06-25 | 支持療法
ドイツのボン大学医療センター小児クリニック腫瘍科Simon医師は蜂蜜の投与によって患者を救っている。癌の患者は、疾患そのもの(白血病など)や治療によって免疫機構が抑制されており、外部からの攻撃への防御力が低下し、体が傷を修復する能力が衰える。そのため、しばしば傷は治りにくい慢性の創傷となり、そこから感染しやすい状態を作る。残念ながら、この感染症は全身に広がりやすく、体が過剰反応して自身の臓器や組織を攻撃すると生命にも関わる敗血症を引き起こす。

5年前、他施設で腹部の腫瘍を切除して胃婁をつくり、同施設に転送されてきた12歳の患者がいた。Octenidinを12日間投与したが改善せず、医師が傷口を検査したところ、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に感染していた。看護師の提案でMRSAに効果があるというメディハニー〔Medihoney(TM)〕を用いることにした。この少年は傷が治らないために後の化学療法を受けることができないでいたが、メディハニーを塗ってたった2日で傷は治った。
新生児にも安全に使用でき、背中が開いた(open back)新生児に2ヶ月間さまざまな抗生物質を試したが改善されない症例にメディハニーを用いた結果、2週間で治癒した。
蜂蜜は、抗生物質とは異なる機序をもち、バクテリアを毒するといった、抵抗性を作ってしまう方法ではなく、多面的に作用する。吸湿性に富み、水分を吸収することからバクテリアから水分を奪ってしまうのだ。蜂蜜は約60種類のバクテリアの増殖を防ぐ。

メディハニーはヨーロッパではCE Certificationを得ており、皮膚科医や一般内科医によって処方され、医療保険の対象でもある。また、一般の薬局などでも購入は可能である。
メディハニーは、2種類のハチミツを合わせているためその効力も2倍である。一つ目は、ブドウ糖酸化酵素を多く含み、それが体液や傷の浸出液で希釈されると、反応して過酸化水素を産生する。この過酸化水素の著しい治癒力は、一時、医療界でもてはやされたが、組織にダメージを与えることがわかって消え去った。ハチミツの過酸化水素は1/1000 ほどの微量であるため、ダメージを与える心配はない。2つ目はマヌカとジェリーブッシュであり、その抗バクテリア特性は光と熱に対して安定している。ハチミツにはボツリヌス菌が見つかることがあるため、メディハニーはガンマ照射されている。メディハニーを塗る前には乳酸リンゲル液で傷口を消毒する。
これほどの有効性を持ちながら、メディハニーは消毒薬ではない。ドイツの消毒薬の条件のうち[使用後1~5分でバクテリアと菌を減少させる]という一項目のみを満たしていないからである。効果は早くとも4~5時間後に現れる。

多くの癌患者において化学療法の副作用から、口~肛門までの全消化管に粘膜炎が起こる。2003年、40人の頭頚部癌患者において行われた研究では、治療15分前と後、および治療後6時間後に、患者は20mlの純粋蜂蜜を摂取した。蜂蜜を食べた群では粘膜炎がより少なく、頻繁に起こる体重減少に対しても、現状維持または回復した患者の割合は55%対25%と優位な結果となった。Simin医師はこの結果から、放射線治療を受ける頭頚部癌患者に対して蜂蜜を勧めている。
ニュージーランド、オーストラリアに追随して、樹液によって異なる蜂蜜の抗バクテリア、抗真菌、抗ウィルスの作用を研究する必要があるだろう。
2007年6月14日原文記事他より抜粋、ボン大報告 

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参考:PubMed抄録:放射線粘膜炎の管理としての蜂蜜の局所使用2007


8 コメント

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文献引用ありがとさんです(^^)v (ちゃしば)
2007-06-25 12:21:35
 経験上も人類は蜂蜜の効能を知っていたのだと思いますし実際頭頚部の放射線治療の際に私も処方していたこともあったと思います。でも、いつの間にか『エビデンスのある薬剤』が医療の主体となって現場ではあまり見なくなったようですが(^^;)。(私は患者さんによく勧めています)

 米国の頭頚部放射線治療での同時化学放射線療法では強い粘膜炎が起こることが織り込み済みで、治療開始前に胃ろうを作ることも標準的になされているようですから、使われないでしょうけど。蜂蜜は粘膜保護だけでなく栄養も補給できていい方法だと私は思っています。
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これってプロポリスと関係あるんですか? (くぅたろう)
2007-06-25 13:22:19
良く分からないのですが、良さそうですね。
蜂蜜に微量のプロポリスが入ってるという事なのでしょうか?

(そもそもプロポリスがなんなのか、私はわかっていませんが・・・)

グルタミン酸とか入れたら、もっと治癒が早くなるのでしょうか?普通の褥瘡にも使ってみたい。
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ハチミツ、見直しましたー ()
2007-06-25 18:41:24
ちゃしば先生もお勧めでしたかー

メディハニーはお薬ということですから治療にも利用できるようになればいいですし、普通のハチミツを食することもいいようですね。

家族の闘病中、手術を2回行いました。2回とも(特に2回目は)術後の傷が何週間経っても直らなくて・・・なぜだろうと思って尋ねたことがありますので、この記事の説明は参考になりました。こういうことに遭遇される方は結構多いのではないでしょうか。
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お酢同様、私も存知ないんですが ()
2007-06-25 19:13:45
くぅ先生、こんにちは。

プロポリスは蜂自信が作り出す酵素ですか・・?こちらも抗菌作用に優れているそうですね。これ以上調べると、わんさかTBがきそうなんで・・(^^;

たしか、クルクミンと一緒にNCIから研究費が下りていました。

>普通の褥瘡にも使ってみたい。

私の母が現在、家族の介護をしておりまして、床ずれには手こずっているのを見ています。アメリカ人のおばさんがなんとかバームを送ってくださいましたけど、きっとメディハニーはいいのでは?なんて思ってしまいますね。
イレッサなどの皮膚障害などにも有効かもしれない・・?
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どんな蜂蜜でもいいのですかね~? (Setochan)
2007-06-26 12:13:45
興味ある報告ですね。
メディハニーでなければならないのですかね?

終末期の患者さんや身体がご不自由な方の褥瘡には試しても良いのかも知れませんね。

これからの分子標的治療薬は皮膚障害の副作用が多いと言われていますので,このような対処で改善すると良いですね。
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患者に優しそうですね ()
2007-06-26 16:43:13
http://medihoney.com/
上記に、製品の写真がありますよ。
口腔ケアにはハチミツ様の感じですが、皮膚、傷用にはかなり使いやすそうなジェルのようになっていますね。
ハチミツをそのまま塗ったらベトベトしてたまりませんものね・・

ハチミツにはボツリヌス菌がいることがあるので、小児など照射済みのメディハニーが安全なのではないですか?

放射線の試験は通常のハチミツのようですよ。EGFR阻害剤の皮膚障害にもいいかも・・とFumiさんのご苦労話を思い出しました。
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Unknown (snowberry)
2007-06-26 20:54:31
ハチミツですか! おいしそう(笑)。創傷部の治療というと、以前にディアゴスティーニ社の「Inseide Human Body」に、虫を使って治療する写真が載っているのを見たことがあって、かなりグロテスクだったんですが(効果があるといわれても、あまりこの目で見たくない…)、ハチミツならそういう心配はなさそうですね。医療用でもやっぱり甘いのかしら(笑)。
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アピセラピーというようですよ ()
2007-06-26 21:22:43
蜂療法・・
虫の治療、、はコワイですねー

最近はハチミツ大流行だから、私も家に置いて時々使います。なんの種類のハチミツ、、までわかるツーではないですけど。今度はマヌカを買ってみようと思います。さすがに塗らないけれど(笑)、胃腸の弱い私には全消化管の殺菌になるかしら・・ピロリ菌を殺すそうです・・
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