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毒性のない新たな化学療法薬Apatone

2007-10-15 | 癌全般
Summa Health SystemのApatone〔アパトーン〕の初のFDA承認臨床試験結果が行われ、前立腺癌において有望な結果をもたらした。アパトーンは、腫瘍細胞内にある、エネルギー生産や化学療法に対して保護する物質のレベルを選択的に下げるという斬新な機序を持つ薬剤である。この毒性のないアプローチで、癌細胞を弱らせ、殺傷する。
アパトーンはベルギーで発見され、Summa Health Systemにより開発、現在はアメリカ大学とともに研究され、少量のアパトーンが前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌などを排除することが可能であると明らかになっている。

このアプローチは、癌細胞の炎症反応を利用している。正常細胞は糖や脂肪をエネルギー源としているが、癌細胞はグルコースに依存している。ここでのキーはアパトーンがグルコースに類似していることである。アパトーンは癌細胞に優先的に蓄積するため、キノンをも供給することになり、それによって癌細胞を弱らせ、破壊する。

2005年に開始された最終ステージの前立腺癌における試験で、12週にわたって17人が毎日アパトーンを服用した結果、16人の患者で肯定的反応が得られた。13人はPSA値の低下とPSA倍加時間の延長が見られた。試験終了時、15人が服用の継続を希望した。
最終的にはアパトーンを化学療法前に静注投与することを目指している。
FDAは、すでにステージ3、4の転移性または限局性膀胱癌に対してオーファンドラッグに指定している。
Eurek Alert記事10月5日より抜粋

10/16追記:アストラゼネカのZD4054が、第2相試験でホルモン不応性前立腺癌に顕著な有効性を示したことが14回ヨーロッパ癌会議で発表された。AD4054(10mg/日)服用した群で死亡は45%低下、24.5ヶ月Vs17.3ヶ月(プラセボ)と全生存期間(OS)は有意に改善、主要評価項目である無進行生存期間(PFS)にはあまり差はなかった。


6 コメント

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なんかすごい・・・ (ku_md_phd)
2007-10-15 20:25:50
糖の研究というと、北部ヨーロッパが強いのかしら・・・(完全にキシリトールと混同中)

毒性はないというけれど、すぐに思いつくのは糖化蛋白が長期にわたって蓄積すると末梢神経障害など悪さをしないかということ。とはいえ、糖尿病ですら、5-10年を要するのだから杞憂とは思うけれど。

アパトーン、アパトーン
幸い
キシリトール・・・ハイドロキシアパタイト・・・という歯の健康つながりで、
アパトーンというのはとても覚えやすいです。
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確かに名前が覚えやすかったのかも・・ ()
2007-10-15 22:20:05
毒性がない・・・この表記に私も悩んだのですが、他の抗癌剤のような細胞殺傷性の薬ではない、という意味ですね。長期の影響は考えうると思いました。

細胞毒性なく、抗癌剤への感受性をあげ、服用するだけーというのは大きなメリットと思いました。
まだ今後期待される薬です。

キシリトールとのつながりは・・不明です・・
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素朴な疑問 (ちゃしば)
2007-10-16 11:52:33
PET検査ではフッ素(18F)標識 フロロデオキシグルコースが主に用いられます。グルコース代謝の活発な部分を検出するわけですよね。

http://pet.jrias.or.jp/index.cfm/28,html

脳も心臓も極めて強く集まります。ということは、この薬剤が脳や心臓へ影響を及ぼすことはないのでしょうか?いつもながらこういった報道では『毒性のない』という表現が新規薬剤や新規の治療手段で用いられるのを多々見ますが、ほんまに大丈夫なんでしょうかね?

あくまでも、限定的な病態の患者さんを対象とすべき薬剤のように個人的には思うのですが?

門外漢のたわごとです。あしからず・・・・
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なので・・ ()
2007-10-16 22:07:36
「毒性のない」という表現は、細胞毒性の抗癌剤に対して用いられた言葉でしょう。どう訳そうかと思ったのですがそのまま訳しました。分子標的薬だって、それぞれの副作用はでますからー
細胞毒性でない薬といえども、副作用が今後も一切ない、という意味とは異なるかと思いますけれど、受ける側にはとても喜ばしいことではないかとは思います。

PETの原理と同じだったですね。そのあたりは、どうなのでしょう。

些細な記事にいつもコメントありがとうございます。
申し訳ないので、ひとつ薬剤追加しておきました。(^^;;
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念のため (ちゃしば)
2007-10-16 22:26:36
先のコメントはFDGを問題としているのではありませんからね(^^;)。今度の新薬の件です。

癌に関しては、どうも追い詰めると、いろんなスイッチを切り替えて、場合に寄れば場所を変え(転移)、なんとか生存し続けようとしますよね。個々の癌細胞だって周囲の環境によってエンジンの種類を変え(ミトコンドリア)、一筋縄ではいかないものと理解しています。

ツボにはまれば非常な恩恵を受けることになる薬剤かもしれない。でも、安易に他の薬剤で対処できる場合に使用した場合にどうなるか、ちょっと不安でもあります。
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ありがとうございます ()
2007-10-17 23:16:17
否定も肯定もまだする必要はないし、そういう段階でもないように思いますが。

転移も不思議です。原発から逃げ出したみたいなところも確かにあります。温熱療法や放射線の遠隔転移とか・・?
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