「将来、患者は体内の腫瘍が現われる何年も前に、毒性の低い血管新生薬によって治療されるようになるだろう。」Dr.Judah Falkman(ジューダ・フォークマン)氏はMassachusetts Biotechnology Council フォーラムで語った。
「癌が見つかる何年も前から治療するなどとあなたは考えられるだろうか?しかし、癌が確認されるより7年から10年も前に血管新生のスイッチは入れられるのだ。なぜそのときに治療を始めないのか?」
そのような癌治療の転換のためには、癌の発生を見つけるバイオマーカーが必要であり、その研究も有望であるとフォークマンは語る。彼の同僚らは「彼は狂っている」と言った。
彼は、現在ボストンのChildren's Hospitalの外科研究部長とハーバード医学部の小児外科教授を務める。1971年に初の血管新生についての論文を発表した血管新生のパイオニアである。フォークマンたちは1963年から論文を申請していたが、何度も何度も拒否された末の発表であった。「10年かかった。科学者らはエビデンスやデータを持ってしても、しばしば新しい概念を受け入れられない。71年に発表された後も、一部の科学者らは血管新生は癌と関わりがあるとしても副次的結果であると言ってはばからなかった。」
交通事故などで死亡した人々を調べると、しばしば微小癌細胞(非浸潤癌)が見つかる。癌の既往歴のない40~50歳女性を検死解剖すると3分の1に見つかるが、この年齢層の女性で乳癌と診断されるのは1%である。前立腺癌でも同様である。事実検死解剖したすべての50~70歳の個人に甲状腺に非浸潤癌が見つかるが、実際に診断されるのは0.1%である。つまり生体の血管新生防御機能が、腫瘍の増殖と悪性化を防いでいる。(Nature誌2004年2月号フォークマン氏記事参照)
ダウン症の人々には癌はほとんど発生しない。それは第21染色体のコピーを余分に持つためで、この染色体によって血管新生阻害物質であるエンドスタチン値が高レベルになることから癌がめったに発生しないのだ。
彼はボストン地区で血管新生剤を用いて退縮した症例を多く提供しているが、臨床試験で必ずしも効果が証明されない。それは現在臨床試験における抗癌剤は「化学療法言語」で書かれなければならないからである。
フォークマンは、休薬期間を含む高用量の治療の代わりにごく少量の薬を長期にわたって投与する研究に注目している。Nancy Weil, BIO-IT World2004/3
参考 『海外癌医療情報リファレンス』-血管新生薬が癌増殖を止める、Tips:エンドスタチン、追記:血管新生研究の背景2006年版
「癌が見つかる何年も前から治療するなどとあなたは考えられるだろうか?しかし、癌が確認されるより7年から10年も前に血管新生のスイッチは入れられるのだ。なぜそのときに治療を始めないのか?」
そのような癌治療の転換のためには、癌の発生を見つけるバイオマーカーが必要であり、その研究も有望であるとフォークマンは語る。彼の同僚らは「彼は狂っている」と言った。
彼は、現在ボストンのChildren's Hospitalの外科研究部長とハーバード医学部の小児外科教授を務める。1971年に初の血管新生についての論文を発表した血管新生のパイオニアである。フォークマンたちは1963年から論文を申請していたが、何度も何度も拒否された末の発表であった。「10年かかった。科学者らはエビデンスやデータを持ってしても、しばしば新しい概念を受け入れられない。71年に発表された後も、一部の科学者らは血管新生は癌と関わりがあるとしても副次的結果であると言ってはばからなかった。」
交通事故などで死亡した人々を調べると、しばしば微小癌細胞(非浸潤癌)が見つかる。癌の既往歴のない40~50歳女性を検死解剖すると3分の1に見つかるが、この年齢層の女性で乳癌と診断されるのは1%である。前立腺癌でも同様である。事実検死解剖したすべての50~70歳の個人に甲状腺に非浸潤癌が見つかるが、実際に診断されるのは0.1%である。つまり生体の血管新生防御機能が、腫瘍の増殖と悪性化を防いでいる。(Nature誌2004年2月号フォークマン氏記事参照)
ダウン症の人々には癌はほとんど発生しない。それは第21染色体のコピーを余分に持つためで、この染色体によって血管新生阻害物質であるエンドスタチン値が高レベルになることから癌がめったに発生しないのだ。
彼はボストン地区で血管新生剤を用いて退縮した症例を多く提供しているが、臨床試験で必ずしも効果が証明されない。それは現在臨床試験における抗癌剤は「化学療法言語」で書かれなければならないからである。
フォークマンは、休薬期間を含む高用量の治療の代わりにごく少量の薬を長期にわたって投与する研究に注目している。Nancy Weil, BIO-IT World2004/3
参考 『海外癌医療情報リファレンス』-血管新生薬が癌増殖を止める、Tips:エンドスタチン、追記:血管新生研究の背景2006年版
anti-angiogenic therapyはこれから益々、臨床の現場で使われるようになるでしょう。
ただ、現在のantiangiogenic drugはVEGF signalをblockするのが主な標的ですが、問題はtargetであるはずのVEGFの量と効果が比例しないことです。つまり、この薬剤(非常に高価である)がどの患者に対してもっとも効果を発揮するのか現段階で分からない。stage
II以上の大腸がんの術後補助療法に使うならば(効果があることが既に臨床試験で確認されているが)医療経済は破綻してしまう。HER2,ER、PgRのようなpredictive factorの発見が早急に必要とされて居ます。
本文の最後の方で書かれていることは,一部ではやりのmetronomic chemotherapyですね。以前私のブログでも紹介しました。(現在進行中のtrialの紹介だけですが)
希望があれば、また詳しく説明したいと思います。
ちなみに、ブログ引越ししました。リンクを変えていただけますと、大変ありがたいです。
血管新生は一番興味のあるところです。なによりフォークマン博士の2年前の文言が色褪せることなく着実に現実になりつつあるようで体が震えます。
メトロノミックもそうですよね。ぜひまた、詳しくお聞かせください。
血管新生阻害剤には、まだいろんな難題がありそうですね。上記はアバスチンのことでしょうか。分子ターゲットの特定も必要なのでしょうが、日本に承認されてもやっぱりあんなに高価になるのでしょうか?米国の薬のバカ高さには閉口します。
ご多忙な次期は終わられたのですね。早速URL変更しておきました。
記事にしようと思ってますが、すごい時代になりましたね。
実際に毎日たくさんの細胞が癌化し、免疫細胞によって攻撃されています。
どの時点から、癌と認定するか、今までの概念をゆるがすものですね。
日本の早期癌という概念が欧米で受け入れられないのですから、ましてやさらに早期をや、ですね。
良く整理できないので、nyu-gyo先生のブログも読んで勉強しようと思います。
ゲノムの解読からこのようなことがどんどん可能になっていくのでしょう。分子テストを行っての個別化治療が定着していくと癌治療の様相も一変するのでしょう。何より患者の体への負担がかなり軽減すると思われます。
早期癌、進行癌という区別は欧米ではないですよね。
ところで、もう随分前ですが、Dr.Folkmanは米国のWall Streetでも大変注目されました。AngiostatinやEndostatinが、臨床でもBreakthroughとなると予測されていたからです。
残念ながら、それらは臨床試験を通じて、薬剤としては使用されるに至っていませんが、今注目されるAvastinや、ある種の抗癌剤の低用量の長期使用は、このコンセプトに基づくものと思います。
Dr.Folkmanが、いわゆる米国のOncologyのMajorityに受け入れられないように、日本でも同様のconseptを持つ、金沢大学の高橋先生も受け入れられているとは言いがたい状況です。
本当のところはわかりません。しかし、高橋先生の書籍や講演から、時に酷評されるほどのものだろうかとは思います。要は、現在の抗癌剤や治療法の評価方法での検討がないというのが何とも言えない点です。
私自身は、このようなコンセプトを必ずしも全否定するものではないのですが。
>いよいよ明後日からASCOです。
そうでしたね。Tryさん含め、関係者の方々は多忙を極められるのでしょう。
個人的嗜好から、フォークマン氏はここでも何度か記事にしました。(^^ゞエンドスタチンはエンドスターとして中国で承認されました。
日本の状況は知らないのですが、血管新生剤に限らず最近米国ではメトロノミック化学療法は行われつつあるようです。高用量で効果がなかったにもかかわらず低用量持続療法で奏効されている方も実際存じています。また、高用量に耐えられない患者さんには選択肢の一つになりますよね。でもおっしゃるとおり、休眠療法の効果はまだ限定的でしょう。さらに研究が待たれます。
>要は、現在の抗癌剤や治療法の評価方法での検討がないというのが何とも言えない点です。
血管新生剤などを含め、早く評価評価基準が設定されるといいですね。
NCI薬剤情報http://www.cancerit.jp/NCIinfo/druginfo_summaries/avastin.html
アバスチン
http://www.cancerit.jp/cancer_references/archive/No7_avastin.html
FDA安全性情報(この9月およびそれ以前にも出ています)
http://www.cancerit.jp/FDAfiles/medwatch3.html
さる先生も丁寧な以下のアドバイスをくださいました。
>vascular endothelial growth factorを阻害する抗体は、Avastinが代表的なもの
です。血管新生阻害剤です。お話しからすると、網膜芽細胞腫と思われますが、これに対しVEGF阻害剤が効果があるのかどうかは私も聞いたことはありません。
大学病院で認可前の薬を使うと言うことであれば必ず治験でしょう。それであれ
ば主治医がそれに対し十分な説明をしてくれるはずです。だいたいのInform
ed consent用紙を準備しています。予想される副作用はだいたいそれに書いてあ
るはずです。直接主治医に聞いていただく方がよいのではないかと思われます。