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前立腺癌ホルモン療法/乳癌治療による心疾患

2007-11-06 | 前立腺癌
JNCI2007年10月9日号Memo to the Media
前立腺癌の治療法が心疾患による死亡リスクの増加と関連
進行および局所前立腺癌患者に対するアンドロゲン枯渇療法は、外部照射放射線治療と併用で生存期間を向上させる。しかし、一方で、メタボリックシンドロームを引き起こし、2型糖尿病や冠動脈疾患のリスクを高める。
ハーバード大学の研究によると、前立腺切除手術を受けた3,260人、放射線治療や凍結外科療法を受けた1,630人の前立腺癌患者のうち、1,000人がアンドロゲン枯渇療法を受けた。4年のフォローアップの結果、131人が心疾患で死亡した。
心疾患関連死の5年発症率は
・65歳以上の前立腺癌切除患者          65歳以下
  ホルモン療法を受けた患者      5.5%    3.6% 
  ホルモン療法を受けなかった患者    2%    1.2%
・放射線治療や凍結外科療法を受けた患者でもリスクは高まったが統計学的有意ではなかった。

放射線他の治療を受けた男性では起こらずに前立腺を切除した男性においてのみこの影響があるとは考えにくいと指摘し、付随の論評では、この試験のデザインでは、アンドロゲン枯渇療法が心疾患死を高めるかどうか結論付けるのは難しく、ランダム化試験を行う必要があるとしている。
参考:ホルモン療法と心血管事象による死亡
過去Tip「前立腺癌ホルモン療法は転移を促すか」

    
乳癌治療と心血管系事象リスク
乳癌治療を受けた患者における心臓疾患リスクの増加に関する評価がデューク大学によってJournal of American College of Cardiology誌2007年10月9日号に掲載された。乳癌治療を受けた女性における心臓血管障害のリスクの要因は多岐にわたり、心血管臨床医はそのリスクを理解しておく必要があるとした。
アントラサイクリンアロマターゼ阻害剤(タモキシフェンより新血管事象が多い)、ハーセプチン(心不全2~4.1%、無症状心機能不全3~18%)、血管新生阻害剤、また、放射線治療も心臓の有害事象を起こすことがある。
その他、しばしば見過ごされる運動不足体重増加は2つの独立リスク因子である。早期乳癌患者では診断前と後では週2時間の身体運動が減少、70%以上の患者が治療中に2.5kg~6.2kg体重が増加する。
そして、これらの心疾患リスクは単独というよりむしろ多重の要因によって発生するものと考えられる。WebMD


2 コメント

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それは常にそうだ (ku_md_phd)
2007-11-06 17:06:29
あらゆる疾患の「治癒」あるいは「長い延命」を目標にする以上、その視点は不可避です。

逆もまた真。

つまり循環器疾患のフォロー一方で癌の発見が遅れることもまた日常茶飯事。

ピロリ菌除菌で当然爆発的に増加するメタボリック症候群。

バランス感覚が医師には重要です。

患者さんにも、バランス感覚が大切です。



統計で、「期待値」っていう概念、習いましたよね。それ、それ。
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2007-11-07 00:25:15
上記コメントが際立っているので、
レス無用と存じます

が、この訳を追加(読まれたのかと思いましたー)
1997年から2000年の間に乳癌罹患率は年0.2%増加したが、1990年から2000年の間に24%乳癌死亡率は減少した。その結果、現在約200~300万人のアメリカ人女性が乳癌既往歴を持ち、長い生存期間の間に心血管系疾患リスクに晒されている。
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