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抗うつ剤(SSRI)服用でタモキシフェン服用女性の乳癌死亡率が上昇

2010-03-05 | 乳癌
 カナダの研究者らは、タモキシフェン(ノルバデックス®)を服用している66歳以上の乳癌患者のうち抗うつ剤のパロキセチン(パキシル®)を併用している患者は、抗うつ剤を併用していない患者や、または他の抗うつ剤を併用している患者よりも死亡率が高いと報告した。本研究の詳細は2010年2月13日発刊の英国医学ジャーナル誌に掲載された。[1]

タモキシフェンは乳癌の再発予防および治療として用いられるホルモン療法剤である。本剤は体内で肝酵素CYP2D6により主要活性代謝物であるエンドキシフェンに変換される。一部のヒトではCYP2D6活性レベルの低下に関連する遺伝子変異を持つ。これらの遺伝子変異を持つヒトではタモキシフェンの効果が減弱すると示唆した複数の研究がある。タモキシフェンによる術後補助療法を考慮する閉経後女性にはCYP2D6テストの実施が必須だと主張してきた研究者らもいる。CYP2D6を阻害する薬剤もまたタモキシフェンの効果を減弱させる可能性がある。CYP2D6阻害作用を持つ薬剤にはうつやホットフラッシュの治療に用いるものがあり、その中にSSRIのプロザック®(フルオキセチン)とパキシルも含まれる。

米国臨床腫瘍学会2009年年次総会で報告された2つの研究は相反する結果を示した。アメリカの研究者らはあるタイプの抗うつ剤はタモキシフェンの効果を阻害すると報告した。(略)一方、オランダで実施された研究では抗うつ剤のタモキシフェンの有効性に対する影響はみられなかったが、本研究ではタモキシフェンとCYP2D6を阻害する薬剤を併用した患者数が相対的に少なかったため、データの検出限界が生じたのだろうとしている。

今回の研究では66歳以上の患者2430人が1993年から2005年まで治療を実施し、374人(15.4%)が、パロキセチンを併用した。患者らはタモキシフェン服用期間中の平均41%期間パロキセチンを併用した。観察期間の中央値は2.4年であった。
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タモキシフェン治療中25%の期間パロキセチンを服用した患者の乳癌死亡率は24%上昇した。
タモキシフェン治療中50%の期間パロキセチンを服用した患者の乳癌死亡率は54%上昇した。
タモキシフェン治療中75%の期間パロキセチンを服用した患者の乳癌死亡率は91%上昇した。
タモキシフェン治療中平均的なパロキセチン併用患者はタモキシフェン中止後5年以内に、20人中1人が付加的に死亡すると推定された。
他の抗うつ剤による乳癌死亡率の増加はなかった。
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(略)これは過去のアメリカの研究結果を確認する非常に重要な研究である。2つの研究から乳癌患者に対するタモキシフェンと、パロキセチンや他のCYP2D6阻害抗うつ剤との併用は禁忌となることが示唆された。日本語訳全文
過去チップ
    

2月18日 再発予防にタモキシフェンを服用しているのは1%未満 2000~2005調査
原文記事


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