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代謝障害治療薬ジクロロ酢酸 (DCA)が腫瘍を縮小

2007-02-02 | 癌全般
2007/1/25  アルバータ大学は、稀な代謝障害の治療薬として用いられてきた薬が、動物実験で多くのヒト癌において腫瘍を縮小させることを報告した。この治療薬ジクロロ酢酸[dichloroacetate](DCA)は、正常細胞に影響なく、がん細胞の成長を抑制し、従って、通常の抗がん剤のような副作用もないとみられる。
現在、アルバータ大学、アルバータキャンサーボードおよびキャピタルヘルスは、DCAの癌に対する臨床試験が行われていない段階で、癌の治療にDCAを勧めたり、容認したりすることはしない。しかしながら、アルバータ大学とアルバータキャンサーボードは、薬事規制当局であるヘルスカナダと協議し、即刻臨床試験の施行を決定した。DCAは代謝障害に第1相、第2相試験がすでに行われているため、われわれは、この調査研究のための癌の臨床試験は通常より大幅に時間を縮小して実施可能であると信じている。DCAリサーチ情報(アルバータ大学)

コップの水にスプーン1杯のパウダーを混ぜる、それだけで腫瘍が縮小するなど想像できますか?しかも、化学療法薬のような大変な副作用もなく、一服たった2ドルです。
「しかし、人での試験ではありませんから、あまり過熱すべきではありません。」と、本日発行のCancer Cell誌に掲載されたカナダのアルバータ大学の研究者は述べる。研究によると、稀な代謝障害に長く用いられてきた治療薬ジクロロ酢酸(DCA)が、ラットと試験管で、ヒト肺癌、乳癌、脳腫瘍を縮小させた。通常、動物実験の時点では研究者らの関心は低いが、この薬の場合は何十年も人において安全に使用されてきたものであるため、注目を集めている。
この研究は、癌がミトコンドリア(細胞のエネルギー産生単位)に永久にダメージを与えるという癌の大前提を覆すかも知れない。ミトコンドリア機能が抑制されたとき、DCAは再生可能にし、がん細胞が正常どおり死滅しやすくする。(ほとんどの癌は、ミトコンドリア機能の抑制により標準化学療法に抵抗性を持つようになる)
しかし、臨床的実用化は、経済的理由から困難である可能性もある。DCAはすでに特許が切れており、たとえ非常に有効だとしても大きな利益は見込めず、製薬企業の関心は得られないかもしれない。これは現実問題である。公的基金に期待したいと語った。原文記事より抜粋


6 コメント

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またまた勉強になってしまいました。 (ku_md_phd)
2007-02-03 18:04:16
久しぶりに解糖系の勉強をしてしまいました。

そういえば、以前日本医療が生き残るには、国営製薬会社を作るべしってどこかに書いたのだった。。
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いいアイデアですねー ()
2007-02-03 21:05:13
どこに書かれたのでしょう。また探してみます
最近、「怖くて飲めない」の本を見つけました。とても面白いことが書かれていました。医学誌の中でも、PloS Medicineは製薬企業との関連のない独立したジャーナルとして2004年にできたそうです。http://en.wikipedia.org/wiki/PLoS_Medicine
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ちょっと待ったぁ~! (ちゃしば)
2007-03-18 16:14:08
>この治療薬ジクロロ酢酸[dichloroacetate](DCA)は、正常細胞に影響なく、がん細胞の成長を抑制し、従って、通常の抗がん剤のような副作用もないとみられる。

このニュースの論評は、まだ現時点では言いすぎのように私は思います。DCAそのものは私はよく知りませんが、PubMedではこんな抄録もありますよ?

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=16476929&query_hl=1&itool=pubmed_DocSum

少なくとも、血中濃度や神経伝導検査なんかもきちんと評価できる環境(研究機関・大学など)で、まず安全性試験がなされた後で、実際に効果があるかどうかが検討されるべきだと思います。将来の可能性は、それからですよね。
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重要な情報、ありがとうございます ()
2007-03-18 21:11:55
そのような副作用も含め、今後解明されていけばいいですね。臨床試験の結果を待つのみです。

『ジクロロ酢酸はMELAS患者(ミトコンドリア性筋障害、脳障害、乳酸アシドーシス、脳卒中様発作)での中毒性神経炎の原因となる:ランダム化比較臨床試験
・・・
結論:25 mg/kg/dayでのDCA投与は、末梢神経毒性を伴い、高率での投薬中断と早期の臨床試験終了となった。これらの実験的な状況の下で、著者らは何ら有益な効果を見出すことはできなかった。DCAによる神経障害はMELASにおける、いかなる潜在的な有益性の評価について暗い影を投げ掛けるものである。』
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アルバータ大学 (通りがかり)
2010-11-24 14:43:48
アルバータ大学の研究者がインタビューにこたえている様子がYouTubeに出てました。

http://www.youtube.com/watch?v=TZNMDDdZybk
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症例報告 (かんじゃ)
2011-08-20 21:50:36
ジクロロ酢酸で非ホジキン濾胞性リンパ腫が消失したとの症例報告を見つけました。毎日900mgの投与を4ヶ月間行ったとあります。全文ダウンロードできます(英語)。かすかな希望を見つけた気がします。
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