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「カロリー制限-癌を予防する-」

2009-07-28 | 癌全般
 私たちの摂取する食物、例えば赤肉(動物の肉)、ビタミン、ミネラル、または食物繊維が多いなどの食物が、癌発症リスクにどのように影響するのであろうか。この問題を解明しようとこれまで大きな努力がなされてきた。また、世界中で確実に増加する肥満の割合に後押しされ、食事に含まれるカロリー量についても同様の疑問が示されている。私たちが単純にカロリー摂取量を減らした場合、何が起きるのだろうか。
癌細胞を含むすべての細胞は、生存および増殖のためにエネルギーを必要としている。1900年代初めには、科学者らはこの原則を癌治療に生かす方法を理解していた。実験でカロリー制限により、マウスに移植した癌細胞の成長が阻害されることを明らかにしたのである。
この問題は現在最も広く研究されている課題であり、哺乳類の生存期間を延ばすために有効な戦略である、と話すのは、元NCI癌予防部門の副部長であり、現在はテキサス大学栄養科学部で主任教授を務めるDr. Stephen Hursting氏である。

「これは最も強力で広範囲に効果をもたらす食事介入であり、実験動物モデルでは実際に癌を予防しています」と、同氏は述べている。Science誌7月10日号に掲載された研究では、アカゲザルに通常の食事よりも30%カロリーの低い食事を給餌した結果、この食事が疾患の進行を遅らせ、余命を延ばす可能性を示す複数のエビデンスが得られた。これは、霊長類を対象とした初の長期介入試験であるが、ヒトに対して、また実生活で効果が得られるかどうかという疑問には、まだ回答は得られていない。

私たちは何を食べているのか

動物実験で行う食事介入は、食餌エネルギー制限(dietary energy restriction:DER)とも呼ばれている。自由摂取(Adlibitum)とは、動物に欲しいだけ自由に餌を摂取させることを意味する用語であるが、DERでは、通常この自由摂取量よりも10~40%カロリーを制限する。

コロラド州立大学癌予防研究所の所長であるDr. Henry J. Thompson氏は、「動物試験では、エネルギー摂取量のわずかな差も結果に影響することが明らかになっています」と述べ、さらに「実際に、自由摂取量に比べてわずか10%カロリーを減らしただけでも、大きな健康効果につながります」と説明した。

「私たちは、体脂肪は何かの働きをもつものではなく、基本的には貯蔵タンクに過ぎないと考えていました。しかし、現在ではこれが全く間違いであることがわかっています」と同氏は説明した。「体脂肪はホルモンの分泌にも関わっており、生理的要求に対する身体の反応に影響します。褐色脂肪か白色脂肪か、脂肪が筋肉内に位置するのか毛布のように腹部周囲を包みこんでいるかなど、その種類によっても影響は異なります」と述べ、「癌発症リスクと、肥満、体重減少、食事エネルギー制限、および運動に関連するバイオマーカーを学ぶことは、いつか臨床医が、このようなマーカーと患者の間の相互作用を個別の患者に合わせて調節し、さらに効果的な癌予防戦略を立てるために役立つでしょう」と語った。
全文訳:NCIキャンサーブレティン7月14日号記事


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