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BRCA1、2遺伝子変異に対するオラパリブ

2009-07-11 | 癌全般
BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有する人は乳癌や卵巣癌、前立腺癌の発生率が高くなることは知られている。そうした癌に対する早期臨床試験において、経口の新薬オラパリブ(Olaparib)が良好な結果を示した。

オラパリブは、他の薬剤とは別の機序で作用する薬剤で、DNA修復に必要な遺伝子Poly(ADP-ribose) polymerase (PARP)を阻害する。正常細胞は PARPを用いて自ら修復するが、癌細胞も同様に、これらを用いて修復を行う。PARPを阻害することにより、細胞は、自己修復ができなくなり、 BRCAに欠損がある癌細胞は、特にこの作用に弱く、PARPを阻害することは、癌細胞にとって耐えられないことであると著者であるダナファーバー癌研究所の医師はいう。

第1相試験後、少人数のBRCA1、2変異を有する患者群でオラパリブ200mgを1日2回投与したところ、 BRCA 遺伝子変異を持つ乳癌、卵巣癌、前立腺癌患者の腫瘍を縮小させた。研究者らは、同薬剤が非常に速く吸収され、体外に排出されるのも速いことを発見した。副作用は少なかった。
「オラパリブは全く新しい薬剤であり、 PARP阻害によって通常の抗癌剤のような有害事象が見られることはほとんどない。」PARP阻害剤と、 DNAを破壊する化学療法剤を併用することにより、さらに有効になると期待される。その上、 PARP 阻害剤は、ハーセプチンやタモキシフェン等の薬剤が全く効かない腫瘍に用いることができる。治療が全くない卵巣癌も同様である。」

今年のASCOでも乳癌に対する有効性が発表されている。
1つ目のPARP 阻害剤と化学療法の併用試験では、生存期間は化学療法単独5.7ヵ月、PARP 阻害剤 BSI-201併用した場合9.2ヵ月と倍近く延長した。同時に、疾病による死亡が60%減少した。追加の副作用はなかった。
二つ目の試験では、54人の BRCA 変異をもつ進行乳癌女性のうち41%の患者において腫瘍が消滅した。低容量投与群ではわずかに反応も少なかった。わずかな吐き気と倦怠感が最も多い副作用であった。
「これらの試験結果は、実に素晴らしい。」デューク大学の乳癌専門医は言う。
原文記事、 NCIキャンサーブレティン6月30日号

    
米国国立癌研究所(NCI)の「BRCA遺伝子変異(改訂中)」


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